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「国民国家」日本と移民の軌跡

沖縄・フィリピン移民教育史

著:小林 茂子

紙版

内容紹介

沖縄県は、ハワイをはじめ北米、フィリピン、中・南米への海外移民のさきがけとなり、
現在まで約30万人を越える県系人の海外移住者を送り出してきた。
移民先のフィリピンでは沖縄移民に対し、
「他県人に比し、文化の程度劣等なり」「婦人の教養最も劣等なり」など、差別的な見方があった。
その背景には、沖縄が日本という国民国家の中に置かれていた独自の位置づけがあり、
そこで果たした教育の役割も無視できない。
本書は、地道な調査活動と文献発掘を積み上げて、戦争などにより日本という国家と渡航先のフィリピン
あるいはその宗主国アメリカとの国家間の狭間に揺れる移民たちの「生き生きとした」、
また「苦渋に満ちた」姿をリアルに描き出し、移民の生活と自己意識の軌跡に、
特に教育という側面から接近しようとした意欲作である。

目次

 序 章
  はじめに-沖縄移民の全体像
  第1節 研究の課題
  第2節 研究の視角
  第3節 研究の方法と構成-仮説としての分析枠組み
  第4節 資料収集と活用方法

第一部  沖縄における移民教育の展開
 第1章 1910年代までの地域にみる「風俗改良」の態様-移民教育の地域的普及を中心に-
  第1節 沖縄移民のブラジル渡航禁止の意味-政府の移民政策との関係から
  第2節 地域における「風俗改良」の展開
  第3節 「移民母村」・金武村における移民のための教育

 第2章 1920年代における海外沖縄移民の実態と移民教育の組織的展開
  第1節 『南鵬』にみる沖縄移民の実態
  第2節 海外各地の領事たちの沖縄移民の見方
  第3節 ダバオ副領事の報告書をめぐる事件と沖縄移民の他民族観
  第4節 沖縄県海外協会の設立(1924年)と移民教育論
  第5節 社会教育活動?移民教育としての取り組み

 第3章 沖縄の移民教育としての『島の教育』(1928年)の再評価
   -とくに「大正自由教育」の影響による多面性に注目して-
  第1節 沖縄移民の風俗習慣の「改善」-同化と近代化
  第2節 『島の教育』における「文化的異化」の析出
  第3節 沖縄移民の海外発展思想-「国際性」への契機
  第4節 『島の教育』にみる基本的な志向性-まとめとして

 第4章 開洋会館(1934年)の機能変化と村の移民送出状況の背景
   -1920年代後半から1930年代半ばまでの移民教育事情-
  第1節 開洋会館の設立とその役割
  第2節 沖縄における国民更生運動と人口の流出
  第3節 金武村の移民送出状況

 第5章 「南進」政策による移民教育の変容-移民教育から植民教育への変質-
  第1節 沖縄にみる1930年代後半以降の社会教育の動き
  第2節 「南進」政策と沖縄側の対応
  第3節 南方への「国策」移民と植民教育

第二部  フィリピンにおける沖縄移民の自己意識の形成
 第6章 フィリピン・ダバオにおける沖縄移民の自己意識の形成過程
  第1節 沖縄移民の定着への経緯-1910年代から1920年前半まで
  第2節 沖縄移民の「永住意識」化-1920年代後半から1930年代まで
  第3節 沖縄移民の「日本人意識」-戦争勃発から軍政期(1942~45年)まで

 第7章 沖縄移民の生活実態と郷友会的社会による「沖縄人としてのアイデンティティ」形成
   -「仲間喜太郎日記」(1937年)を中心に-
  第1節 仲間喜太郎という人物
  第2節 麻栽培の労働
  第3節 沖縄文化の伝承
  第4節 移民二世の家庭教育環境
  第5節 異民族との接触

 第8章 フィリピン・ダバオの日本人学校における沖縄移民二世の自己意識
  第1節 ダバオの日本人学校の概要と教員募集の方法-とくに長野県出身者の例を中心に
  第2節 ダバオの日本人学校の教育活動と沖縄移民二世の自己意識の形成
  第3節 軍政下におけるダバオの日本人学校の教育

 終 章
  第1節 本研究のまとめと論点の補足
  第2節 移民研究の教育学における意義と今後の課題

著者略歴

著:小林 茂子
(こばやし しげこ)中央大学文学部非常勤講師。

ISBN:9784762019852
出版社:学文社 (GAKUBUNSHA)
判型:A5
ページ数:384ページ
定価:6500円(本体)
発行年月日:2010年03月
発売日:2010年03月05日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:KC