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設計技術シリーズ121

回転機械のための 実践!磁気軸受の制御系設計

著:藪井 将太

紙版

内容紹介

第1 章 はじめに ※一部抜粋

回転機械は様々な機械要素で構成されているが,その中で特に重要な機械要素として軸受が挙げられる.軸受は回転機械の軸を所望の位置で支えた上で,軸を滑らかに回転させるために使用される.回転機械の性能向上のためには,回転軸を任意位置に精度よく支持でき,軸との間の摩擦を低減した軸受の開発が求められる[4, 5, 6, 7, 8].

これらの要求に応えられる軸受として磁気軸受がよく知られている[9, 10, 11].磁気軸受は物理的な接触部品を持たず,磁気力を利用して非接触で軸を支持することができるため摩擦が発生しない.軸の位置は,軸を支持するための磁気力を制御することで調整できる.

本書では,その能動型磁気軸受の制御系設計に焦点をあて,必要な技術について具体的に解説する.磁気軸受の原理やハードウェアの設計などは他書に譲り,制御系設計に必要な技術を記載している.その制御系設計は,数式をベースとした理論面による説明よりも,より実践的なデータやグラフに基づいた説明を意識して解説している.2章では,基本的な磁気軸受の動作原理から,制御系設計する際に用いるモデル化について説明している.3章では,制御系設計に用いるコントローラやフィルタ,そして制御系の性能評価指標について説明している.4章では,2章と3章の内容を踏まえ,実践的な磁気軸受の制御系設計の流れを説明している.5章では,アドバンスト制御系と称し,主に不釣合い振動の補償に焦点をあて,高性能かつ高機能な制御アルゴリズムを説明している.最後に6章では,実践的な応用例として,先行研究にて示されているロータダイナミック流体力推定に向けた磁気軸受の制御系設計について説明している.各章の解説をする際に筆者自身が作成したMATLAB/Simulinkを公開しているので,そちらも併せてご確認いただければ幸いである.

(参考文献については,本書をご覧ください)

目次

目次

第1章 はじめに

参考文献



第2章 磁気軸受のダイナミクス

2.1 電磁力

2.1.1 平衡点近似による線形化

2.1.2 フィードバック線形化

2.2 線形モデルのダイナミクス

2.2.1 周波数応答:ボード線図

2.2.2 ベクトル軌跡:ナイキスト線図

2.3 カーブフィッティングによるモデリング

2.3.1 基本思想

2.3.2 実践的な伝達関数モデルの導出

2.3.3 グレーボックスモデリングによる伝達関数の導出

2.4 m-file

参考文献



第3章 制御系設計の基本

3.1 制御系の構成について

3.2 連続時間/離散時間の変換について

3.2.1 ホールド回路の特性について

3.2.2 離散化手法について

3.3 コントローラについて

3.3.1 PIDコントローラ

3.3.2 位相遅れフィルタと位相進みフィルタ

3.3.3 ノッチフィルタ(バンドストップフィルタ)

3.3.4 ピークフィルタ(バンドパスフィルタ)

3.4 評価指標

3.4.1 開ループ特性

3.4.2 閉ループ特性

3.4.3 簡易シミュレーションによる閉ループ系の動作確認

3.5 m-file

参考文献



第4章 磁気軸受に対する制御系設計

4.1 理論モデルの作成

4.2 安定化コントローラの設計

4.3 閉ループシステム同定

4.3.1 モデル化誤差:Δxについて

4.3.2 外力:dxについて

4.3.3 ノイズ:nxについて

4.3.4 閉ループシステム同定のまとめ

4.4 閉ループシステム同定に基づくコントローラの再設計

4.4.1 弾性モードに対するノッチフィルタの設計

4.4.2 外乱抑圧特性を改善するためのPIDコントローラの再設計

4.4.3 コントローラの再設計のまとめ

4.5 m-file

参考文献



第5章 アドバンスト制御系設計

5.1 位相安定化を用いた制御系設計

5.1.1 ノッチフィルタによる弾性モードの補償

5.1.2 位相安定化による弾性モードの補償

5.2 周期外乱の補償に特化した制御系設計

5.2.1 ピークフィルタを用いた周期外力の補償

5.2.2 AFCを用いた周期外力の補償

5.2.3 繰り返し学習制御を用いた周期外力の補償

5.2.4 ピークフィルタ,AFC,ILCの比較について

5.3 回転数変化を考慮した制御系設計

5.3.1 測定した回転数を制御系へ取り込める場合

5.3.2 測定した回転数を制御系へ取り込めない場合

5.4 m-file

参考文献



第6章 磁気軸受を用いたシール部に作用するロータダイナミック流体力の推定

6.1 背景

6.2 実験装置の概要

6.3 制御対象のモデル化

6.4 フィードバックコントローラの設計

6.4.1 安定化コントローラの設計

6.4.2 閉ループシステム同定:dx(t), dy(t), dz(t)について

6.4.3 フィードバックコントローラの設計指針

6.4.4 フィードバックコントローラの設計

6.5 AFCを用いたロータダイナミック流体力の推定について

6.5.1 ロータダイナミック流体力のモデル

6.5.2 AFC出力とロータダイナミック流体力の関係

6.5.3 ロータダイナミック流体力(係数)の推定手順

6.6 試験装置を用いたロータダイナミック流体力の推定

6.7 m-file

参考文献



第7章 あとがき

著者略歴

著:藪井 将太
東京都市大学理工学部准教授.2007 年三重大学電気電子工学科を卒業し,2009年三重大学大学院電気電子工学専攻を修了.2014 年北海道大学大学院工学院人間機械システムデザイン専攻を修了.2009 年から2015 年まで,日立製作所,およびHGST ジャパンにてハードディスクドライブの制御系設計に従事した.2016 年より三菱スペースソフトウェア株式会社に入社し,民間航空機の開発に従事.2017 年から2021 年まで名古屋大学工学研究科助教,2021 年より東京都市大学理工学部准教授.科学技術分野の文部科学大臣表彰若手科学
者賞,日本機械学会論文賞,および奨励賞などを受賞.主な研究対象は,適応フィードフォワード制御技術,機構制御の統合設計法,ロータダイナミクスの解析,磁気浮上系の制御系設計.日本機械学会,電気学会,IEEE の会員.

ISBN:9784910558233
出版社:科学情報出版
判型:A5変
ページ数:216ページ
定価:4000円(本体)
発行年月日:2023年11月
発売日:2023年11月20日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:TJFC