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未来派

百年後を羨望した芸術家たち

著:多木 浩二

紙版

内容紹介

なぜ百年後を羨望するか?
私たちは、なぜ未来に憧れ、そして失敗するのか。

20世紀、そして21世紀における文化・政治・テクノロジー・広告といったさまざまな人間活動の萌芽であった芸術・社会運動「未来派」。
その「未来派」の全容に、宣言・運動・詩法・建築・ネットワーク・ダイナミズム・音楽・ファシズム・起源という9つの切り口で迫り、現代における「未来観」の再考をはかる。
哲学者・美術批評家の多木浩二がイタリアで渉猟した膨大な書物や資料をもとに書いた渾身の遺作。

【本書の特色】
1.芸術・社会変革運動「未来派」について書かれたモノグラフ。
2.「未来派」にかかわる絵画・彫刻・建築などの図版約120点を収載。
3.「未来派」の数ある宣言文の中からとくに重要な11篇をイタリア語とフランス語から翻訳し収録。

目次

第一章 未来派という現象
1 始動――『ポエジア』から『フィガロ』へ
2 運動――すべては動く、すべては走る、すべては変わる
3 詩法――人間の言葉を変える
4 建築――あたらしい都市
5 宣言――羽のついた「ことば」が世界を飛びまわる
6 ダイナミズム――未来派がもたらす概念
7 音楽――騒音が世界を変える
8 ファシズム――全体主義の出発点
9 起源――マリネッティの感受性と詩的思考

第二章 未来派ギャラリー

第三章 機械・ファシズム、そして人間
いまを生きる人間の義務/森鷗外と未来派/社会の変革を望んだ芸術運動/羨望される人間になりそこねた私たち/システムと統治権力が日常を覆い尽くす/「未来」の宿命の端緒をひらいた未来派/未来への待機/無力感が未来派というかたちとなってあらわれる/「戦争こそ世界の唯一の健康法(衛生法)だ」/芸術の宿命/未来派の悲惨さ/人間の思想は機械からは生まれない/現在という幸福は未来を羨望しない/未来派を媒介に全体主義を考える/日本の破局の水脈/科学と芸術と言葉を繋ぎ合わせる

付録 未来派宣言の数々
1 未来派創立宣言
2 未来派画家宣言
3 未来派絵画技法宣言
4 未来派音楽家宣言
5 未来派彫刻技法宣言
6 騒音芸術
7 シンタックスの破壊 脈絡なき想像力 自由になった言葉
8 音、騒音、そして匂いの絵画
9 未来派建築宣言
10 全世界の未来派的再建
11 未来派的映画


あとがきにかえて 多木陽介

著者略歴

著:多木 浩二
1928〜2011年。哲学者。旧制第三高等学校を経て、東京大学文学部美学科を卒業。千葉大学教授、神戸芸術工科大学客員教授などを歴任。1960年代半ばから、建築・写真・現代美術を対象とする先鋭的な批評活動を開始。1968年、中平卓馬らと写真表現を焦点とした「思想のための挑発的資料」である雑誌『プロヴォーク』を創刊。翌年第3号で廃刊するも、その実験的試みの軌跡を編著『まずたしからしさの世界を捨てろ』(田畑書店、1970)にまとめる。思考と表現の目まぐるしい変貌の経験をみずから相対化し、写真・建築・空間・家具・書物・映像を包括的に論じた評論集『ことばのない思考』(田畑書店、1972)によって批評家としての第一歩をしるす。現象学と記号論を駆使して人間の生と居住空間の複雑なかかわりを考察した『生きられた家』(田畑書店、1976/岩波現代文庫、2001/青土社、2019)が最初の主著となった。この本は多木の日常経験の深まりに応じて、二度の重要な改訂が後に行われている。視線という概念を立てて芸術や文化を読み解く歴史哲学的作業を『眼の隠喩』(青土社、1982/ちくま学芸文庫、2008)にて本格的に開…

ISBN:9784910108056
出版社:コトニ社
判型:A5変
ページ数:352ページ
価格:3600円(本体)
発行年月日:2021年06月
発売日:2021年06月11日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:AGA