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文学授業のカンドコロ

迷える国語教師たちの物語

編著:助川 幸逸郎
編著:幸坂 健太郎
他著:岡田 真範

紙版

内容紹介

小中高の国語の授業、必携書!
国語の授業で、現場の教員が一番悩んでしまう「視点」「語り手」についてわかりやすく伝え、考える、今まであるようでなかった本です。
本書は、文学教材をより深く理解するための「視点」「語り手」を、なるべくわかりやすく現場の先生方に伝えるべく、物語仕立てでお届けします。
取りあげる教材は、「ごんぎつね」(新美南吉)、「走れメロス」(太宰 治)、「羅生門」(芥川龍之介)、「海の命」(立松和平)、「少年の日の思い出」(ヘルマン・ヘッセ 高橋健二訳)、「鏡」(村上春樹)、「白いぼうし」(あまんきみこ)、「故郷」(魯迅・竹内 好訳)、「舞姫」(森 鷗外)。本文中で引用するほか、全文を巻末に掲載しました。また随所にコラムを配し、「視点」「語り手」のことを理解できるように努めました。

文学が私たちにどんな影響を及ぼすのか、私たちがなぜ文学を国語教室で子どもたちに読ませるのか。これらを根源的に考えるために。時代が変わっても、本質的な問いを立て続け、子どもたちと考え続けるために。考え抜いて作った本です。
同時に物語読解のための、「視点」「語り手」について学ぶための入門書にもなっています。

執筆は、助川幸逸郎、幸坂健太郎、岡田真範、難波博孝、山中勇夫。
執筆協力に、井浪真吾(岡山理科大学教育学部講師)、金田唯人(北海道根室高等学校教諭)、菊野雅之(北海道教育大学釧路校准教授)、鈴木愛理(弘前大学教育学部准教授)、高瀬裕人(琉球大学教育学部准教授)、難波健悟(岡山県立岡山操山高等学校教諭)。

【「現場の先生たちは、いそがしい」。ワタシが役に立てることは、何かないものだろうか――。日本文学研究者のスケガワは、今日もそんな思いで、国語の先生たちの勉強会に参加する。
子どもたちを前に、授業に力を尽くしたいと考えている仲間、ヤマナカ先生、ナンバ先生、オカダ先生、加えて学生のコウサカ君とともに日々、文学授業の勉強会をひらいているのだ。
本書は、そんな迷える国語教師たちによるある日の勉強会の物語。何やら楽しげですよ。】

目次

メイキング・オブ・この本 ●助川幸逸郎

凡例

まえがき、のようなもの─スケガワ先生の独白─

登場人物紹介

第1章 「視点」を意識する—ごんぎつね・走れメロス・羅生門

1 「走れメロス」は友情の物語だと思っていたが……
【コラム】「視点」(岡田真範)
2 物語や小説には「視点」がある
3 「ごんぎつね」と視点─仕掛けられたトラップ?
4 視点は行ったり来たりする
5 「羅生門」を下人以外の視点で読んでみる─「作者」という目立ちたがり屋
6 日本語の書きことばの特性
7 文学の「視点」は同時代の世界の問題にもつながる
後日談 スケガワ先生から出された宿題に対する、コウサカ君の回答

第2章 「語り手」を意識する—海の命・少年の日の思い出・鏡

1 「鏡」は本当にあったのか
2 事情聴取─「事実」や「真実」はそのまま語られるのか?
【コラム】「語り手」(山中勇夫)
3 では「海の命」の語り手は?
4 語られた内容から語り手の思いを探る
5 「少年の日の思い出」の語り手を考えてみる

第3章 「語り手」にも認識できない世界を意識する—白いぼうし・故郷・舞姫

1 「語り手は万能、一番えらい」ではうまくいかない
2 語り手に共通する問題点
3 「白いぼうし」の語り手の背後にある世界
4 語り手にも認識できない世界の論理
5 「舞姫」の語り手の背後にある世界
6 「作品の語り手」「語り手を語らせている存在」「作者」はそれぞれ違う
【コラム】「語り手をいまある姿で語らせている存在」と「作者」(助川幸逸郎)
7 「自分と違う世界」への扉をどう開くのか
8 「故郷」の語り手の背後にある世界
9 読者に問いかけるための設定

■作品集

ごんぎつね(新美南吉)(出典『国語 四 下 はばたき』光村図書出版株式会社、二〇二〇年)
走れメロス(太宰 治)(出典『国語2』光村図書出版株式会社、二〇二一年)
羅生門(芥川龍之介)(出典『高等学校 改訂版 国語総合』株式会社 第一学習社、二〇一七年)
海の命(立松和平)(出典『国語 六 創造』光村図書出版株式会社、二〇二〇年)
少年の日の思い出(ヘルマン・ヘッセ 高橋健二訳)(出典『国語1』光村図書出版株式会社、二〇二一年)
鏡(村上春樹)(出典『村上春樹全作品1979〜1989⑤ 短篇集Ⅱ』講談社、二〇〇五年)
白いぼうし(あまんきみこ)(出典 作:あまんきみこ・絵:北田卓史『車のいろは空のいろ 白いぼうし』ポプラ社)
故郷(魯迅・竹内 好訳)(出典『国語3』光村図書出版株式会社、二〇二一年)
舞姫(森 鷗外)(出典『高等学校 改訂版 現代文B』株式会社 第一学習社、二〇一八年)

あとがき、のようなもの─コウサカ君の独白─

本当のあとがき ●幸坂健太郎

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著者略歴

編著:助川 幸逸郎
1967年生まれ。東海大学文化社会学部教授・岐阜女子大学文化創造学部非常勤講師。主な著書に『文学理論の冒険』(東海大学出版会、2008年)、『謎の村上春樹』(プレジデント社、2013年)、『教養としての芥川賞』(重里徹也との共著、青弓社、2021年)などがある。
編著:幸坂 健太郎
1986年生まれ。北海道教育大学札幌校准教授。主な論文に「論説・評論を「自分と結びつける」ことの概念区分」(『読書科学』61(2)、2019年)がある。
他著:岡田 真範
1968年生まれ。広島なぎさ中学校・高等学校教諭(現在は高等学校所属)。主な論文に「村上春樹『鏡』の授業の実践報告」(『日本文学』69(4)、2020年)がある。

ISBN:9784909658807
出版社:文学通信
判型:4-6
ページ数:232ページ
価格:1900円(本体)
発行年月日:2022年07月
発売日:2022年07月13日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JN