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まる ありがとう

著:養老 孟司
写真:平井 玲子

紙版

内容紹介

2020年12月21日、まるが天国へ旅立ちました。
養老さんは愛猫まると18年の時間を過ごし、その様子はNHKの「まいにち、養老先生、ときどき まる」でおなじみとなりました。
まるを自分自身の「ものさし」と語ってきた養老さん。まると過ごした日々、まるの死を通じて養老さんは、意識中心で頭でっかちになりがちな人間社会の危険性や、生き物にとって大切な感覚の世界について改めて思索を広げ、その視点は独自の「自足」論として本書で展開されます。
まるとの出会いと日常、生きていく術、死、ペットロス、生き物らしさなど、かけがえのない存在だったまるの死に直面して考えたことを、養老さんが語りつくしました。

まるの写真114枚掲載
まるに寄り添い、写真を撮ってインスタグラムやブログにアップしてきた、養老さんの秘書平井さんのエッセイも掲載しています。

 「ものごとを理屈にすることに長年励んできた。八十歳を十分に超えてみると、バカなことをしたものだと感じている。理屈で説明しようがするまいが、ものごとが変わるわけではない。その意味では、理屈にすることは一種の虐待であって、何に対する虐待かというなら、「生きること」に対する虐待であろう。まるは理屈なんか言わず、素直に生きて、素直に死んだ。いまでも時々しみじみ会いたいなあと思う。また別な猫を飼ったら、といわれることがあるが、それでは話が違うのである。まさに一期一会、かけがえがないとは、このことであろう」(本書 まえがきより)

「まるがいなくなって、ほぼ一年になる。まだついまるを探す癖は抜けない。まるが好んで寝転がっていた縁側に目が行く。ポンと頭を叩いて、「バカ」というと、少し迷惑そうな顔で薄目をあける。それができなくなったのが残念である。ときどき骨壺を叩いてみるが、骨壺の置き場所が、まるがふだんいたところと違うので、なんだか勝手が悪い。
「安らかに眠れ」というのが欧米の墓碑銘の紋切り型らしいが、いつも寝てばかりいたまるの墓碑銘としては、屋上屋の感がある。カントの著作『永遠平和のためにZum Ewigen Frieden 』はカントがどこかの墓碑銘から採ってきたといわれるが、このほうがいいかもしれないと感じる。みんながまる状態になれば、まさに世界は平和であろう」(本書あとがきより)

目次

・まえがき

・図らずも人気者に
・ときどきまる
・最期
・死に場所
・まるが来た日
【コラム①】秘書・玲子の今日もまぁくん日和 日常

・無口な猫
・ペットロス
・人命は地球より重いか
・まるが死んでから分かったこと
・まるはものさし
・感覚が優先する社会
・日本人は「実感信仰」
【コラム②】秘書・玲子の今日もまぁくん日和 営業部長

・まるの生き方
・ブータンの幸福
・自足する者の強み
・死んだ動物のすむ星
【コラム③】秘書・玲子の今日もまぁくん日和 男らしさ

・四門出遊
・大切なのは生き物らしさ
・多様性の否定
【コラム④】秘書・玲子の今日もまぁくん日和 二度と戻らない日々

・安藤忠雄さんからの手紙
・散歩
・虫塚
・こだわらない心
・特別な猫

・あとがき
・参考文献

著者略歴

著:養老 孟司
1937年、神奈川県鎌倉市生まれ。東京大学名誉教授。幼少時代から親しむ昆虫採集と解剖学者としての視点から、自然環境から文明批評まで幅広く論じる。東大医学部教授時代に発表した『ヒトの見方-形態学の目から』(筑摩書房)で89年、サントリー学芸賞。2003年刊行の『バカの壁』(新潮新書)は450万部を超える大ベストセラーとなった。
写真:平井 玲子
2005年5月、養老孟司の秘書として有限会社養老研究所に入社。10年3月、インターネットで「そこまるブログ」をスタートさせ、まるの写真を投稿し始める。19年11月にはinstagramにて「まるすたグラム」のアカウントを開設。まるのフォトブック『そこのまる』(武田ランダムハウスジャパン)、『うちのまる』(ソニー・マガジンズ)やDVD「どスコい座り猫、まる」の制作にも携わる。

ISBN:9784908443671
出版社:西日本出版社
判型:新書
ページ数:176ページ
価格:1200円(本体)
発行年月日:2021年12月
発売日:2021年12月02日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:WNF
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:VF