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石川達三の文学―戦前から戦後へ、「社会派作家」の軌跡

著:呉 恵升

紙版

内容紹介

戦時下、「戦争協力」資料を発掘―石川達三像を覆す!
『人間の壁』『金環蝕』『風にそよぐ葦』など社会的なテーマを描く一方、『青春の蹉跌』『僕たちの失敗』など若い男女の恋愛を描いた石川達三―。戦前の昭和10年(1935年)『蒼氓』で第1回芥川賞を受賞した作家は、南京攻略を描いた小説『生きてゐる兵隊』(1938年)が発禁処分となり、その後発表した『武漢作戦』(1939年)以降、戦争体制に全面協力していく。本書は、戦時下における石川達三の「戦争協力」文章(小説・エッセイ・批評・報告、等)を日中両国で丹念に収集し、それらの資料をもとに従来の「戦前から変わらぬ社会派作家」像に疑義を呈し、また戦後における「自由な民主主義者」としての「再転向」した「売れっ子社会派作家」を戦前・戦中と比較しながら、実証的に批判した画期的な書である。ここに「社会派作家」石川達三の実像が浮かび上がる。

目次

はじめに
第一章 リアリズム作家(第一回芥川賞作家)の誕生─『蒼氓』
第二章 戦争の「真実」を描く─『生きてゐる兵隊』
第三章 『生きてゐる兵隊』再検討─日中の評価史を比較しながら
第四章 「戦争協力」への第一歩─『武漢作戦』に始まる
第五章 戦時下における「戦争協力」(1)─日本文学報国会を中心とした「文芸銃後運動」との関わりを軸に
第六章 戦時下における「戦争協力」(2)─二つの「戦場」、「徴用」から敗戦まで
第七章 「再転向」─その敗戦後の再出発
第八章 悔恨と希望(期待)と─『風にそよぐ葦』論
第九章 その後の活動

著者略歴

著:呉 恵升
1989年、中国・山東省生まれ。2016年、国費外国人留学生として来日、明治大学大学院文学研究科日本文学専攻に入学し、指導教員宮越勉教授のもとで、2019年3月博士後期課程修了。博士(文学)。現在、同研究科助手。日本近代文学・戦争文学専攻。

ISBN:9784908028366
出版社:アーツアンドクラフツ
判型:A5
ページ数:280ページ
価格:2800円(本体)
発行年月日:2019年03月
発売日:2019年03月20日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:FB
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:1FPJ