プロパガンダの文学
日中戦争下の表現者たち
著:五味渕典嗣
内容紹介
戦う宣伝、戦う文学
文学は芸術表現なのか、それとも軍・官の情報を宣伝・拡散するツールにすぎないのか?1937年7月に勃発した日中戦争下のさまざまな資料を駆使して、軍による報道・宣伝・検閲の実態に肉薄し、火野葦平や石川達三ら従軍作家の《書法》を読みとく。
目次
はじめに
1. 本書の視角
2. 対象・方法・議論の射程
3. 本書の構成
第1章 プロパガンダとしての文学:戦記テクストの情報戦争
1. 交差するテクスト
2.「生きてゐる兵隊」事件の問題性
3. プロパガンダとしての『麦と兵隊』
4. 戦記テクストの情報戦争
第2章 文学・メディア・思想戦:〈従軍ペン部隊〉の歴史的意義
1.〈従軍ペン部隊〉とは何だったのか
2. 武漢作戦の宣伝戦略
3. 思想戦と文学者
4.〈従軍ペン部隊〉の歴史的意義
第3章 戦場を書く文体:戦記テクストの戦場表象
1. 問題の所在
2. 戦場を書く文体
3. 制約と変形
4. テクストの破綻
第4章 スペクタクルの残余:戦記テクストにおける想像力の問題
1. 禁じられた記憶
2. 記憶の動員
3. スペクタクルの残りのもの
第5章 曖昧な戦場:戦記テクストにおける他者の表象
1.〈敵の顔〉の不在
2. 戦場の教養小説
3. 戦場と〈人間性〉
4.〈われわれ〉の中の断層
第6章 言語とイメージのあいだ:プロパガンダをめぐる思考空間
1. 言語とイメージのあいだ
2.〈思想戦=宣伝戦〉論の問題構成
3. 内攻する「思想戦」
4. 戦時体制下の言説管理
第7章 中国の小林秀雄:戦争と文学者
1. 問題の所在
2. 文学(者)の領土
3. それぞれの戦場
4. 友情の効用
第8章 歴史に爪を立てる:金史良「郷愁」を読む
1. 問題の所在
2. 帝国の総力戦
3. 親日と反日
4. 金史良「郷愁」に響く声
5. テクストという名の戦場
おわりに 坂口安吾の一二月八日
注
[附録] 日中戦争期戦記テクスト関連略年表
あとがき
ブックデザイン:宗利淳一