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変形性膝関節症の保存療法

著:山田英司

紙版

内容紹介

変形性膝関節における理学療法の良質なエビデンスは多数報告されていますが、臨床現場では保存的治療戦略の確立には至っているとは言えません。
また、現在15万人以上の理学療法士がいる中で、変形性膝関節の保存療法をしっかり理解して、患者を治療している人はとても少ないと言えます。
実際に、変形性膝関節の保存療法として、あまり自身がなく、「何をしたら良いかわからない」と、そう感じているセラピストは、少なくないのではないでしょうか。
その原因の1つとして、変形性膝関節症によって起こる機能障害の仮説検証を繰り返していく過程が十分に行えていないことが挙げられます。
仮説検証とは対象者の訴えや症状から病態を推測し、仮説に基づき適切な検査法を選択し、対象者の最も適した介入方法を決定していく一連の過程のことを言います。この仮説検証を日々の臨床で繰り返していくことが良質な医療を患者に提供するために不可欠です。
『変形性膝関節症の保存療法』では、この仮説検証をする上で必要な知識やノウハウを余すことなく詰め込こんでいます。
山田英司先生が遺した本書が、変形性膝関節症の保存療法における、新しいスタンダードとなることを確信しています。

目次

発刊に寄せて
第1 章  変形性膝関節症に対する保存療法の重要性 
1 . 変形性膝関節症の危機的な現状
1) 急務とされる、変形性膝関節症の予防と治療の確立
2) 理学療法開始までの過程に潜む危険性
3) 変形性膝関節症の保存的理学療法のエビデンス
4) 変形性膝関節症の疾患特性と臨床推論重要性
5) 変形性膝関節症に対する理学療法における危機感
2 . 変形性膝関節症における保存的理学療法について
1) 変形性膝関節症の保存療法の2 本の柱
2) メカニカルストレスを軽減させる原因療法的理学療法の重要性
第2 章  変形性膝関節症とはどんな疾患か?改めて考えてみよう!
1 . 変形性関節症の定義について
1) 変形性膝関節症とは
2) 変形性膝関節症の病期分類について
2 . 関節軟骨の基礎知識
1) 関節軟骨の構造について
❶ 軟骨組織の概要と構成要素
❷ 軟骨組織の種類と特徴
❸ 関節軟骨の構造、層について
❹ 関節軟骨下骨が露出した場合には、「軟骨がすり減っているから痛い」が通用する
2) 関節軟骨がなくなった場合の臨床例
3) 軟骨はすり減らない
❶ 真の原因はすり減るのではなく代謝障害
❷ 代謝障害が起こる理由とは
❸ 代謝障害を起こす関節不安定性
3 . X 線所見と症状は一致しない
1) 画像所見と疼痛
2) なぜ痛いのか?
第3 章  変形膝関節症は何が痛いのか?
1 .変形性膝関節症の疼痛とは
2 .変形性膝関節症の疼痛と推論過程
3 .変形性膝関節症の痛みを発している組織は何か?
1) 膝蓋下脂肪体
2) 滑膜および関節包
3) 筋腱付着部
❶ 鵞足
❷ 膝蓋靭帯
❸ 腸脛靭帯
4) 軟骨下骨
5) 半月板
6) 筋実質
7) 神経原性疼痛
❶ 伏在神経由来の関連痛
❷ 半月板由来の関連痛
❸ 近位の神経障害の関連痛
第4 章  変形性膝関節症の臨床に必要な機能解剖学と運動学
1 . 膝関節の機能解剖学
1) 大腿脛骨関節の構造について
2) 膝蓋大腿関節の構造について
3) 変形性膝関節症の臨床で重要な筋
❶ 前面筋(大腿四頭筋)
❷ 後面筋群(縫工筋、薄筋、半腱様筋、半膜様筋、膝窩筋)
4) 変形性膝関節症の臨床で重要な軟部組織(靭帯、半月板、膝蓋上囊、膝蓋下脂肪体)
❶ 靭帯:内側側副靭帯、外側側副靭帯、前十字靭帯、後十字靭帯
❷ 後外側支持機構
❸ 半月板
❹ 膝関節にある脂肪体
2 . 膝関節の運動学
1) 膝関節の屈曲・伸展の機能
❶ 歩行時の膝関節屈曲・伸展
❷ 膝関節の伸展可動性
2) 膝関節の回旋機能
❶ 歩行時の下肢の回旋
❷ なぜ脛骨内旋位が重要となるのか
❸ 膝関節の屈伸に伴う回旋
❹ 歩行時の膝関節の回旋
第5 章  変形性膝関節症の歩行の運動力学
1 . 膝関節
1) 屈曲・伸展
❶ 角度
❷ モーメント
2) 内反・外反
❶ 角度
❷ モーメント
2 . 股関節
1) 屈曲・伸展
❶ 角度
❷ モーメン
2) 内転・外転
❶ 角度
❷ モーメント
3 . 足関節
1) 底屈・背屈
❶ 角度
❷ モーメント
2) 回内・回外
❶ 角度
❷ モーメント
4 . 加齢に伴う姿勢変化
5 . 変形性膝関節症の歩行の特徴
1) 膝関節は立脚期を通じて屈曲している
2) 膝関節は立脚期を通じて内反している
3) 股関節は後半相で伸展角度と屈曲モーメントが小さい
4) 股関節内転角度が小さい
5) 足関節は矢状面・前額面とも床面に対して水平に近い肢位で接地する
6) 加齢に伴う骨盤後傾や円背は変形性膝関節症の歩行の特徴と関連している
第6 章  変形性膝関節症の外反モーメント
1 . 膝関節外反モーメントと理学療法
1) 膝関節外反モーメント(KAM)とは
2) 過去の研究
3) 外反モーメント改善の糸口
2 . 健常者の KAM を最小化するメカニズム
1) KAM を最小化させる第1 のメカニズム
2) KAM を最小化させる第2 のメカニズム
3 . 多角的視点からみた膝関節外反モーメントの影響因子
1) 問診、疾患特異的質問表
2) 単純X 線立位正面像による重症度分類
3) アライメント
4) 関節動揺性
5) 可動域
❶ 膝関節伸展可動域
❷ 膝関節内旋可動域
6) 骨盤の水平保持能力
7) 大腿四頭筋筋力
第7 章  関節運動を改善させるための評価と運動療法
1 . 可動性の改善
1) 膝関節伸展制限の改善
❶ 膝蓋下脂肪体の柔軟性の評価と治療
❷ 後外側支持機構の柔軟性の評価と治療
❸ ハムストリングスの柔軟性評価と治療
2) 膝関節内旋制限の改善
❶ 膝関節前後方向と回旋の遊びの評価と治療
❷ 回旋の自動運動を利用した評価と治療
3) 膝関節屈曲制限の改善
❶ 膝窩中央および外側部の評価と治療
❷ 大腿前面の評価と治療
4) 膝蓋骨の可動性の改善
5) 股関節の可動性の改善
❶ 大腿筋膜張筋や腸脛靭帯の柔軟性の評価と治療
❷ 骨盤後傾の評価と治療
6) 足関節の可動性の改善について
❶ 足関節背屈可動域エクササイズ
2 . 筋機能の改善
1) 大腿四頭筋の筋機能の改善
❶ 大腿四頭筋の筋力エクササイズ
2) 股関節外転筋の筋機能の改善
第8 章  荷重動作を改善させるための評価と運動療法
1 . 足部・足関節へのアプローチ
1) フォアフットロッカー機能を改善する
❶ 足趾と足関節底屈の連動エクササイズ(座位)
❷ 足趾と足関節底屈の連動エクササイズ(立位)
❸ 歩幅を広げる歩行エクササイズ
2) 足部・足関節の前額面の機能を改善する
❶ 足関節背屈エクササイズ
❷ 荷重位での足関節背屈エクササイズ
2 . 骨盤・股関節へのアプローチ
1) 骨盤の前傾を改善する
❶ 座位での骨盤前傾エクササイズ
❷ 胸椎の柔軟性改善のためのエクササイズ
2) 骨盤の側方移動(スウェイ)を改善する
❶ 座位での荷重の側方移動
❸ 立位での骨盤の側方移動
3) 体幹の柔軟性を改善する
3 . 膝関節へのアプローチ
1) 立位でのクアドセッティング
❶ 立位でのクアドセッティング
2) 歩行を想定したクアドセッティング
❶ 荷重応答期(LR)を想定したクアドセッティング
❷ 立脚終期(TSt)を想定したクアドセッティング
3) 歩行を想定したエクササイズ
索引

著者略歴

著:山田英司
1970年、愛知県生まれ
1993年、国立善通寺病院附属リハビリテーション学院理学療法学科を卒業し、理学療法士となる。
石川県立中央病院、香川医科大学附属病院、回生病院関節外科センターなどに勤務し、非常勤講師としても多くの学校で教壇に立つ。2007年、香川医科大学(現 香川大学)大学院博士過程機能構築医学先行医用工学部門を終了し博士号を取得。2011年より徳島文理大学保健福祉学部理学療法学科の准教授となる。その後も岡山医療専門職大学や仙台青葉学院短期大学など、教育・研究の場で活躍。
2021年没 享年52歳。

ISBN:9784904862506
出版社:運動と医学の出版社
判型:B5変
ページ数:192ページ
定価:4800円(本体)
発行年月日:2022年02月
発売日:2022年02月14日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:MNC