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シリーズ 日本語の醍醐味 8

廃墟の眺め

著:吉行 淳之介
監:七北 数人

紙版

内容紹介

【2023年5月現在、新本が定価(2,600円+税)で購入可能】

「私たちの行手に、また廃墟が現れてきた。」(「廃墟の眺め」より)
忍び寄る不安。胸にともる灯。世界の底から響く音。驚くほど詩的で繊細、かつ感覚的でなまめかしい吉行淳之介の傑作短篇集。
 安岡章太郎、遠藤周作らと共に「第三の新人」と呼ばれ、性文学の旗手でもあった吉行淳之介の作品には、無頼派と近しいニヒリズムがあった。その心象風景は静謐で、廃墟のように寒々としている。敏感すぎる神経が不吉な妄想を招き寄せる。妄想が妄想を生み、しだいに現実を侵食していく。どこかにひと筋の光はないか。魂が叫びをあげる。
 衝撃的な処女作「薔薇販売人」から、人の心の底知れなさと人間関係の怖さをえぐった「人形を焼く」「出口」、優しく切ない「寝台の舟」「香水瓶」、神経がひりひりするような病気小説の数々、全集未収録の生々しい妄想譚「食欲」「梅雨の頃」、戦後の荒廃と重なる心の廃墟を映す「廃墟の眺め」まで、ヴァラエティに富む吉行文学の精粋、全17篇。

※七北数人氏を監修者に迎えた「シリーズ 日本語の醍醐味」は、“ハードカバーでゆったり、じっくり味わって読みたい日本文学”をコンセプトに、手に汗握るストーリーではなく、密度の濃い文章、描写力で読ませる作品、言葉自体の力を感じさせる作品を集成してゆきます。

目次

薔薇販売人
祭礼の日
治療
夜の病室
重い軀
梅雨の頃
人形を焼く
寝台の舟
鳥獣虫魚
島へ行く
食欲
家屋について
出口
技巧的生活(序章)
錆びた海
香水瓶
廃墟の眺め

解説/七北数人

著者略歴

著:吉行 淳之介
吉行淳之介(よしゆき じゅんのすけ)
1924年、岡山市生まれ。新興芸術派の作家吉行エイスケと美容家あぐりの長男。妹に女優の和子と詩人で芥川賞作家の理恵がいる。2歳の時、東京に転居。1944年、岡山連隊に入営するが気管支喘息のため4日で帰郷。1947年、東京大学英文科中退後、大衆誌『モダン日本』の記者となる。大学在学中より『葦』『世代』『新思潮』などに短篇を発表、1952年から3回芥川賞候補になり、1954年に「驟雨」で芥川賞を受賞。安岡章太郎、遠藤周作、庄野潤三、小島信夫、阿川弘之らと共に「第三の新人」と呼ばれた。1994年、肝臓癌のため死去。
 主な著書に『原色の街』『砂の上の植物群』『星と月は天の穴』(芸術選奨文部大臣賞)『暗室』(谷崎潤一郎賞)『鞄の中身』(読売文学賞)『夕暮まで』(野間文芸賞)などがある。
監:七北 数人
七北数人(ななきた かずと)
1961年9月23日名古屋市生まれ。大阪大学文学部卒。出版社勤務を経て90年頃から文芸評論活動を始め、『坂口安吾全集』(筑摩書房)の編纂にも携わる。主な著書に『評伝坂口安吾 魂の事件簿』(集英社、2002)、『泥酔文学読本』(春陽堂書店、2019)など、編著書に岩波文庫および春陽堂書店の坂口安吾関連作品集、烏有書林「シリーズ 日本語の醍醐味」など多数。

ISBN:9784904596104
出版社:烏有書林
判型:4-6
ページ数:376ページ
定価:2600円(本体)
発行年月日:2018年01月
発売日:2018年01月23日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:FB
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:1FPJ