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はたらく土の虫

著:藤井 佐織

紙版

内容紹介

土の上で忙しそうに動き回る虫はいったいなにをしているのか。
土の中にいるたくさんの虫は、動きにくい環境の中で何を食べ、どうやって生きているのか。
そして、生態系の中でどんな役割を担っているのか。
気鋭の研究者が、今わかっていることを解説します。
挿絵は、虫の絵で有名なくぼやまさとるさん。
ほのぼのとしながら適確に内容をとらえています。
写真は、虫たちを美しく撮れる写真家の吉田譲さん、根本崇正さん。
それらの絵や写真が、驚くような生態をもつ虫たちの世界に誘います。

目次

まえがき
第1章 生態系のはなし 
1生態系の中の物質の流れ
  虫たちのいる生態系 
  窒素やリンは土と植物の間で循環する 
  炭素は生物の呼吸によっていったん大気に還っていく 
  生物のはたらき
2植物と動物のはたらき
  植物のはたらき
  植物がもつ、虫たちが食べにくい硬さや渋み
  動物のはたらき
  食物連鎖に流れるエネルギーの量
  死んだ餌から始まる腐食連鎖
3分解者が住む土の中の世界
  虫たちは薄く、狭いところに集中して住んでいる
  住みかの環境は細かく分かれる
  強力な分解者、微生物も住んでいる
  土壌動物の種類と数
4「分解」における虫たちのはたらき
  体のサイズによるグループ分け
  腐食連鎖を通して有機物を分解し、土をつくる
  落ち葉を直接食べる大きな虫は強力な分解者
  住み場所を改変する生態系エンジニア
  微生物食者は微生物のはたらきに影響する
第2章 土に暮らす虫たちの紹介
1ミクロファウナ―体の幅が〇・一ミリメートル以下の極小の虫
①原生生物――植物でも動物でもない単細胞の生き物
②クマムシ――想像を超えた環境で生きられるすごい生き物
③センチュウ――多様な戦略であらゆる場所に生息する
2メソファウナ―体の幅が二ミリメートル以下の虫
①ヒメミミズ――体の節が分かれて増殖することも
②トビムシ――お尻にあるバネで飛び跳ねて逃げる
③ダニ――土壌中で最も優占する節足動物
④カニムシ――ハサミを駆使する強力なハンター
⑤カマアシムシ――眼も触角もない、鎌状の脚をもつ虫
⑥コムシ――数珠のような長い触角をもつ
⑦コムカデ、エダヒゲムシ――白く透き通った、足の少ない多足類
3マクロファウナ―体の幅が二ミリメートル以上の虫
①クモ――土の中のトッププレデター
②ムカデ――待ち伏せと毒で獲物を捕らえる
③ヤスデ――大量の落ち葉を食べて自分の糞も食べる
④ワラジムシ ――水界と陸域の中間的性質をもつ土壌で繁栄
⑤ミミズ ――土壌を耕しながら大量に食べる「大地の腸」
⑥シロアリ ――土壌動物随一の分解能力をもつ
⑦アリ ――多くが肉食、土の中では狂暴な生き物
⑧さまざまな昆虫の幼虫――一生ののうちの一時期だけ土で過ごし、物質を循環させる
⑨地表性甲虫――土に似た地味な色のものがほとんど 
⑩ナメクジ、カタツムリ ――食べるものは時と場合によって変わる
第3章「分解」だけではない土壌動物のはたらき
1根に依存する土壌動物のはたらき
  根からにじみ出る粘液や根と共生する菌を食べる虫
  根から出る液を引き金に根の周りで分解が進む
  根の周りで微生物を食べる虫が植物の成長を助ける
  菌根菌と植物の共生関係
  菌根菌を食べる虫も植物の成長に影響を及ぼす
2捕食というはたらき
  捕食者が餌生物同士の関係性を変える
  トビムシが菌根菌・腐生菌・病原菌の競争に影響する
  原生生物やセンチュウも根の周りの細菌の種構成を変える
3運搬によるはたらき
運んだり運ばれたり
菌は胞子をつくって増える
多くの虫が胞子の散布に関わる
いろいろな運搬と便乗
偶然が重なって結果を導く
第4章 土壌動物の生きざま
1土壌ならではの制約
  動きにくく真っ暗な土の中で生きる
  匂いを利用する虫
  土の中は移動しにくい
  土の虫の食べ物の好き嫌い
  好みはあっても土の中で選んでいる余裕はない?
  土壌動物は雑食者がほとんど
2多くの種が共存できる不思議
  ある空間である種が独り勝ちしないのはなぜか
  餌が異なれば共存できる
  ミクロスケールでの住み分けが餌の違いにつながる
  トビムシとササラダニがもつ異なる生存戦略
  攪乱や捕食が多様性を生み出す
3さまざまな土壌動物の集まり
  場所ごとに異なる群集が形成される
  地上の植物と作用し合う地下の虫
  地上と地下の群集の入れ替わりは連動する
  地形がさまざまな群集をつくり出す
  土の虫の移動スケールに謎が残る
第5章 生態系の調和
1多様性の意義
  多様な虫がいることに意義はあるのか
  多様であればはたらきが大きいわけではない
  少しずつ異なる性質が生態系を持続させる
2バランスが壊れてしまうその前に
土の群集の絶妙なバランス
最後に
あとがき
索引

著者略歴

著:藤井 佐織
国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所 主任研究員。
2012年 京都大学大学院農学研究科博士課程修了。博士(農学)。
日本学術振興会海外特別研究員(派遣先:オランダ アムステルダム自由大学)等を経て2018年より現職。
専門は森林土壌を対象とした生態学で、土壌動物の多様性と機能(はたらき)に関する研究に従事。

ISBN:9784902381467
出版社:瀬谷出版
判型:B6
ページ数:156ページ
価格:2400円(本体)
発行年月日:2023年11月
発売日:2023年11月30日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:PDZ
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:PSV