哲学者・中村雄二郎の仕事
<道化的モラリスト>の生き方と冒険
著:大塚 信一
内容紹介
パスカル、西田哲学から、情念論、共通感覚、臨床の知、共振する宇宙の秘密まで、たゆむことなく新たな問題に挑戦し続けた中村雄二郎。
その生き方と、真に独創的で奇跡的な哲学的冒険の全貌を、半生をかけて伴走した著者が描き切る。
目次
序 章 “哲学者”とは
第一章 生きること、考えること—『哲学の現在』の意味
1 書いてほしかった最初の本
2 『哲学入門』をめぐって
3 『現在』と『入門』の違い
4 イメージと概念の結合
5 いつ発狂しても
6 「語る主体(シユジエ・パルラン)」の働き
7 共通感覚という媒介
第二章 哲学者の誕生
1 物理学から哲学へ
2 パスカルの方法全体の考察
3 文化放送入社
4 「プロヴァンシアル」全訳の刊行
5 《新稿》「パスカルと現代」の意味
第三章制度と情念をめぐって
1 日本の哲学へのいらだち
2 「情念」を問題にする
3 通常と異なった博士論文
4 「制度論」の欠落
5 芝居を見るというフィールドワーク
第四章 日本の哲学と思想の再検討—『思想』の思想史
1 「思想」五〇〇号の歴史的再検討
2 新カント派から現象学へ
3 戦争まで
4 戦時下から敗戦後まで
5 冷戦と社会主義の問題
6 安保闘争、近代化とナショナリズム、疎外論
7 現実をどうとらえるか
第五章 〈共通感覚〉の開く世界
1 出発点としての『感性の覚醒』
2 〈共通感覚〉とは何か
3 面白い時代
4 最初の里程標
5 アリストテレスの〈共通感覚〉論
6 視覚神話と五感の組み換え
7 日常の言葉と〈共通感覚〉
8 記憶と時間
第六章 躍動する精神Ⅰ—『魔女ランダ考』『西田幾多郎』『述語集』
1 イタリアからの手紙
2 〈魔女ランダ〉と〈パトスの知〉
3 〈演劇的知〉から〈臨床の知〉へ
4 西田哲学に挑む
5 ヘルメス神のように
6 中村哲学のエッセンス
第七章躍動する精神Ⅱ—〈汎リズム論〉の構築に向けて
1 音とリズムの宇宙
2 リズムを含む〈かたち〉の冒険
3 密教世界とリズムと振動
4 〈色〉と〈かたち〉の関係
5 螺旋、渦巻き、カオス
6 〈かたち〉と〈力〉をめぐって
7 かたちをめぐる冒険の旅
第八章中村哲学の形成
1 旺盛な活躍
2 「善の研究」に対する「悪の哲学」
3 生(なま)で実存する〈悪〉
4 ケガレと祓い
5 オウム事件のあとで
6 哲学の生きたことば
7 『述語的世界と制度』をめぐって
終 章 <道化的モラリスト>の見事な生き方
[補遺] 『述語的世界と制度』を読む
あとがき