出版社を探す

奇跡の島々の先史学

著:高宮 広土

紙版

内容紹介

〈島の先史学〉の最前線から挑む、人類史に新たな1ページを加える奇跡「島嶼文明」とは。旧石器時代、貝塚時代、グスク時代と変遷した奄美・沖縄諸島は、数千年にわたって狩猟採集民がいた世界でも極めて希な存在。その謎に最新の学術的知見で迫る一冊。
著者は長年琉球列島の先史・原史時代を研究、様々な発掘調査に参加して、植物遺体のフローテーションを駆使し、これまで多くの学術論文を発表してきた。本作はこれまでの集大成といえる内容を、一般読者にもわかりやすく伝えるべく書き下ろされた。先史・原史時代の奄美・沖縄諸島は、旧石器時代にホモ・サピエンスがいた島、数千年にわたって狩猟採集民がいた島、狩猟採集から農耕への変遷があった島、狩猟採集民のバンド社会から王国が成立した島、ヒトと自然が調和した島として、人類史的にも大変貴重な存在であることを、最新の調査、発見から導き出している。研究者から一般読者まで場広い考古学関係者、ファンに、あらたな知的好奇心を与える一冊です。

目次

プロローグ  

序 章 琉球列島先史・原史時代の謎とは 
  はじめに―人類史・世界史に新たな一ページを加える可能性
  奄美・沖縄諸島の編年  
  各章の内容  

第一章 現代奄美・沖縄諸島人の起源 
  はじめに  
  ヒト(ホモ・サピエンス)はいつごろ奄美・沖縄諸島に適応したか  
  伊藤慎二さんの反論  
  爪形文土器以前  
    「古い方のギャップ」  「新しい方のギャップ」 
  「古手の土器」論争   
  まとめ―ヒトはいつごろ奄美・沖縄諸島に適応したか  
  現代奄美・沖縄諸島人の起源  
  本土弥生人との接触  
  なぜ「突然」農耕がはじまったのか 
  新たなデータ  
  文化の激変  
  喜界島城久遺跡群   
    二〇〇七年ごろまでの解釈   城久遺跡群発掘調査最終報告 
  遺伝学的情報  
  まとめ―現代奄美・沖縄諸島人の起源  

第二章 狩猟採集民のいた島  
  植物遺体からみた沖縄諸島の先史時代―『島の先史学』まで  
  前1期から後2期の植物食利用  
    前1期  前2期  前3期  前4期  前5期 
    後1期  後2期 
  狩猟採集民のいた島、奄美・沖縄諸島  
  三つのレベルで貴重、狩猟採集民が存在した意義  
  狩猟採集民のいた島:考古学的データ  
  狩猟採集民のいた島:文化人類学的データ  
  熱帯雨林と狩猟採集民  
  まとめ―狩猟採集民のいた島、奄美・沖縄諸島  

第三章 貝塚時代における社会組織の変遷
  グスク時代以前の社会組織とは―複雑な狩猟採集民の社会?  
  貝塚時代の社会組織の変遷―〈貝の道〉以前  
    前1期~前3期前半  前3期後半~前4期 
    前5期 i)定住化へ?  ⅱ)複雑化へ? 
  貝塚時代の社会組織の変遷―〈貝の道〉のころ、その後  
    後1期  後2期 i)沖縄諸島 ⅱ)奄美諸島
  まとめ―貝塚時代の社会組織の変遷  
  「ノコギリの刃」のような社会組織の進化  
    「複雑な社会の進化」のパターンとは  奄美・沖縄諸島でのケース
  Big Jumpはなぜおこらなかったのか? 
  貝塚時代における社会組織の変遷の意義  

第四章 狩猟採集から農耕へ
  はじめに  
  奄美・沖縄諸島における農耕のはじまり―『島の先史学』のまとめ  
    奄美諸島  沖縄諸島 
  奄美諸島の初期農耕  
    山田中西遺跡  山田半田遺跡  前畑遺跡  
    小ハネ遺跡  前当り遺跡 
  奄美諸島の初期農耕のまとめ  
  沖縄諸島の初期農耕  
    小堀原遺跡  ウガンヒラー北方遺跡  屋部前田原貝塚 
  沖縄諸島の初期農耕のまとめ  
  北から南へ拡がった奄美・沖縄諸島の農耕  
  グスク時代の農耕―沖縄諸島の場合  
    フローテーション導入以前の理解   フローテーションからみえてきたこと 
  グスク時代の生業―狩猟採集中心? 農耕中心?  
  フローテーションの有用性  
    鳳雛洞遺跡  宇木汲田遺跡 

第五章 ヒトと自然が調和した島?  
  はじめに―ヒトは環境に影響を与える   
  島嶼環境とヒト  
    地中海の島々  カリブ海の島々  オセアニアの島々 
  狩猟採集民と島  
    カリフォルニアチャネル諸島  コディアック島  
    アリューシャン諸島  ニュージーランドの南島およびチャタム諸島 
  奄美・沖縄諸島貝塚時代―『島の先史学』の復習  
    脊椎動物利用  貝類利用 
  樋泉岳二さんによる脊椎動物の再々分析  
  黒住耐二さんの貝類利用に関する解釈  
  植物遺体からの推論  
  マガキガイの分析  
    国頭村サンプル  本部町サンプル  伊江村サンプル 
    読谷村サンプル  全てのサンプル 
  消えたマガキガイ  
  ボーリングコア分析  
  まとめ―ヒトと自然が調和した島、奄美・沖縄諸島?  
  アマミノクロウサギの不思議さ  

第六章 最古の土器をもとめて
  「爪形文土器かあ~」  
  奄美諸島最古の堅果類の年代と「条痕文土器」の年代ギャップ  
  二〇一八年半川遺跡(第三次)発掘調査開始  
    奇跡的なはじまり   宝の山? 「Science級の遺跡になるかもしれないね」 
   動物の骨、貝殻が……ない…… 
  爪形文土器・押引文土器の年代 
  これだ! これで説明がつく! 
  半川遺跡の価値はまだまだあった 
    とても古い、しかも多量の堅果類の検出  島では世界最古の住居跡? 
  まとめと半川遺跡の展望  


終 章 先史・原史時代に起こった奇跡「島嶼文明」  
  旧石器時代にホモ・サピエンスのいた島  
  狩猟採集民のいた島  
  数千年(あるいはもっと長期間)狩猟採集民のいた島  
  狩猟採集から農耕への変遷のあった島  
  狩猟採集民のバンド社会から国が成立した島  
  ヒトと自然が調和した島?  
  奄美・沖縄諸島の自然の豊かさについて  
  先史・原史時代に起こった奇跡「島嶼文明」  

  エピローグ 
  謝辞  
  参考文献  

著者略歴

著:高宮 広土
一九五九年沖縄県那覇市生まれ。一九九七年人類学博士(カリフォルニア大学ロスアンジェルス校UCLA) 専攻:先史人類学。
一九九三年札幌大学女子短期大学部講師、二〇〇二年札幌大学文化学部教授、二〇一五年鹿児島大学国際島嶼教育研究センター教授を経て現在にいたる。主な著書に『島の先史学 パラダイスではなかった沖縄諸島の先史時代』、『先史・原史時代の琉球列島〜ヒトと景観』(伊藤慎二との編著)、『琉球列島先史・原史時代における環境と文化の変遷に関する実証的研究 研究論文集』(新里貴之との編著)、『奄美・沖縄諸島先史学の最前線』(編著)など。第二十四回沖縄文化協会賞 比嘉春潮賞受賞(二〇〇二年度)、第二十八回沖縄研究奨励賞受賞(二〇〇六年度)。札幌大学名誉教授(二〇一五年)。

ISBN:9784899824039
出版社:ボーダーインク
判型:4-6
ページ数:336ページ
定価:2200円(本体)
発行年月日:2021年04月
発売日:2021年04月15日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:NHF
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:1FPJ-JP-H