人類学専刊
ジェンダーと災害の民族誌
変容する農民カーストとネワール社会
著:竹内 愛
内容紹介
カースト制とジェンダー構造が根強いネワール社会で、女性自助組織ミサ・プツァの活動と自立を模索する女性たちの姿を描く。
目次
まえがき
●第Ⅰ部 ネワール民族の農民カーストの社会と女性の立場
第一章 マッラ王朝の旧王都パタン──宗教的都市構造とネワール社会構造
第一節 旧王都パタンの宗教的世界観を具現化した都市構造
第二節 ネワール民族のカースト制度の特徴
第三節 仮面舞踊劇カルティック・ピャカンに見るカースト間関係
第四節 まとめ──都市構造・社会構造と仮面舞踊劇
第二章 ネワール農民カースト「ジャプ」の社会関係
第一節 ジャプ社会の概要
第二節 ジャプの家族と親族──Pトール(ローカル・コミュニティ)での参与観察から
第三節 ジャプ社会の連帯・相互扶助
第四節 まとめ──ジャプ社会における地域コミュニティの強い絆
第三章 ネワール農民カースト「ジャプ」のジェンダー構造
第一節 ジャプ女性の日常と非日常
第二節 ジャプ社会における女性の位置、役割とそれを体現する所作
第三節 宗教的浄・不浄観からみた女性の位置づけ
第四節 まとめ──女性の両義性と生涯のサイクル
●Ⅱ部 パタンにおける女性自助組織「ミサ・プツァ」の成立・発展とジェンダー変革
第四章 女性自助組織「ミサ・プツァ」の成立と発展
第一節 ミサ・プツァ成立とその背景―外的な影響
第二節 ミサ・プツァの内発的展開と女性たちの活動
第三節 ミサ・プツァの内発的な発展のメカニズム
第五章 女性自助組織「ミサ・プツァ」の女性、社会への影響
第一節 女性たちのミサ・プツァとの関わりと生活への影響
第二節 ミサ・プツァが発揮した社会変革の力
第三節 行政主導による「金融組合化」への動きとその効果
●第Ⅲ部 地震災害とコロナ禍の中でのミサ・プツァ
第六章 ネパール大震災(二〇一五年)の被災と復興
第一節 二〇一五年ネパール大地震による被害と公助
第二節 パタンの被災状況と共助による復旧・復興
第三節 ネパール大地震後のジャプ女性たちの創造的復興の実践
第四節 災害に顕在化するカースト間の格差
第七章 COVID–19パンデミックとミサ・プツァ
第一節 コロナパンデミック禍における災害ケア
第二節 女性自助組織ミサ・プツァによるロックダウン中の活動
第八章 開発途上地域における新たな女性像──災害レジリエンスとジェンダー
第一節「災害とジェンダー」研究
第二節 災害レジリエンスとは
第三節 「災害とジェンダー」における「もう一つの視点」──災害レジリエンスにおける女性自助組織の役割
第四節 組織化によって「復興主体」となることができた女性たち
終章 女性の自立のための多様な道筋──ジェンダー人類学の視座から
第一節 先行研究の検討と問題の所在
第二節 ネワール女性自助組織の「派生的活動」の意義──ジェンダー構造の変革
第三節 「個のケイパビリティ」から「集団的ケイパビリティ」へ──組織化の重要性
第四節 女性自助組織の持つ課題と今後の展望
あとがき
参考文献
コラム:社会学における「開発」「発展」「開発援助」
コラム:ジェンダー
資料:用語説明
索引