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先端的D&O保険

会社役員賠償責任保険の有効活用術

著:山越 誠司

紙版

内容紹介

D&O保険(会社役員賠償責任保険)は、二十数年前にアメリカから導入されて以降、アメリカのD&O保険とわが国のD&O保険で明らかに異なる発展形態を示してきており、アメリカ型の先端的D&O保険は会社を補償する保険として、日本の伝統的D&O保険は役員個人を補償する保険として構成されているといわれています。
 このアメリカ型の先端的D&O保険における保険保護や被保険者の範囲は広く、従来のわが国のD&O保険であれば補償の対象外あるいは免責になっていた事項でも有責とされて保険金支払の対象となることも多く、そのため、先端的D&O保険約款の本来の機能を理解していないと、伝統的D&O保険にあっては保険契約者や被保険者そして保険者さえも予期しなかった結果がもたらされことにもなり、先端的D&O 保険約款の理解や解釈は非常に重要な事柄となっています。
 近時、先端的D&O保険は外資系の保険者を中心にわが国にも持ち込まれ、今では、認可商品あるいは特約を付帯した商品として販売されてきている実態が広がりを見せています。
本書は、日本の経済社会状況の変化や企業の国際化などを背景に、先端的D&O保険がそれぞれの経営環境の下で活動する会社役員や企業におけるリスクマネジメントの役割を担いながら普及していく中で、徐々に明らかになってくると思われる様々な課題を先取りし、先端的D&O保険約款を実効性と限界の視点から多角的に分析と解説を試みています。
内容を要約すると、まず、先端的D&O保険約款の構造をアメリカでの発展経緯や現状から分析し、多国籍企業が採用している全世界担保の契約形態を整理し、ダイナミックなD&O 保険約款の進化と現実をわが国の伝統的D&O保険と比較しながら紹介します。そのうえで、保険保護の範囲と保険金支払限度額、会社と役員の利益相反、倒産時の対応、免責分離と告知分離、保険契約の情報開示、保険と会社補償の補完関係など多種多様な問題について、実務面からかなり突っ込んで考察しています。さらに、保険法が現実的に規定できることの限界や約款解釈の手法の変化等を確認しつつ、先端的D&O保険の契約実務が保険契約法全般に与える示唆も提示しています。
現在、国の施策として企業ガバナンスに関わる会社法制の見直しが議論されており、その中で、会社役員に関わる規律の整備が図られ、優秀な役員人材の確保とともに役員に対しリスクを過度に回避することがないよう適切なインセンティブを付与するための手段としてD&O 保険や会社補償が注目され、これを会社法の中に位置づけるための明文化の動きが具体化しています。
会社役員個人や会社本体に対して賠償責任を追及し訴訟に発展するケースが増加している昨今、先端的D&O保険のもつ実効性とその果たす役割、有用性は大きなものとなってきています。本書は、D&O保険の導入を勧める損保会社や代理店及び営業担当者はもとより、企業のD&O保険実務担当者や企業法務弁護士にとっても実務参考書として必読の書といえます。

目次

序章
■第1章 アメリカ型D&O保険の発展経緯と課題
  第1節 序説
  第2節 D&O保険を活性化させるアメリカの背景
  第3節 厳格なアメリカ証券訴訟とサイドCの課題
  第4節 小括
■第2章 D&O保険の国際化における視点と課題
  第1節 序説
  第2節 海外での法令違反とD&O保険の機能
  第3節 国際的企業が検討すべきD&O保険の要点
  第4節 小括
■第3章 グローバルD&O保険プログラムの構造と限界
  第1節 序説
  第2節 保険プログラムの基本的な構造と実際の機能
  第3節 保険プログラムの課題とあり得る解決方法
  第4節 小括
■第4章 D&O保険における事故のおそれの判断基準
  第1節 序説
  第2節 損害賠償請求方式と事故のおそれの関係
  第3節 英米法系の国における裁判例と解釈
  第4節 小括
■第5章 倒産と会社買収時におけるD&O保険
  第1節 序説
  第2節 倒産時におけるD&O保険の機能
  第3節 会社が買収された場合のD&O保険
  第4節 小括
■第6章 D&O保険の免責分離条項と告知分離条項
  第1節 序説
  第2節 免責分離条項と一連の損害賠償請求
  第3節 告知分離の理論とわが国への適用
  第4節 小括
■第7章 D&O保険の支払限度額増額と利益相反
  第1節 序説
  第2節 支払限度額増額の課題と新たな展開
  第3節 免責条項に関する当事者の利益相反
  第4節 小括
■第8章 近年のD&O保険の論点に対する提言
  第1節 序説
  第2節 保険料の負担方法と保険契約の情報開示
  第3節 D&O保険と会社補償制度の相互補完
  第4節 小括
■第9章 D&O保険実務から保険契約法への示唆
  第1節 序説
  第2節 企業保険に必要な国際取引法の深化
  第3節 約款解釈論の進展と信義則の可能性
  第4節 小括
■終章
資料 会社役員賠償責任保険約款(サンプル)
事項索引

著者略歴

著:山越 誠司
■山越誠司(やまこし せいじ)
現職:オリックス株式会社投融資管理本部ポートフォリオ管理部担当部長
略歴:1968年札幌市に生まれる。1993年、東洋大学大学院法学研究科博士前期課程修了、日産火災海上保険株式会社入社。2001年以降、エーオン・リスク・サービス・ジャパン株式会社、株式会社エヌ・エヌ・アイ、オリックス株式会社、フェデラル・インシュアランス・カンパニーを経て、2016年 オリックス株式会社再入社。

ISBN:9784892934117
出版社:保険毎日新聞社
判型:A5
ページ数:264ページ
定価:3200円(本体)
発行年月日:2019年05月
発売日:2019年05月20日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:LNCB