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国家安全保障戦略入門

編著:A.オラー
編:磯部 晃一

紙版

内容紹介

米軍の最高学府である国防大学が長年教えてきた戦略立案のプロセスをマニュアル化した『国家安全保障戦略入門(NSSプライマー)』の全訳!
軍人、国家安全保障会議で勤務した職員らが英知を結集してまとめた本書は、戦略理論の解説ではなく、いかに戦略を編み出すかに焦点を当てた実務書である。その戦略立案の本流をなすのは「戦略ロジック」と「DIME」を組み合わせた新しい戦略アプローチである。国家が生存し、戦いに勝利するためのバイブルであり、ビジネスにおける経営戦略や方針策定においても極めて有効なツールである。

目次

はじめに(磯部晃一)1
日本の読者へ(A・オラー、S・へフィントン)5

第1部 導入編
なぜ国家安全保障戦略は必要か(磯部晃一)15

 米国防大学は国防省における最高学府 16
 国家や軍のリーダーを養成する 17
 戦略とは何か? 19
 国家安全保障戦略とは何か? 22
 米国の「国家安全保障戦略」策定の経緯 23
 中国を名指しで非難したトランプ政権の「国家安全保障戦略」25
 ロシアのウクライナ侵攻で公表が遅れたバイデン政権の「国家安全保障戦略」27
 戦後68年にして初めて策定された日本の「国家安全保障戦略」29
 安倍政権の「国家安全保障戦略」31
 岸田政権の「国家安全保障戦略」33
   総合的な国力の最大限活用 33
   戦後防衛政策の転換 34
   次なる課題 35
 なぜ「国家安全保障戦略」が必要か? 36
 「NSSプライマー」を読む前に 38
   「戦略ロジック」とは何か? 38
   戦略で用いられる「仮定」とは何か? 40
   目的達成のための「手段」を選定する 41

第2部 翻訳編
国家安全保障戦略入門 45

謝 辞 46
まえがき 48

第1章 概 要 51

 国家安全保障戦略の紹介 51
 戦略ロジックの紹介 52
 国家安全保障戦略と下位文書との関係 55
 国家安全保障会議(NSC)とNSCスタッフの役割 57

第2章 戦略状況を分析する 59

 総 論 59
 仮定(を設けること)は極めて重要 59
 問題の明示(Problem Statement)61
 国際および国内情勢 62
 国益、脅威および機会 64
   国益(Interests)64
   脅威(Threats)66
   機会/好機(Opportunities)66
 個人と認知バイアスの認識 67

第3章 所望の目的の定義 69

 目的を定義するうえでの国益の役割 69
 政治目的(Political Aim(s))69
 具体的目的(Specific Objectives)71

第4章 手段の選択 73

 国家安全保障戦略遂行上の手段 73
 国力の要素(Elements of Power)73
 機関/アクター(Institutions and Actors)75
 国力の道具(The Instruments of Power)77
   外交(Diplomatic)78
     1)代表(Represent)80
     2)交渉(Negotiate)80
     3)実行(政策の合意)(Implement)80
   情報(Informational)81
     1)知覚(Perceive)82
     2)通知(Inform)82
     3)マニピュレーション(Manipulate)83
   軍事(Military)84
     1)武力(Force)85
     2)武力による威嚇(Threat of force)85
     3)軍事支援(Force enabling)85
   経済(Economic)87
     1)援助(Assistance)87
     2)貿易(Trade)88
     3)金融(Finance)88
 3つの構成項目間の相互関係(国力の要素・機関/アクター・道具)89
 手段の駆使と進化 91

第5章 方法の設定 93

 総 論 93
 基本的な戦略アプローチ 94
 行動様式 97
 機関/アクターによる道具の適合 98
 オーケストレーション(総合化)98

第6章 コスト、リスクおよび結果の評価 101

 反復評価の重要性 101
 コストの評価 101
 リスクの明確化 102
 実行可能性の評価 104
 レッド・チーミング 105
 方針の修正 105

第7章 結 論 108

 付録A 110
 付録B 国家安全保障戦略モデル(目的‐方法‐手段の関連)112
 脚 注 114
 用語解説 116
 主要な参考文献 123


第3部 適用編
NSSプライマーで読み解く
プーチンとゼレンスキーの戦略(磯部晃一)125

 ロシアの政治目的と作戦目標は適合していたか? 126
 ウクライナ侵略の経緯 126
   侵略前の状況 126
   「特別軍事作戦」の意味 130
   RUSIレポートの「ロシア勝利に至る複数のオプション」131
   侵略開始以降の経緯 134
   大量破壊兵器の使用に関する懸念 135
 戦略ロジックの適用─ウクライナ侵略の「政治目的」と軍事作戦の関係 138
   あいまいな「政治目的」138
   プーチンの「政治目的」の分析 141
   キーウ攻略の意味 142
   「仮定」の重要性 145
   「政治目的」の微修正 147
 戦略からもたらされるリスク 150
「国力の道具」の活用と総合調整 151
  外交(Diplomacy)151
  情報(Intelligence)154
   秘密情報を開示する米国 155
   国内向けのロシアの情報工作 156
  経済(Economy)157
   貿易面での制裁 158
   経済制裁は効果があるのか? 159
 軍事侵攻から1年半:プーチン氏の政治目的に変化はあるか? 161

 ゼレンスキー大統領の戦略性 163
  ウォロディミルとウラジミール 163
  凄みを増すゼレンスキー 164
  ウクライナの国益 166
  ウクライナの「政治目的」168
  広島サミット前後のゼレンスキー 169
  日本への教訓 171

 最後に:プーチンとゼレンスキーの今後の戦略 172
  プーチンの戦略 173
  ゼレンスキーの戦略 174
  停戦への道筋は? 175

おわりに(磯部晃一) 180

著者略歴

編:磯部 晃一
元陸将、戦略家。徳島県出身、1980年防衛大学校(国際関係論専攻)卒、陸上自衛隊に入隊。第9飛行隊長、中央即応集団副司令官、統幕防衛計画部長、第7師団長、統合幕僚副長、東部方面総監を歴任。米海兵隊大学で軍事学修士(1996年)、米国防大学で国家資源戦略修士(2003年)を取得。ハーバード大学およびアジアパシフィック・イニシアティブの上席研究員を歴任。現在、国際安全保障学会理事等に就任。防衛省統合幕僚学校および教育訓練研究本部の招へい講師として戦略などを講義。著書として、日本防衛学会猪木正道特別賞受賞作『トモダチ作戦の最前線:福島原発事故に見る日米同盟連携の教訓』(2019年、彩流社)などがある。

ISBN:9784890634392
出版社:並木書房
判型:A5
ページ数:184ページ
定価:1800円(本体)
発行年月日:2023年09月
発売日:2023年09月07日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JPS