現代アートの危機
ユートピア、民主主義、そして喜劇
著:イヴ・ミショー
訳:島本浣
訳:中西園子
内容紹介
逆説のようだが、芸術のための芸術とは何よりも大衆のための芸術だ
古い信仰が終わり、特権的地位を失った芸術はいま、多様性のなかに霧散している。こうしておとずれた現代アートの危機によって衰退するのは、美術界といった限られた領域にとどまらないことをミショーは鋭く指摘する。現代アートを美術的問題ではなく文化・社会的問題として提起し、20世紀末にフランスで大論争を巻き起こした本書の21世紀世紀最新版。
目次
「カドリージュ」叢書への前書き 7
序文 25
第Ⅰ章 危機論争の経緯と概要 31
Ⅰ 経緯 31
Ⅱ 議論とそのスタイル 38
Ⅲ 拒絶、応答、裂け目 42
1 時代の憎悪とノスタルジー 48
2 何でもありの支配 48
3 民主主義の侵略 49
4 制度? 制度だって? 50
第Ⅱ章 危機の文脈 55
Ⅰ 市場の危機と金銭免除の喪失 55
Ⅱ エリート官僚、共同組合主義と模倣主義 58
Ⅲ 大衆と芸術 66
Ⅳ 文化財の産業的生産 72
Ⅴ 知覚の変容、美学の変容 76
第Ⅲ章 比較と対比:歴史の正しい使い方について 83
Ⅰ 思想における偶像破壊、行為における偶像破壊 83
Ⅱ 秩序への回帰? 87
Ⅲ 退廃芸術と怪物的なもの 92
Ⅳ 反革命の芸術 101
Ⅴ 一九六〇年代と一九七〇年代のモダニズムについての新たな論争 110
Ⅵ ポルノグラフィー、政治的正しさと共同体の介入 122
第Ⅳ章 何の危機か? 127
Ⅰ 危機とは何か? 127
Ⅱ 市場:不安の射程 130
Ⅲ 国際化とマゾヒズム 131
Ⅳ 文化国家の現状 133
Ⅴ 批評家の健康状態 134
Ⅵ 作家の撤退 137
Ⅶ 創造のダイナミズム 140
Ⅷ 大衆の不在 143
Ⅸ 信頼の喪失 145
第Ⅴ章 救助の失敗:美的価値の擁護と行政による意味の生産 149
Ⅰ 拒絶、基準の対立、評価軸の移動 151
Ⅱ 遅ればせのモダニズム 155
Ⅲ 解釈学的戦略 159
Ⅳ メタ理論への訴求 160
1 遅ればせのモダニズムからモダニスト的伝統主義へ:ド・デューヴ 161
2 不在の解釈学:ディディ=ユベルマン 165
3 象徴、象徴、象徴:ロクリッツ 170
4 作品のノスタルジー:ミエ 174
Ⅴ 多元主義の美学 177
Ⅵ 作家の困惑 181
Ⅶ 行政による意義の産出 183
1 現代アート:文化遺産 185
2 多元主義を援助する国家 186
3 ロマン主義的魔術師と創作活動の公共サービス 187
第Ⅵ章 芸術のユートピアの終焉 191
Ⅰ 芸術概念の危機 192
Ⅱ ユートピアの終焉 195
1 民主主義的市民権のユートピア 195
2 労働のユートピア 196
Ⅲ 市民的ユートピアの活力:ラディカルデモクラシー 198
Ⅳ 労働のユートピアの危機 200
Ⅴ 芸術のユートピア 203
Ⅵ 芸術のユートピアの終焉 213
Ⅶ いくつかの防衛戦略 215
1 アヴァンギャルドの活動 215
2 聖なる歴史 217
3 美学の政治化 218
4 象牙の塔 218
Ⅷ 完全に死に絶えた 219
結論 223
訳者あとがき 237