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水道の民営化・広域化を考える

改訂版

編著:尾林 芳匡
編著:渡辺 卓也

紙版

内容紹介

2018年12月6日、改正水道法が成立した。多くの庶民の疑問をものともせず、既定方針のように審議を通した。押し寄せる管路の老朽化、料金6割上昇、人口減に維持困難……、これらは水道について語られる課題だが、その解決には広域化と民営化しかないのか。つまり、一つは、地方公共団体が水道事業者のまま、運営を民間事業者に設定すること。二つめは、基盤強化のための基本方針を定め、都道府県が関係市町村の同意を得て強化計画を策定し、広域化を図り、スケールメリットを得ること。はたして、この方向を導き出した分析は正しいのか。すでに、各地で起こっている「水」めぐる民営化と広域化の動きを検証して、「いのちの水」をどう守っていくか多角的に考える。

目次

プロローブ●水をめぐるウソ・ホント      渡辺卓也
1 給水量が減り料金収入激減、投資ができず老朽化が加速!
2 水道の普及率と投資額の推移
3 管路の老朽化の現状と課題
4 水道基幹管路の耐震適合率
5 水道広域化が進んでいない
6 市町村による水道料金差が大きい
7 水道事業体における職員の高齢化と減少はなぜ
8 水道現場における経験ある職員が必要なワケ
9 民間に委託したことで経費が削減できたのでしょうか?

解説●2018年水道法改正とは         尾林芳匡
1 2018年水道法改正の内容
2 水道法一部改正の問題点
3 いま地方自治体で必要なこと

Ⅰ 水をめぐる広域化と民営化の現場

イントロダクション●各地で具体化する広域化・
民営化の動き      渡辺卓也
1 自己水源放棄・広域化の流れ
2 唐突な提案・結論ありきの姿勢
3 過去の過剰投資には「ほおかむり」
4 コンセッションは「経営基盤強化で経営改善」のはずが……
5 水道だけではない、コンセッションの拡大
6 水道民営化に対する根強い不安、議会や住民による反発
7 今後の闘いの糧として
 
1 香川県●県主導の水道広域化の矛盾    中谷真裕美
1 香川県の水事情と広域化計画
2 自己水源廃止の矛盾
3 市町の自治ないがしろの広域化推進
4 不参加自治体にはペナルティ
5 住民が関与できない水道にさせない

2 宮城県●水道事業へのコンセッション導入の
問題点             内藤隆司
1 宮城県のコンセッション導入構想
2 宮城県の水道事業と課題
3 「企業の利益を損なう」として業者選定過程が「非開示」に
4 みやぎ型管理運営方式の問題点
5 県民の理解を深めるために

3 浜松市●下水道処理場のコンセッション化
問題              落合勝二
1 浜松市の概要
2 浜松市下水道事業と静岡県西遠流域下水道
3 西遠浄化センター、コンセッション化の経緯
4 コンセッション化ここが問題 
――2017年5月議会での反対討論
5 国の目論見への対抗
6 西遠浄化センター・コンセッション事業開始
7 浜松市長は上水道民営化の判断を先送り

4 京都府●簡易水道と上水道の統合 長谷博司・衣川浩司
1 簡易水道事業とは
2 簡易水道事業の現状と統合への経緯
3 福知山市での統合事例
4 簡易水道事業の抱える問題点

5 奈良県●奈良市中山間地域の上下水道の
コンセッション計画       井上昌弘
1 市町村合併後の奈良市の上下水道
2 上下水道コンセッション計画の概要
3 民営化の背景にあるもの
4 住民の声を背景に議会で民営化条例案を否決

6 埼玉県●秩父郡小鹿野町民の水源・
浄水場を守る運動        水村健治
1 秩父郡市の河川と水源
2 水道事業の統合の経過――住民不在で進められた広域化計画
3 広域化準備室の主張するメリットと無理な配水計画
4 小鹿野町であがった住民の批判
5 水源・浄水場を守る住民の運動
6 秩父地域水道事業の統合――秩父広域市町村圏組合の事務に
7 明らかになった広域統合の問題
8 今後の運動

7 大阪市●市民が止めた水道民営化      植本眞司
1 ちょっと待って! 水道の民営化
2 大阪市水道民営化の前哨戦!府営水道・市営水道の統合
3 「二重行政」の解消の野望がとん挫、民営化計画へ
4 広がる共同と民営化ノーの声

8 滋賀県●大津市のガス事業コンセッション  杉浦智子
1 現在まで大津市ガスがどう運営されてきたか
2 今回の民営化の背景
――電力・ガス小売の自由化・市全体の行革
3 「あり方検討委員会」が答申した民営化(コンセッション)の
ポイント
4 議会や市民の運動で明らかになった問題点

Ⅱ 水をめぐる広域化・民営化の論点

1 上水道インフラの更新における広域性と効率性  中島正博
1 「朽ちる水道インフラ」は本当か
2 水道インフラの広域化・民営化をめぐる論点
3 水道事業の広域化と効率化
4 水道事業の民間活用の目的と実際
5 水道インフラの更新計画のために

2 水道の民営化・広域化を考える           尾林芳匡
1 水道とは
2 水道事業は地方公営企業
3 PFI法・コンセッション(公共施設等運営権)と水道
4 水道の民営化・広域化を進めようとする動き
5 公共施設等運営権実施契約書の実際
6 水道と広域化・民間化の問題点
7 世界で進む水ビジネスと再公営化
8 いのちの水を守るために

著者略歴

編著:尾林 芳匡
弁護士
編著:渡辺 卓也
元自治労連公営企業評議会副議長

ISBN:9784880376905
出版社:自治体研究社
判型:A5
ページ数:184ページ
定価:1700円(本体)
発行年月日:2019年02月
発売日:2019年02月05日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:TQS