出版社を探す

18・19歳非行少年は、厳罰化で立ち直れるか

他編著:片山 徒有
他編著:伊藤 由紀夫
他編著:川村 百合

紙版

内容紹介

今国会に少年法の改正案が提出される。改正案には、18・19歳を「特定少年」として、罪を犯した18・19歳を原則検察官送致(逆送)する犯罪の範囲拡大(厳罰化)や起訴されれば実名報道を可能とすることなどが盛り込まれた。少年法は、5度目の改正でますます厳罰化へ向かうことになる。本書は、少年事件事例や少年院出院者の発言などを踏まえて、元家裁裁判官、元家裁調査官、元少年院院長、弁護士らが、法案の問題点を検討する。少年法における非行少年の立直りなど教育的機能を守るにはどうしたらよいかを考える。

目次

はじめに………片山徒有(被害者と司法を考える会代表)

【巻頭座談会】
厳罰化に大きく踏み出した少年法「改正」──18・19歳を「特定少年」とする改正案の問題点と今後の課題………森野俊彦(弁護士・元裁判官)・八田次郎(元小田原少年院長)・伊藤由紀夫(元家庭裁判所調査官)・鄭裕靜(青山学院大学非常勤講師)・川村百合(弁護士)・片山徒有(被害者と司法を考える会代表)

第1部 18・19歳非行少年の現状と少年法改正
少年法はなぜ改正されるのか………新倉 修(弁護士・青山学院大学名誉教授)
日本社会における若者像と「厳罰化」の意味──18・19歳を社会から切り離してはならない………佐々木光明(神戸学院大学教授)
「特定少年」への「犯情」の導入と家裁調査官の調査………伊藤由紀夫(元家庭裁判所調査官)
18・19歳非行少年の矯正と少年法改正………八田次郎(元小田原少年院長)
推知報道禁止の一部解除をどう見るか──メディアは匿名維持を原則に………佐々木 央(共同通信編集委員)

第2部 Q&A 18・19歳非行少年の立直りと少年法………新倉 修(弁護士・青山学院大学名誉教授)
Q1 改正案では、18・19歳の少年は、18歳未満の少年とも20歳以上の成人とも違うとして、「特定少年」と名づけて、刑事処分となる犯罪の範囲を広げましたが、このような改正は本当に必要ですか。
Q2 改正案で18・19歳を「特定少年」として、厳罰化する目的はどこにあるのですか。
Q3 改正案では、保護処分か刑事処分かの選択を「犯情の軽重」で決めるとされていますが、「犯情の軽重」とはどういう意味ですか。
Q4 18・19歳の少年が犯罪をすれば、これからは刑事裁判所で処罰されることが多くなるので、少年院に収容される人も減ることになります。そうなると、現在のようにたくさんの少年院は必要でなくなりませんか。
Q5 改正案は、少年犯罪による被害者の権利保護を増進するという意見もありますが、少年犯罪の被害者にとって本当にプラスですか。
Q6 改正案では、18・19歳の少年が起訴されると、推知報道禁止が解除されます。少年の匿名報道はやめるべきですか。
Q7 現行の少年法と比較して、今回の改正案は、18・19歳の非行少年をどう扱おうとしているのですか。
Q8 18・19歳の少年は、ほかの法律では、どう扱われるのですか。
Q9 18・19歳の少年による犯罪は増え、それは悪質化していますか。
Q10 18・19歳の非行少年は、刑務所でどのような取扱いを受けているのですか。また、刑務所と少年院との違いはどこにあるのですか。
Q11 18・19歳の非行少年は、少年院でどのような取扱いを受けているのですか。また、改正でどのような変化がありますか。
Q12 18・19歳の非行少年は、保護観察でどのような扱いを受けているのですか。
Q13 改正案では、18・19歳の非行少年に対する「新しい処分」としてどのような提案がなされたのですか。
Q14 現行法では、少年は成人になっても資格制限規定を適用されませんが、改正案では、18・19歳の少年に適用されます。それはどのような影響を少年に与えますか。
Q15 少年法は非行少年の立直りのためにいろいろな措置を用意していますが、具体的にはどのような支援がありますか。
Q16 少年法はそもそも何を目的にできたものですか。また、それを生かすにはどうしたらよいですか。

第3部 18・19歳の少年事件事例集 立ち直った元少年たち………監修:伊藤由紀夫(元家庭裁判所調査官)

事例1 虞犯(ぐ犯)事件 補導委託により「新たな人間関係と居場所」ができた18歳女子A子
事例2 強盗事件 少年院で自分を見つめ直した19歳男子G
事例3 特殊詐欺事件 調査・審判の中で自らの加担を自覚した19歳男子F
事例4 現住建造物放火事件 コミュニケーションが不得手な「話せない」19歳女子I子

第4部 座談会/少年院出院者は語る 痛みを知る人こそ活躍できる社会に
竹中ゆきはる・高坂朝人・中村すえこ・野田詠氏・佐々木央

第5部 一言メッセージ集 少年法はもっと生かせる!(各界56名の発言)

コラム1 少年とその保護者の間にたって………森野俊彦(弁護士・元裁判官)
コラム2 「特定少年」の「特例」はエビデンスがない………浜井浩一(龍谷大学法学部教授)
コラム3 古希を迎えた少年法………内山絢子(元目白大学人間学部教授・元科学警察研究所研究官)
コラム4 裁判官の言葉かけ………石井小夜子(弁護士)

【資料篇】少年法改正に反対する声明等
◎資料1/元家庭裁判所調査官有志・少年法の適用年齢引下げに反対する声明書 (2019〔令和元〕年9月3日)
◎資料2/元少年院長等有志・少年法適用年齢引き下げに反対する声明書 (2019〔令和元〕年11月8日)
◎資料3/少年事件を担当した元裁判官有志一同・少年法適用年齢引下げに反対する意見書(2020〔令和2〕年5月26日)
◎資料4/日本司法福祉学会・法制審「諮問第103号に対する答申」についての意見(2020〔令和2〕年12月20日)
◎資料5/刑事法研究者有志・「少年法等の一部を改正する法律案」に反対する刑事法研究者の声明(2021〔令和3〕年3月24日)
◎資料6/被害者と司法を考える会・少年法改正に反対する意見書・要望書・声明
◎資料7/主な少年法適用年齢引下げに反対する声明等の一覧(2018〜2019年)

おわりに………川村百合

著者略歴

他編著:片山 徒有
片山徒有(かたやま・ただあり)被害者と司法を考える会代表、本書編集代表
1997年、当時小学2年生の息子・隼さんを交通事故で亡くす。この時の捜査機関からの理不尽な対応を機に、被害者支援と司法制度改革の必要性を痛感し、2000年に被害者支援団体「あひる一会(あひるのいちえ)」を設立。2007年に「被害者と司法を考える会」を設立。2000頃年より、少年院や刑務所での講演や面接を通じて「被害者の視点」を伝えることを続けている。
他編著:伊藤 由紀夫
伊藤由紀夫(いとう・ゆきお)元家庭裁判所調査官、本書編集委員
1955年生まれ。早稲田大学教育心理専修卒。1980年〜2018年、家庭裁判所調査官として勤務。現在、NPO 非行克服支援センター理事・相談員。少年や若年成人及び家族の立ち直り支援を行う。
他編著:川村 百合
川村百合(かわむら・ゆり)弁護士、本書編集委員
1997年、司法研修所第49期修了。日本弁護士連合会子どもの権利委員会事務局長(2008年度〜2011年度)。東京弁護士会子どもの人権と少年法に関する特別委員会委員長(2014年度)。東京弁護士会副会長(2019年度)。2004年に、日本で初めての子どものための民間シェルター「カリヨン子どもの家」開設に携わり、シェルター運営主体である社会福祉法人カリヨン子どもセンター理事を2017年まで務める。2015年から、10代の女の子たちを支援する一般法人Colaboの理事を務める。主な著作に、『弁護人・付添人のための少年事件実務の手引』(ぎょうせい、2011年)などがある。

ISBN:9784877987794
出版社:現代人文社
判型:A5
ページ数:176ページ
定価:2500円(本体)
発行年月日:2021年05月
発売日:2021年05月15日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:LNAA