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つくられた恐怖の点滴殺人事件

守大助さんは無実だ

編著:阿部 泰雄
編著:山口 正紀

紙版

内容紹介

2001年、北陵クリニック(仙台市)の准看護師の守大助さんが患者5人の点滴に筋弛緩剤を混入して殺害したとして逮捕・起訴された。裁判では、弁護側は「事件や犯罪ではなく、患者の病変などにすぎない」として無罪を主張した。しかし、裁判所は、弁護側の医学・科学鑑定を完全に無視して有罪判決を下した。本書は、えん罪解明の決め手となる難解な鑑定をやさしくかみ砕いて解説し、守さんの無実を浮き彫りにする。

目次

刊行に寄せて……鳥越俊太郎

第1部 捜査・報道の合作えん罪
第1章 幻の連続殺人事件——筋弛緩剤点滴はなかった………阿部泰雄
 1  はじめに
 2  「事件・犯罪」の大報道で始まった
 3  北陵クリニックとは
 4  「事件」の「発覚」の端緒はなにか
 5  北陵クリニックで、内部調査がなかった─「事件」と思っていなかった証し
 6  警察が連続筋弛緩剤事件とした理由
 7  筋弛緩剤の在庫不足の原因は
 8  北陵クリニックの経営事情の影響
 9  起訴5件について、事件・犯罪でないとみる理由
 10 自白の問題
 11 警察の鑑定とはどのようなものか
 12 再審請求における弁護側の課題と新証拠
 13 再審請求の申立てと検察・裁判所の対応
 14 捜査と裁判はなぜ誤ったのか
 15 本件再審事件の特徴と見通し

第2章 「筋弛緩剤点滴殺人事件」報道——冤罪を助長した警察情報の垂れ流し ………山口正紀
 1 はじめに
 2 報道が、読者・視聴者に「犯人」と信じ込ませた!
 3 逮捕で始まった「筋弛緩剤点滴殺人」報道
 4 捜査・公判・判決への疑問を指摘しない裁判報道

第2部 無実を明らかにした再審請求の新証拠——事件性なしを証明
第1章 筋弛緩剤は検出していない——確定判決唯一の証拠・警察鑑定はまちがい………志田保夫
 1 はじめに
 2 筋弛緩剤は検出していない
 3 機器(質量)分析とは何か

第2章 「筋弛緩剤中毒」という診断は誤り——女児の急変原因は「ミトコンドリア病」……… 池田正行
 1 はじめに
 2 誤診の原因について
 3 ミトコンドリア病の診断について
 4 おわりに

第3章 「守自白」は、虚偽——むしろ無実を証明している………浜田寿美男
 1 はじめに
 2 「被告人の法廷供述には信用性がない」とした基準
 3 「被告人の法廷供述が不自然、不合理」とする認定
 4 被告人が自白に追い込まれた理由
 5 おわりに

第3部 守大助さんの無実の訴えと支援の呼びかけ
 私は無実です 公平な裁判を求めて、頑張っています………守大助
 無実の守大助の母として多くのえん罪被害者と支援者とともに頑張ります………守祐子
 守大助さんは、明るくて責任感の強い人です………篠原幸子
 白衣の看護師・守大助さんを塀の外へ取り戻そう………草野照子

あとがき 執筆された方々に感謝しつつ守さんに贈ります………渡会興雄

表1 裁判経過一覧
表2 筋弛緩剤投与による「急変」疑い事例とされた20件の一覧

著者略歴

編著:阿部 泰雄
阿部泰雄(あべ・やすお)
1947年生まれ。弁護士、仙台弁護士会所属。ひき逃げ冤罪事件である「遠藤事件」で、1989年に最高裁にて画期的な逆転無罪判決をえる。
著作:『僕はやってない!─仙台筋弛緩剤点滴混入事件 守大助勾留日記』(明石書店、2001年)、「北陵クリニック事件(仙台地決平26・3・25)事前通知のない抜き打ち棄却」(季刊刑事弁護79号)ほか。

編著:山口 正紀
山口正紀(やまぐち・まさのり)
1949年生まれ。ジャーナリスト、人権と報道・連絡会世話人。
1973年~2003年、読売新聞記者。1985年から報道による人権侵害をなくすための市民運動、冤罪・報道被害者の支援活動に参加。
著作:『ニュースの虚構 メディアの真実』(現代人文社、1999年)、『メディアが市民の敵になる』(同、2004年)、『壊憲翼賛報道』(同、2008年)ほか。1997年から『週刊金曜日』人権とメディア欄に隔週連載中。

ISBN:9784877986568
出版社:現代人文社
判型:A5
ページ数:160ページ
定価:1700円(本体)
発行年月日:2016年12月
発売日:2016年12月28日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:LNF