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自分で考え判断する教育を求めて

「日の丸・君が代」をめぐる私の現場闘争史

著:根津公子

紙版

内容紹介

〈当時、教員たちの多くは、「日の丸・君が代」の強制に反対の考えをもっていました。しかし、2004年からは、反対であってもほとんどの教員は起立・伴奏する、あるいは欠席するという選択をしました。それだけではなく、それまでは朝学活等で政治的問題を「今日のニュース」として生徒に話す教員がかなりいましたが、それさえも自制するようになっていきました。一方、都教委は職員会議での挙手・採決禁止まで各学校に通知したものですから、教員たちの討論・採決によって学校をつくっていくことができなくなりました。2000年には校長による教員の業績評価が始まり、2006年からその評価で給料に差が出る仕組みになりました。例えば、いじめ自死が起きた場合、学校側は、「いじめに気づかなかった」と言いますが、気づかないはずがありません。自分のクラスでいじめが起きたら、その教員の業績評価は下位にされる。さらには、「指導力不足等教員」にされ、2年の研修を経た後、免職にされるかもしれないという恐怖感を教員はもち、同僚に相談もできないのだと思います。これは、上意下達の体制下で管理された教員たちに、子どもたちを守ることはできない、その一例です。〉(本文より)

2003年、東京都教育委員会は「10・23通達」を発出。卒業式・入学式などでの国旗掲揚・国歌斉唱の実施指針や、通達に基づく校長の職務命令に従わない教職員の処分を可能にしました。
しかし、「日の丸・君が代」の強制を拒否する教員を処分し、上意下達を徹底したことで、東京の教育は良くなったでしょうか?
東京都の民主的な教育はどのように壊されていったのか。11回の懲戒処分を受けた中学家庭科教員の不屈の記録。

目次

はじめに
1.私の教育観と教育実践 
2.「君が代」不起立以前に受けた処分
 Ⅰ 1994年3月 、八王子市立石川中学校での卒業式の朝、校長が揚げた「日の丸」を降ろして減給1か月処分
 Ⅱ 1995年、学級だよりで文書訓告に
 Ⅲ 1999年2月、自作のプリント教材で文書訓告に
 Ⅳ 石川中学校での「日の丸・君が代」の変遷
 Ⅴ 「日の丸・君が代」の特設授業
 Ⅵ 多摩市立多摩中学校での「従軍慰安婦」の授業に端を発した1年にわたる攻撃、そして減給3か月処分
3.私が受けた6回の「君が代」不起立処分
4.戦後の教育行政
5.「日の丸・君が代」強制のねらいは
6.なぜ重い?「君が代」不起立処分
7.処分によって私は
 Ⅰ 2003年度 調布市立調布中学校で
 Ⅱ 2004・05年度 立川市立立川第二中学校で
 Ⅲ 2006年度 町田市立鶴川第二中学校で
 Ⅳ 2007年度 都立南大沢学園養護学校で
 Ⅴ 2008年度 都立あきる野学園で
8.「君が代」不起立裁判は
おわりに
  *
■付1 教職経歴と処分歴
■付2 各裁判の判決の経緯(表)

著者略歴

著:根津公子
1950年神奈川県生まれ。1971年4月から2011年3月まで、東京都内の公立学校・都立学校教員。
生徒たちが自分で考え判断する力を身につけてほしいと、授業づくり(主には中学校家庭科)に取り組んできた。しかし、東京都教育委員会(都教委)による現役中の処分は11回、市教育委員会による訓告が2回、そのうち、「君が代・不起立」では、都教委による停職6か月処分・3回を受ける。
著書:『希望は生徒』(2007年)、『増補新版 希望は生徒』(2013年・ともに影書房)
共著:『学校に思想・良心の自由を――君が代不起立、運動・歴史・思想』(2016年・影書房)

ISBN:9784877144982
出版社:影書房
判型:4-6
ページ数:336ページ
定価:2000円(本体)
発行年月日:2023年10月
発売日:2023年10月30日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JN