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内村剛介著作集(全7巻)

内村剛介著作集 4

ロシア・インテリゲンチャとは何か

著:内村 剛介
編:陶山 幾朗

紙版

内容紹介

ロシア・インテリゲンチャとは何か。またそれは如何なる意味で問題的問題となるのか。[インテリゲンチャ/ナロード]というロシア的メビウスの環を、著者独特のアプローチから読み解く。
●〈インテリゲンチャ〉というテーマの普遍性
近代世界に遅れて登場したロシアがその内的必然から提起した問題として「ロシア・インテリゲンチャとは何か」というテーマがある。ロシア特有のこの課題は日本にも輸入されて日本型知識人のテーマとして受容され、「知識人とはいかなる人間か、またいかにあるべきか」という問題として血肉化されていった。著者はその系譜と問題性を剔抉するべく、先ずロシアの生んだ巨人ドストエフスキーを俎上に上げ、その真骨頂を探るとともに、日本知識人に祀り上げられてきた「ヤマト・ドストエフスキー」という偶像化を排し、独自のドストエフスキー像を呈示する。
●人間にとって革命とは何か——コングロメラ・デ・リュス
ロシア・インテリゲンチャ論とは同時にロシア・ナロード論でもある。「社会主義」に向かう社会的波濤と直面することとなった革命期のロシア・インテリゲンチャたちは、この巨大な波濤とどのように対応・対峙したか。「コングロメラ・デ・リュス」論において、詩人エセーニン、ブロークたちの苦悩を辿りながら、ロシアにおける「神」と「社会主義」の諸相を追尋し、「人間にとって革命とは何か」を問うに至る。

目次

1ドストエフスキー
 まえがき
 1 ドストエフスキーの思想
  1 ドストエフスキーとロシア近代
  2 ドストエフスキーはどのような思想家か
 2 ドストエフスキーの生涯
  はじめに
  1 ジャーナリズム以前
  2 女をカネを名声を、雑誌経営
  3 くらしの破綻—根源的テーマへ—『罪と罰』へ、再婚
  4 異境の四年、大作『白痴』、『悪霊』
  5 帰国、個人雑誌『作家の日記』を
  6 『カラマーゾフの兄弟』、永訣
 3 ドストエフスキーの著作
  1 肉声抄
   解説
   一 さまざまなテーマ
   二 文学と芸術について
   三 宗教について
   四 ロシアとロシア人について
  2 作品抄
   解説
   一 『罪と罰』/〈酒場のマルメラードフ〉/〈やせ馬の夢〉
   二 『白痴』 /〈ムイシキンのてんかん〉
   三 『悪霊』 /〈シャートフとスタヴローギン〉
       四 『カラマーゾフの兄弟』/第五部 第四章 反抗 / 第五部 五章 大審問官
   〈付〉聖母の地獄めぐり
 4 思想の衝撃
  1 ロシア・ソビエトにおけるドストエフスキー
  2 西欧におけるドストエフスキー
   一 フランスにおけるドストエフスキー
   二 イギリスにおけるドストエフスキー
   三 ドイツにおけるドストエフスキー
  3 日本におけるドストエフスキー
2第二の奇遇 —シクロフスキー『ドストエフスキー論』
構造のつまずき—『罪と罰』日本語版について
わがドストエフスキー・テーゼ
ドストエフスキーとイエス
ドストエフスキーの「タワリシチ」について
途上のドストエフスキー学—桶谷秀昭『ドストエフスキイ』
「ツミとバツ」は日本製—ドストエフスキー翻訳にみる文化交錯
人さまざまな「狂いざま」
『創作ノート』をめぐって
3コングロメラ・デ・リュス
 1 ロシアとのかかわり
 2 エフトゥシェンコのエセーニン
 3 エセーニンについて
 4 ブロークとエセーニン
 5 「フォークロア」、「ナロード」
 6 現代ロシアの「無用人」
 7 ロシアの「神」とロシア社会主義
 8 「ロシア・インテリゲンチャ」とは何か—その1
 9 「ロシア・インテリゲンチャ」とは何か—その2
 10 「ロシア・インテリゲンチャ」とは何か—その3
 11 人間にとって革命とは何か
 あとがき
4ラジーシチェフの『旅』
宿命の窓—プーシキン『青銅の騎士』
ゴーゴリに即し国境とは何か
時空を超えた藤—ツルゲーネフ『父と子』
カテキズムへの回帰
トルストイとドストエフスキー
何故チェホフか
チェホフには日記がない
ロシア・インテリゲンチャの内在批判—『道標』をめぐって
やわな進歩、硬い反動
文明はインテリゲンチャを排泄する
「報い」とロシア知識人—リハチョフ・インタビューに思う

解説=内村剛介を読む 「世界史のなかの時間」と収容所 川 崎 浹

解題—陶山幾朗

表紙題字 麻田平蔵(哈爾濱学院24期)
カバーデザイン 飯島忠義

著者略歴

著:内村 剛介
評論家、ロシア文学者。一九二〇年、栃木県生まれ(本名、内藤操)。一九三四年、渡満。一九四三年、満洲国立大学哈爾濱学院を卒業。同年、関東軍に徴用され、敗戦とともにソ連に抑留される。以後、十一年間をソ連内の監獄・ラーゲリで過ごし、一九五六年末、最後の帰還船で帰国する。帰国後、商社に勤務する傍ら文筆活動を精力的に展開し、わが国の論壇、ロシア文学界に大きな影響を与える。著書に『生き急ぐ—スターリン獄の日本人』、『呪縛の構造』、『わが思念を去らぬもの』、『ソルジェニツィン・ノート』、『流亡と自存』、『信の飢餓』、『失語と断念』、『ロシア無頼』、『わが身を吹き抜けたロシア革命』など多数。また訳書にトロツキー『文学と革命』、『エセーニン詩集』などがある。一九七三年から七八年まで北海道大学教授、一九七八年から九〇年まで上智大学教授などを勤める。
二〇〇九年一月死去(享年八十八)。
編:陶山 幾朗
一九四〇年、愛知県生まれ。一九六五年、早稲田大学第一文学部を卒業。著書に『シベリアの思想家——内村剛介とソルジェニーツィン』、共著に『越境する視線—とらえ直すアジア・太平洋』、『内村剛介ロングインタビュー 生き急ぎ、感じせく—私の二十世紀』。現在、雑誌『VAV(ばぶ)』主宰。

ISBN:9784874300442
出版社:恵雅堂出版
判型:A5
ページ数:613ページ
定価:5000円(本体)
発行年月日:2010年03月
発売日:2010年03月30日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:DNT