発達障害からの挑戦状
著:崎濱 盛三
内容紹介
発達障害にかかわる人すべてに読んでほしい、最新にして最良の解説書。
2006年、奈良県の医師宅放火事件。
「少年を殺人者のままにしておくわけにはいかなかった」
自らの保身を省みず、世論と権力に立ち向かった
児童精神科医が、今こそ伝えたいこと。
目次
特別寄稿:「鑑定医を秘密漏示罪とした最高裁
――現場と司法との絶望的な乖離」十一元三(京都大学教授)
第一章 児童精神科医が診る少年たち
心の実態を解明する/心の病の本当の姿/悪者探しの落とし穴/便秘と下痢を繰り返すA男/どんな症状に苦しんでいるのか/自分のなかにふたつの人格を持つB子/児童精神科医の役割とは
第二章 障害の根本にあるもの
「障害」となるものは何か/自閉性障害とアスペルガー障害の「違い」/こだわりの正体を見きわめる/「joint attention」から考えてみる/特定不能というカテゴリー/「みんなと考え方が違うからしんどい」/強迫的傾向をひも解く
第三章 うつ病? それともA D/ H D ?
診断を難しくするもの/「うつ状態」と「うつ病」を見分ける/この多動はAD/HDが原因?/発達や環境が与える影響/診断はスタート地点である
第四章 生きにくさの問題について
「人生のつまづき」と虐待/児童虐待の定義について/子どもの側に広汎性発達障害がある場合/親の側に広汎性発達障害がある場合/「治療できる虐待」のモデルとして
第五章 「しんどさ」の正体について
広汎性発達障害における自殺の問題/生きることにともなう苦痛について/自分をコントロールできない苦しみ/思考を変えることができない苦しみ/思いが伝わらないという苦しみ/「生から死への乗り越え」を考える
第六章 事件はなぜ起こったのか
少年事件と「心の闇」/非行事例の調査から見えるもの/何が「動機」になるのか/「反省」をどうとらえるか/「殺意」をどう認定するか/事件の発生を抑止できる可能性も/子どもの権利を守るということ
第七章 司法に強く望むこと
健全な社会常識って?/「誰でもよかった」のひとり歩き/司法と精神医学の天秤/専門家の判断を無視する素人/ある判例から浮かび上がるもの/責任能力における「責任」とは/「善悪」を判断する能力について/「法律的に悪い」と「モラル的に悪い」/「衝動」とどう向き合っているか
第八章 診療の現場で考えてきたこと
「個性」か「障害」か/広汎性発達障害を持つ子を「育てる」/「診る」とはどういうことか/「働く」ために必要な支援とは何か/広汎性発達障害を「裁く」人たちへ/「社会」がもっとできること