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志縁のおんな

もろさわようことわたしたち

編著:河原 千春
著:もろさわ ようこ

紙版

内容紹介

あなたを真に解き放つもの――それは血縁よりも地縁よりも〈志縁〉<しえん>!
〈志縁〉の提唱者・実践者であり、『おんなの歴史』や『信濃のおんな』で時代を拓き社会を瞠目させた女性史研究家・もろさわようこの1世紀近い歩みと唯一無二の言葉をとことん掘り下げ、その思想の根源性と今日性に迫った一冊。
「闇の深さは光のありかも教えてくれる」
「九十数年生きて、やっとやっと自分がなりたかった境地にたどり着いた」
「(女性史研究家という)よそ様が付けてくださった通行手形で浮世を渡ってきましたけれど、肩書のない裸の人間として通用する社会構造でないとおかしいなと思っています。私は人のやった後をたどることには情熱が湧かなくて、いつもいつも未開拓な場所で生きてきました。顧みると、未開拓の『無』の中に何かを見て、それを伝えていくのが私の生き方だったのかなと思っています」(本書中の「もろさわようこ」の言葉より)

目次

  第一章 志縁へと
1 「嫁に行かず勉強したい女は非国民」――敗戦で「見て、考える」覚悟の芽生え
2 「私たちは一票しか闘う場所がない」――市川房枝の遺志を継いで
3 「憲法ができて七十年余り、絶望的な状況」――不戦の誓い、理念を生きる 
4 「男女差別が日常の生活文化に」――百年前から変わらない問題
5 「基本的人権、生き得ていない自分に気付いた」―― 部落問題、人間解放の原点
6 「歴史を拓くはじめの家」 宮古島の祖神祭との出合いから ――愛と祈りに未来への希望
7 「志縁は自由の中に」――「歴史を拓くはじめの家」の営みで実感 
8 「生きている限りは自分を新しく」――受難を祝福に変えていきましょう
 *「もろさわようこ」とわたしたち ①

  第二章 志縁に生きて
1 佐久の拠点「志縁の苑」――集う人を照らす「灯台」に
2 「今を生きるあなたが後世の女性史」――平和願う舞に生きざま
3 紡績工場の学院で学んだ教え子――「社会に貢献を」の言葉胸に
4 部落差別に声を上げる女性たち――「あなたのままで」と励まされ
5 集い「何か」を見いだした女性たちの記録集――営みや思い、未来に託す
 *「もろさわようこ」とわたしたち ②

  第三章 志縁を拓く
1 もろさわさんは「私たちの歴史家」――どう生きれば、足元照らす 斎藤 真理子さん(翻訳家)
2 『おんな・部落・沖縄』の問題提起――女性史・ジェンダー史研究の入り口 大串 潤児さん(信州大学人文学部教授)
3 スケールの大きい思想――自明の理論見直す契機 平井 和子さん(近現代日本女性史・ジェンダー史研究者)
4 最も痛み深く生きる人々の場から見つめる――常に問われ続けて 斎藤 洋一さん(信州農村開発史研究所長)
5 地域女性史を継承すべき歴史に――ジェンダー視点で再評価を 柳原 恵さん(立命館大学准教授)
6 女性の視点で沖縄の歴史を捉え直す――後世のために、記録し残す 宮城 晴美さん(沖縄女性史家) 
7 被差別部落の女性史を明らかにする――分断と対立進む今に必要 熊本 理抄さん(近畿大学人権問題研究所教授) 
 *「もろさわようこ」とわたしたち③

  第四章 おんなたちへ――もろさわようこが紡いだことば
『信濃のおんな』より 軍国の女たち/敗戦と女たち/きょうの女たち
『おんなの戦後史』より 戦争の共犯者/性の犠牲/女子学生亡国論/ウーマン・リブ
部落の解放と女の解放
女性史研究の中から
女もまた天皇制をつくった
「歴史を拓くはじめの家」はどうしてできたか
「歴史を拓くはじめの家」から「志縁の苑」へ
 *「もろさわようこ」とわたしたち④

  第五章 沖縄から見た〝新型コロナ〟 ―― もろさわようこが語る「いま」
「コロナは怖いけれども、戦争よりはましです」
1 むき出しの米国支配、容認するヤマト――問題意識持ち、連帯を
2 格差や環境、あらわになった矛盾―― 災いを福に転じる契機に
3 戦中と重なる「自粛警察」―― 主体性の喪失、主権者意識の確立を

 謝辞に代えて――拝復 もろさわようこより
 もろさわようこ関連年表

著者略歴

編著:河原 千春
1982年横浜市生まれ。2007年信濃毎日新聞社入社。飯田支社、長野本社報道部を経て、文化部に異動した13年「くらし」面の取材でもろさわようこさんと出会う。
共著に『認知症と長寿社会――笑顔のままで』(新聞協会賞、JCJ賞ほか受賞)。
著:もろさわ ようこ
1925(大正14)年、長野県北佐久郡本牧村(現佐久市)生まれ。65年、初の著書『おんなの歴史』を出版。66~68年に故郷の女性史を「信濃のおんな」として信濃毎日新聞に連載し、同書で毎日出版文化賞を受賞。戦後いち早く天皇制に異議を唱えて女性の戦争責任を問うと同時に、権力におもねらず市井に生きる生活者の視点から女性と社会の関わりを考察し、78~79年に底辺や辺境、極限状況で働き生きる女性たちの日常の記録を中心に近代を顧みた『ドキュメント女の百年』全6巻をまとめた。著書多数。
 地縁、血縁に縛られず、志や生き方への共感で結ばれる「志縁」で人間は自由になれると考え、郷里の佐久市に「歴史を拓くはじめの家」を82年に開設。無組織・無会費・無規則、関わりたい人がその関わり方を自分自身で考え、主体的に行ない、営むことを原則とする。94年「歴史を拓くはじめの家 うちなぁ」を沖縄に、98年「歴史を拓くよみがえりの家」を高知市に開設。

ISBN:9784871960830
出版社:一葉社
判型:4-6
ページ数:352ページ
定価:3000円(本体)
発行年月日:2021年12月
発売日:2021年12月02日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:DNB