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がん細胞から学んだ生き方 「ほっとけ 気にするな」のがん哲学

著:樋野 興夫

紙版

内容紹介

がん細胞で起こることは、人間社会でも起こる

病理医として顕微鏡でがん細胞を覗いてきた筆者が、ミクロの世界の生命現象と、人間社会というマクロの世界を考える新しい領域として「がん哲学」を提唱、医療と患者の隙間を埋めるべく「がん哲学外来」を開設した。「がん哲学外来」では、対話による心の交流がなされ、「言葉の処方箋」が多くの患者に希望を与えている。

目次

はじめに
第一章 医療者としての原点

人生を動かす出会い/背中に温かい視線を感じて/因幡の白兎が教えるもの/故郷をメディカルヴィレッジに/畳一枚ほどの墓/首尾一貫する大切さ/新渡戸稲造の『桃太郎』/人生は開いた扇/ノーベル賞受賞者数のノルマ/タブーになった尊敬する人物/国際人と肝臓の特徴/真の国際人と「温故創新」/そういう知識の程度、そういう教養の程度/行き詰まる日本と世界の打開策/大学の外に学びの場を/対話とカウンセリングの違い

第二章 病理医からみた臨床医

病理がしっかりしている病院は/病理医は三〇秒で診断する/病理解剖をしながら/病理医は「人生は虚しい」と考える/あなたはどこにいるのか/曖昧なことは曖昧に答える/プロの為さざること/日本は肝臓を目指す/脇を甘くする懐の深さ/吉田富三 生誕一〇〇周年記念で学んだこと

第三章 がん細胞が語る人間社会

日本は化学発がん研究の創始国/がん化するメカニズム/がんには個性がある/がん細胞と人間社会の類似性/がんは身の内/生きている以上、がんは避けられない/がん細胞の動きは尺取り虫/がん細胞はギブ・アンド・テイクの実践者/進歩するがんの治療法/天寿がんの時代/がん細胞同士はバランスを保つ/楕円形の生き方/アダムとイブが伝えるものは/人間は一二〇歳を超えられない

第四章 「がん哲学」での「言葉の処方箋」

アスベスト・中皮腫外来に関わる/二〇〇八年、「がん哲学外来」がスタートする/「がん哲学」という名称/「がん哲学外来」を開設してわかったこと/人生から期待されている/リンゴの木を植える/「言葉の処方箋」とは/「言葉の処方箋」の例/「言葉の処方箋」はがん治療に有効か/「ほっとけ 気にするな」/死ぬという大事な仕事/がん診療は楕円形で/暇げな風貌と沈黙/具体的な対話の例/病気であっても病人ではない/この世を去るとしても、花に水を/空っぽの器に新しい水を/「偉大なるお節介」を焼く/全国に広がるメディカルカフェ/さまざまなメディカルカフェ/目標は全国に七〇〇〇ヵ所

第五章 「クオリティ・オブ・デス」を考える

「クオリティ・オブ・デス」の視点/後悔しない最期を迎えるために/家族との絆を深くする「クオリティ・オブ・デス」/「クオリティ・オブ・デス」との出会い/自分はこう生き切るという意志/どういうプレゼントを残すか/家族にしこりを残したまま/がん患者のいろいろな心配ごと/死んだら天国で何をするか、夢をもつ/人との比較は無意味/延命治療とどう向き合うか/人生の目的とは何か/最後の五年間がいちばん大切/品性を完成するために長所を伸ばす/対話を通じて良い品性にする/人生から期待される存在に/マイナス×マイナス=プラス/自分だけではないことに気がつく

第六章 「がん教育」はなぜ必要か?

「がん教育」にいたるまでの法整備/「がん教育」の基本的な考え方/学校の先生方と交流する/「がん教育」と「がん哲学」の調和/がんの家族と向かい合う心構え/「がん教育」は、予防よりも心構え/小学生にも大学生と同じスライド/教育は忘れた後に残る/がんを家族で語る/先生の言葉に心がこもっていれば/子どもたちの質問の例/親が前を向いている姿に、子どもは

おわりに

著者略歴

著:樋野 興夫
医学博士。順天堂大学名誉教授。新渡戸稲造記念センター長。順天堂大学医学部客員教授。一般社団法人がん哲学外来理事長。恵泉女学園理事長。東京女子大学理事。
1954年島根県生まれ。癌研究会癌研究所、米国アインシュタイン医科大学肝臓研究センター、米国フォックスチェイスがんセンター、順天堂大学などを経て現職。2008年に「がん哲学外来」を開設、がん患者と家族を対話を通じて支援する活動を続けている。
2002年癌研究会学術賞、2003年高松宮妃癌研究基金学術賞、2004年新渡戸・南原賞、2018年朝日がん大賞、長與又郎賞。

ISBN:9784867190302
出版社:へるす出版
判型:4-6
ページ数:180ページ
定価:1800円(本体)
発行年月日:2021年11月
発売日:2021年12月06日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:MB