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海に油が流れると・・・

著:佐々木 邦昭

紙版

内容紹介

私は海上災害防止センターに昭和59年から21年間勤務し、海の油濁対応に数多く取り組んできた。平成17年に現役を引退した後も今日まで「海と渚環境美化・油濁対策機構」の専門家として、又はNPO法人「川の油濁防止技術研究会」の要員として要請のあった時、海と川の油濁現場に赴き漁業者等を支援する立場で活動してきた。
多くの場合現場は何時も混乱状態にあり、その中に入り対応を支援してきたと思っている。海洋の油濁事故対策は世界で既に半世紀の歴史があり、数多の類似事例を経験しているが、その割には今なお日本では専門家も記録書も少なく体制、法律、人材育成、資機材に改善の余地を多く残したままになっている。本書ではそのような視点から今一度「海に油が流出しいたらどの様に対処するのか」について包括的に検証してみたい。(はしがきより)



タンカーや一般船舶の油流出事故は、残念なことに、世界の海のあちこちで起きています。
対処方法も進歩はしていますが、まだまだ不充分なようです。
著者はお役所で、油流出事故への対応に当たるお仕事をされていました。
油が流れ着いた現場の様子を、詳しく伝えてくれています。
大変なご苦労をされたのです。
資料3,4の、著者の体験談は、貴重な記録です。
流出油との「戦」を、豊富な写真によって、眼前に見ることができます。(楠木しげお)

目次

◆もくじ◆
はじめに
第一編 総論
第1章 海の流出油事故と対策の経緯
1.昭和30年以前
2.昭和30年以降
第2章 法律
1.海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律
2.船舶油濁等損害賠償保障法
3.船舶の所有者等の責任の制限に関する法律
4.水質汚濁防止法
第3章 流出油事故の原因
1.海難(衝突、座礁、船体折損、火災爆発等)
2.陸上タンク崩壊
3.係留施設
4.不法投棄
5.爆噴 海洋油田リグ
6.戦争
第4章 流出油による被害と防除の目的
1.直接的な被害
2.船舶油濁等損害とは
3.流出油の防除目的
第5章 初期対応
1.担当者の責務
2.情報活動
3.対応の流れ
第6章 油の種類、性状、状態変化
1.法規が定める油
2.油の状態
第7章 科学的支援・漂流予測
第8章 流出油対応
1.洋上の油について
2.漂着油の対応 砂浜、磯、港内
3.作業の安全確保
4.回収油の最終処理
第9章 記録の作成

第二編 防除資機材とその使用方法
第1章 オイルフェンス(以下OFと呼ぶ)
1.一般的事項
2.法令上の位置付け
3.OFの構成
4.OFの性能
5.OFの種類
6.展張の手順
7.形状の作成
8.OFの固定
9.OFの限界
10.OFの張力
11.U字曳航について
12.OFの使用、保守管理上の注意(メーカーの説明書等から)
13.OF大型と小型の比較
14.欧米のOF
第2章 機械的回収
1.洋上回収
2.漂着油の回収
第3章 油吸着材
1.目的
2.法律上の位置づけ
3.種類
4.限界
5.吸油性能など(法定の試験項目)
6.油吸着材の性質と使用
7.実際の使用例
第4章 薬剤(油処理剤、油ゲル化剤)
1.薬剤について海防法の規定 薬剤とは・・・
2.粉末ゲル化剤
3.油処理剤

第三編 対応機関
第1章 原因者
第2章 海上災害防止センター(MDPC)
第3章 公益財団法人 海と渚環境美化・油濁対策機構
第4章 公的機関

第四編 国際協力
1.北西太平洋地域回行動計画(NOWPAP)
2.アセアン海域における大規模な油流出事故への準備および対応に関する国際協力計画(OSPAR計画)

あとがき

資料編
資料1.世界の主要な油濁事故一覧
資料2.日本における大規模・特異な油濁事故一覧表
資料3.私の油濁見聞記「タンカー泰光丸」
資料4.私の油濁見聞記「ナホトカ号」
参考文献・注釈

著者略歴

著:佐々木 邦昭
著者/佐々木邦明
経歴 札幌市出身、昭和44年海上保安大学校卒業、海上保安庁、海上災害防止センターで勤務し、海上災害防止センターではタンカー等による海洋油濁対応に取り組んでいた。平成18年引退の後、漁場油濁基金と川のNPOの専門家として要請があった時、流出油対応と関係する訓練の支援、講習等を行っている。担当した油濁案件としては、貨物船マリタイムガーデニア(平成2年京都府伊根町)、ペルシャ湾原油流出(平成3年調査団と緊急援助隊員)、タンカー泰光丸(平成5年福島県小名浜)、タンカーナホトカ(平成9年福井、石川県)等50数件があり、これらの一部は「私の油濁見聞記」として季刊誌「海上防災」に寄せられている。

ISBN:9784866181110
出版社:銀の鈴社
判型:A5
ページ数:246ページ
定価:3000円(本体)
発行年月日:2021年04月
発売日:2021年04月29日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:TQ