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「社会」を扱う新たなモード

「障害の社会モデル」の使い方

著:飯野由里子
著:星加良司
著:西倉実季

紙版

内容紹介

この「社会」は偏っている!!

時に小さく時に大きく「社会」の範囲を見積ることで「偏り」を隠微に維持しようとする権力装置。
矮小化された「障害の社会モデル」理解をアップデートすることによって、
「マジョリティ性の壁」を見定め突き崩すための思考の在り方=新たなモードを提示する。

目次

はじめに  飯野由里子

序章 「社会」の語り口を再考する  星加良司
1 「社会モデル」のいびつな普及
2 「社会/個人」をめぐる認識の政治
3 本書の構成と射程

第1部 「社会モデル」でみる現在
第1章 当事者研究と「社会モデル」の近くて遠い関係  西倉実季
1 当事者研究の展開
2 熊谷と綾屋の「社会モデル」理解
(1)熊谷による当事者研究に関する議論 
(2)綾屋によるソーシャル・マジョリティ研究に関する議論
3 身体と社会の無造作な二分法
4 ソーシャル・マジョリティ研究における危うい線引き
(1)個人/社会の線引き
(2)可変/不可変の線引き
(3)帰責/免責の線引き
(4)小括
5 「社会」の過小性、「個人」の過大性

第2章 「心のバリアフリー」は毒か薬か  飯野由里子・星加良司
1 「心のバリアフリー」のリバイバル
2 「心のバリアフリー」の系譜
3 心のバリアフリーの新旧パラダイム
4 新パラダイムに潜む問題(1)――普遍化のレトリックと「不均衡」の不可視化
5 新パラダイムに潜む問題(2)――「能力発揮」という理念と「不均衡」の再生産
6 共生社会の両義性

第3章 性の権利は障害者の味方か?   飯野由里子
1 性の権利と「社会モデル」
2 性の権利とは何か?
3 「ホットでセクシーであれる権利」
4 性の権利の連動性
(1)性の二重基準をめぐって
(2)性被害・性暴力をめぐって
5 性的自由の前提条件

第2部 合理的配慮と社会モデル
第4章 合理的配慮は「社会モデル」を保証するか  星加良司
1 忍び寄る「個人モデル」
2 合理的配慮の二つの解釈
3 合理的配慮の意図せざる効果Ⅰ――医学的基準の焦点化
4 合理的配慮の意図せざる効果Ⅱ――機能アセスメントの強化
5 合理的配慮の意図せざる効果Ⅲ――専門性による囲い込み
6 「社会モデル」を取り戻す

第5章 社会的な問題としての「言えなさ」  飯野由里子
1 「ニーズが言える社会」へのとまどい
2 「ニーズを言えるようにする」アプローチとその問題
(1)「個人に働きかける」アプローチ
(2)「環境を変えていく」アプローチ
3 障害の開示とスティグマの問題
4 なぜインペアメントが「ある」ことを疑うのか?
5 なぜ合理的配慮が提供されないのか?
(1)障害による困難を不変なものとする誤解
(2)困難に対する不適切な理解
(3)いまある状態の正当化
6 何のための「社会モデル」か?

第6章 変えられる「社会」・変えたくない「社会」  西倉実季
1 狭く解釈される合理的配慮
2 紛争化した事例
(1)事例1:バニラエア問題
(2)事例2:代筆投票問題
3 社会モデル理解の問題点
(1)αの問題について
(2)βの問題について
4 マジョリティ問題としての合理的配慮
(1)ルールは絶対的・中立的であるという人に向けて
(2)自分が負担を負うのは納得できないという人に向けて
(3)ルールが偏ったままで構わないという人に向けて

終章 「社会モデル」を使いこなす  飯野由里子
1 本書の立場――「社会モデル」の要諦
2 「社会」の過小性が生み出す問題
(1)「発生メカニズムの社会性」の軽視に伴う問題
(2)「発生メカニズムの社会性」を狭小化に伴う問題
3 「社会的なもの」の範囲をめぐる政治
4 マジョリティ性の壁を崩す

おわりに  西倉実季

著者略歴

著:飯野由里子
飯野由里子(いいの・ゆりこ)
1973年生まれ。
城西国際大学大学院人文科学研究科博士後期課程修了。博士(比較文化)。
現在、東京大学大学院教育学研究科附属バリアフリー教育開発研究センター教員。
著書・論文に、
『合理的配慮――対話を開く 対話が拓く』(共著、有斐閣、2016年)、「『思いやり』を超えて――合理的配慮に関わるコンプライアンスの新たな理解」(『現代思想』No. 47-13: 153-162、2019年)、「『困らせている』社会を変える――障害者差別解消法が求めているもの」(『世界』900: 188-195、2017年)、『レズビアンである〈わたしたち〉のストーリー』(生活書院、2008年)など。
著:星加良司
星加良司(ほしか・りょうじ)               
1975年生まれ。
東京大学大学院人文社会系研究科博士後期課程修了。博士(社会学)。
現在、東京大学大学院教育学研究科附属バリアフリー教育開発研究センター教員。                   
著書・論文に、
『合理的配慮――対話を開く 対話が拓く』(共著、有斐閣、2016年)、「バリアフリー教育を授業に取り入れる」『カリキュラム・イノベーション――新しい学びの創造へ向けて』(東京大学出版会: 249-262、2015年)、『障害とは何か――ディスアビリティの社会理論に向けて』(生活書院、2007年)など。
著:西倉実季
西倉実季(にしくら・みき)
1976年生まれ。
お茶の水女子大学大学院人間文化研究科博士後期課程修了。博士(社会科学)。
現在、東京理科大学教養教育研究院教員。
著書・論文に、
「『統合』『異化』の再検討――容貌障害の経験をもとに」(『障害学研究』13: 56-72、2018年)、『障害を問い直す』(共著、東洋経済新報社、2011年)、『顔にあざのある女性たち――「問題経験の語り」の社会学』(生活書院、2009年)など。 

ISBN:9784865001426
出版社:生活書院
判型:4-6
ページ数:264ページ
定価:2300円(本体)
発行年月日:2022年06月
発売日:2022年07月06日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JKS