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ろう者学とソーシャルワーク教育

著:高山亨太

紙版

内容紹介

なぜ、人々の福利や社会正義を追求するソーシャルワーク実践が、ろう・難聴者の抑圧に加担しているのか。

「ろう者の当たり前」こそが最も重要だという着眼点にたち、ろう者や難聴者を無力化してきたソーシャルワーク実践に省察的批判を加え、ろう者学の知見やろう者の視点を取り入れた「ろう文化ソーシャルワーク」を定義づけ実践につなげようとする意欲作。

目次

まえがき

序論 研究の背景と目的
1 研究の背景
1-1 ろう者を対象にしたソーシャルワーク実践の多様化
1-2 ろう者を取り巻く背景の多様化
2 理論的視座
2-1 ペイン理論
2-2 文化言語モデル
3 研究の目的・方法・意義
4 論文構成
5 用語の定義

第1章 ろう者を取り巻く言説に関する現状と課題
1 ろう者を取り巻く言説の抽出の意義
2 クライエントとしてのろう者の理解
2-1 ろう者の多様性
2-2 手話とコミュニケーション手段の多様性
2-3 ろうアイデンティティの多様性
3 ろう文化の特性
4 ろう者に対する社会の視点の歴史的変遷
5 ろう者が抱えるニーズの現状
6 まとめと考察

第2章 ろう者を対象にしたソーシャルワーク実践の歴史的変遷
1 当事者の視点を取り入れたソーシャルワークとは
2 ろうあ者相談員の歴史と背景
2-1 戦後〜1980年代:手話ができる相談員を求めて
2-2 1980年代後半〜1990年代:業務内容と身分の確立
2-3 2000年代〜現在:専門性の向上と資格化の追求
3 ろう者に対するソーシャルワーク実践の変遷
3-1 医学モデルに基づいたソーシャルワーク実践に対する批判
3-2 精神保健福祉分野におけるろう者を対象にしたソーシャルワーク実践に対する批判
4 多文化ソーシャルワークの変遷
5 黒人ソーシャルワークの変遷
6 文化言語モデル:ろう者を文化言語的マイノリティとして捉える
7 まとめと考察

第3章 ろう者学のカリキュラム及び理論動向
1 ろう者学の概念
1-1 はじめに
1-2 ろうコミュニティの主張とろう者学成立の歴史的背景
1-3 ろう者学プログラム設置の歴史的動向
2 ろう者学カリキュラム
2-1 ギャローデット大学ろう者学部学士課程・修士課程
2-2 カリフォルニア州立大学ノースリッジ校ろう者学部学士課程
2-3 ボストン大学教育学部ろう者プログラム
2-4 ブリストル大学
3 ろう者学における理論的枠組みの発展
3-1 ろう文化論
3-2 オーディズム
3-3 感覚指向論
3-4 デフゲイン
3-5 ろう理論
3-6 デフフッド
4 まとめと考察
4-1 基礎カリキュラムと応用カリキュラム
4-2 ろう者学の主な理論群
4-3 ろう者の社会的言説に対するろう者学からのアプローチ

第4章 ギャローデット大学におけるソーシャルワーク教育の歴史的動向
1 大学カリキュラム分析の視点
2 ギャローデット大学の歴史と政策・方針
2-1 ギャローデット大学の設立とろう教育政策
2-2 ギャローデット大学の理念・教育目的・高等教育の構造
2-3 専門職養成課程
3 ギャローデット大学ソーシャルワーク学部
3-1 社会的要請とソーシャルワーク教育プログラムの設置(1960年〜70年代)
3-2 ろうコミュニティの社会的認知とろう当事者の視点(1980年代)
3-3 文化言語マイノリティとソーシャルワーク実践(1990年代)
3-4 反抑圧主義の観点の導入と教育カリキュラムの再構築(2000年代)
3-5 ろう者学の視点の導入と新たな教育カリキュラム(2010年代〜)
4 まとめと考察
4-1 社会背景とソーシャルワーク教育カリキュラムの変容
4-2 第一世代、第二世代、第三世代ソーシャルワーカー
4-3 ロジックモデル
4-4 カリキュラム分析の観点から
5 日本のソーシャルワーク教育におけるろう文化ソーシャルワークの位置付け

第5章 日本におけるろう文化ソーシャルワーク教育カリキュラム試論
1 はじめに
1-1 ろう文化ソーシャルワーク養成プログラム構想への道のり
1-2 ソーシャルワークにおけるろう者に関する言説の再構築に向けて
2 ろう者のアカデミック・ニーズ
3 聴覚障害ソーシャルワーク総論の試案と実施
4 「聴覚障害ソーシャルワーク総論」講義ノート
4-1 開講形態
4-2 講義概要とねらい
4-3 講義計画と学習目標
5 ろう者学総論の試案
6 「ろう者学総論」講義ノート
6-1 開講形態
6-2 講義概要とねらい
6-3 講義計画と学習目標
7 まとめと考察

終章 総合考察と将来展望
1 総合考察
1-1 ろう文化ソーシャルワーク
1-2 ソーシャルワーク教育におけるろう者の言説と文化言語モデル
2 本書の限界と課題
2-1 本書の限界
2-2 残された課題
3 結論

参考文献
和文参考文献
英文参考文献

資料

あとがき

著者略歴

著:高山亨太
高山亨太(たかやま・こうた)
 神奈川出身のろう者。現職は、ギャローデット大学大学院ソーシャルワーク研究科准教授兼研究科長。精神保健福祉士、社会福祉士。筑波大学大学院博士後期課程満期単位取得退学、ギャローデット大学大学院修士課程修了(第2期日本財団留学奨学金事業奨学生)、日本社会事業大学大学院博士後期課程修了。博士(社会福祉学)、修士(心身障害学)、修士(ソーシャルワーク)。専門分野は、精神保健、ろう者学、障害学。2014年よりギャローデット大学に助教として着任。2019年より現職。日本人ろう者としては初めての、ギャローデット大学で終身在職権(テニュア)を認められた教員である。

主な著者に、
「ろう・難聴当事者ソーシャルワーカーの養成――その歴史と課題」斉藤くるみ編『手話による教養大学の挑戦――ろう者が教え、ろう者が学ぶ』(2017年、ミネルヴァ書房: 172-209)など

ISBN:9784865001402
出版社:生活書院
判型:A5
ページ数:272ページ
定価:3000円(本体)
発行年月日:2022年04月
発売日:2022年05月02日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JKS