出版社を探す

環オホーツク海域考古学の新地平

新北方編年体系の検証から佐藤編年の広域改訂へ

著:柳澤 清一

紙版

内容紹介

本書で引用する佐藤達夫の編年観と呼応して、通説の北方編年観を批判していた山内清男が逝去(1970年)する直前に、諏訪在住の高名な考古学者から、日本先史考古学は「いつまで(山内流の)編年をやるか」という問いが発せられた。この発言は、その頃に学生であった「団塊の世代」には、自らの研究姿勢を問い糺す声として実に印象深いものであった。『月刊考古学ジャーナル』の「巻頭言」として、敢えて発表されたこの提言は、縄紋時代の日本列島を舞台としたものであるが、環オホーツク海域考古学に当て嵌めた場合はどのように受けとめられるであろうか。
 環オホーツク海域内に登場した土器型式の年代観には、各地域の通説編年案と比べると、200年から時にはそれ以上に及ぶ大きなずれが認められる。したがって病が重篤であった山内清男に対して、その編年学研究を一言を以て非難した諏訪発の旧き提言は、北方圏においては何ら妥当性を有しないと評価される。すなわち先端的な理化学情報を適宜に付会して、その有効性を検証するための条件は、いまだ環オホーツク海域において十分に整えられていないと判断される。
 本書では以下、そのような認識のもとに、近現代に繋がる環オホーツク海域の歴史事象を考察する際に広く参照されている通説の編年観とそれに基づく年代観を大幅に見直し、自然史・人文史上の実年代を付与した新しい交差編年体系の提示を主要な目標として掲げる。(本書「序文」から抜粋)

目次

第1章 北海道島編年体系の検証その⑴  道北の島嶼域から道央・道南、道東へ
 第1節 香深井5遺跡編年の再検討
 第2節 亦稚貝塚と石狩低地帯・奥尻島を結ぶ
 第3節 亦稚貝塚から沼浦海水浴場遺跡、モヨロ貝塚へ
第2章 北海道島編年体系の検証その⑵ 道東から道北の島嶼域へ
 第1節 灰白色火山灰と道東「貼付紋系土器」編年の見直し
 第2節 水禽・「鰭」状モチーフから見た「貼付紋系土器」の広域編年
 第3節 道東における擦紋Ⅳ期以降の層位事実と紋様手法の共時現象
第3章 道東「トビニタイ土器群」編年の諸問題
 第1節 「トビニタイ土器群」の末期について
 第2節 松法川北岸遺跡の未発表資料から見た「トビニタイ土器群Ⅱ」の成立
 第3節 「忘失」された「モヨロ貝塚編年」と「貝塚トレンチ」未発表資料の検討
第4章 「忘失」された佐藤編年の改訂と環オホーツク海域編年の新検討
 第1節 枝幸1号竪穴出土「南貝塚式」・「擦紋土器」編年の再検討
 第2節 モヨロ貝塚資料・枝幸1号竪穴標本から見た「佐藤1964編年」の復元
 第3節 モヨロ貝塚10号竪穴「変容系の土器群」と「佐藤1964編年」の謎
 第4節 「擦紋Ⅴ」をめぐる千島・北海道島・サハリン島編年の検討
 第5節 「環オホーツク海域編年」の検証から新構築へ向けて
引用・参考文献
索引
初出一覧

著者略歴

著:柳澤 清一
東京都出身。1949年9月生。
1979年、早稲田大学大学院文学研究科博士前期課程史学(考古学)専攻修了。早稲田大学図書館司書をへて、2001年より千葉大学文学部史学科教授、2015年退任。文学博士(2005年取得)。
主な著作・論文として、「称名寺式土器論」(前・中・後・結篇、『古代』63・65・66・68、1977~1980年)、「日本古代文化学会と歴史教科書の編纂」(『古代』99、1995年)、『縄紋時代中・後期の編年学研究』(平電子印刷所、2006年)、『北方考古学の新地平』(六一書房、2008年)、『北方考古学の新展開』(六一書房、2011年)、『北方考古学の新潮流』(六一書房、2015年)などがある。

ISBN:9784864451338
出版社:六一書房
判型:B5
ページ数:627ページ
定価:15000円(本体)
発行年月日:2020年06月
発売日:2020年06月30日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:NHF
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:1FPJ-JP-A