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韓国文学の源流 短編選 4

雨日和

他著:池河蓮
他著:桂鎔默
他著:金東里

紙版

内容紹介

植民地から解放されても朝鮮戦争の戦後、
完全に南北に分断され交流を絶たれた人々の苦悩は続く

「解放」後の混乱期に肩書をなくした高学歴の青年がとしての運命を予感「道程」。満洲からソウルに辿り着いた母と息子の、部屋さえ得られない苦難の日々「星を数える」。ひとところにとどまらず回遊していく男と、定住したまま動こうとしない女の相克「駅馬」。釜山に避難した貧しい兄妹のおぼつかない日々。ある日、二人は行方知れずになった「雨日和」。前線で戦っていた兵士が突然拘束され、転向を拒否したために辿る悲惨な運命「猶予」。南の島に幽閉された二人の捕虜。自死した仲間の家を訪ねた男を息子と思い最期を迎える母「ヨハネ詩集」。戦争時に夫を、戦後息子を失った女は神も信じられず、早逝した息子の位牌も焼いてしまう「不信時代」。朝鮮戦争は終わったが、その後軍の監房に収監された兵士たちのドタバタ劇「明暗」。休戦後、世の中はがらりと変わり、戦争時の密告者が罪の意識に苛まれるようになる「すべての栄光は」。

目次

道程―小市民 도정-소시민 
池河蓮(チ・ハリョン/지하련) カン・バンファ訳



星を数える 별을 헨다
桂鎔默(ケ・ヨンムク/계용묵) オ・ファスン 訳



駅馬 역마
金東里(キム・ドンニ/김동리) 小西直子 訳



雨日和 비 오는 날
孫昌渉(ン・チャンソプ/손창섭) カン・バンファ 訳



猶予 유예
呉尚源(オ・サンウォン/오상원) 小西直子 訳



ヨハネ詩集 요한시집
張龍鶴(チャン・ヨンハク/장용학) カン・バンファ 訳



不信時代 불신시대
朴景利(パク・キョンニ/박경리) オ・ファスン 訳



明暗 명암
呉永壽 (オ・ヨンス/오영수) オ・ファスン 訳



すべての栄光は 모든 영광은
黄順元(ファン・スンウォン/황순원) 小西直子 訳

著者略歴

他著:池河蓮
一九一二―一九六〇。慶尚南道の居昌(コチャン)に生まれる。本名は李現郁(イ・ヒョヌク)。一九四〇年、雑誌『文章』に「決別」を発表し作家となる。日本に留学し東京の昭和高等女学校に通ったと言われる。KAPF(朝鮮プロレタリア芸術家同盟)の指導者であった林和(イム・ファ)の妻としても知られる。一九四五年八月十五日の光復後は朝鮮文学家同盟に加担し、一九四七年に夫婦で越北するまでに多くの作品を発表した。主な作品に「決別」(一九四〇)「滞郷抄」「秋」(共に一九四一)「山道」(一九四二)「道程」(一九四六、朝鮮文学賞)「クァンナル(広津)」(一九四七)などがある。
他著:桂鎔默
一九〇四―一九六一。平安北道生まれ。幼時の初名は河泰鏞(ハ・テヨン)。一九二八年に日本の東洋大学・東洋学科に入学。渡日以前から、一九二〇年に少年誌『鳥の声』に詩「寺子屋が壊れ」を発表して懸賞二等になるなど、詩や小説を執筆して作家としての頭角を現す。本格的活動は一九二七年、『朝鮮文壇』に小説「チェ書房」が当選してからである。一九三五年、同誌に「白痴アダダ」を発表し、作家としての地位を固める。その頃が彼の黄金期と評価されている。帰国後、朝鮮日報の出版部などでの勤務を経て、みずから出版社を設立している。一九四五年の「解放」直後、左右の思想に分かれる文壇の対立のなかでも、中立的立場を守ろうとする作家でもあった。「人頭蜘蛛」(一九二八)などに代表される初期の作品は現実主義的、傾向派とされるが、次第に芸術重視の作品世界へと変わっていった。晩年の作品では問題提起はするが、解決しようとする姿勢が見られず、それが彼の限界でもあると評されている。「解放」後の代表作が本書収録作品「星を数える」(一九四六)である。 長くない生涯だが、四十編以上の短編、エッセイ集『象牙塔』(一九五五)などを残している。
他著:金東里
一九一三―一九九五。慶尚北道慶州(キョンジュ)に生まれる。本名は金始鍾(キム・シジョン)。母親が熱心なキリスト教徒だったことからキリスト教系の学校に通っていたが、一九二八年にソウルの儆新(キョンシン)高等普通学校に編入。しかし、翌年に退学。その後は読書に没頭し、一九三四年に詩「白鷺」が朝鮮日報の新春文芸に入選、登壇。翌一九三五年に朝鮮中央日報の新春文芸に短編小説「花郎の後裔」が入選し、小説家としての執筆活動に入った。一九三六年には東亜日報の新春文芸にも「山火」で入選している。その後、多数の作品を発表し、韓国を代表する純文学作家となったが、執筆活動のほかにも韓国文人協会の副理事長を皮切りに、中央大学芸術学部学長、韓国小説家協会会長、大韓民国芸術院会長、韓国文人協会名誉会長を務めるなど、社会活動も旺盛に繰り広げた。その文学的な特色としては、土着的な韓国人の生き方や精神を深く探求し、それを通じて人間に与えられた運命の究極のありさまを理解しようとする努力が挙げられる。そうした努力の結果として、伝統、宗教、民俗などの世界に最も関心を寄せた作家と評されるようになったが、そういった作風のものにとど…

ISBN:9784863856073
出版社:書肆侃侃房
判型:4-6
ページ数:296ページ
価格:2900円(本体)
発行年月日:2023年12月
発売日:2023年12月29日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:FB