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韓国文学の源流 短編選 1

B舎監とラブレター

他著:羅恵錫
他著:田栄沢
他著:朴英熙

紙版

内容紹介

韓国(朝鮮)文学の黎明期を彩る文学は厳しい時代を反映して
社会の底辺で報われぬ愛に生きる人たちの心をえぐられる物語を生み出してきた。 

三従の道からの解放を自ら実践しようとして日本留学も果たした女性瓊姫は、新しい女性としての生き方を模索する「瓊姫(キョンヒ)」。白痴のように見えて実は、ある特殊な能力を持つ少年は自由を求めて危険な道に踏み出す「白痴? 天才?」。金を少しでも減らしたくない男。日々寄付を求めてやってくる人々を追い返すために猟犬を飼い始める「猟犬」。死んでから天国に行くより、今のこの世でほんの少しでもいいから、よい暮らしをしてみたいと願う男「人力車夫」。究極の貧しさゆえ空腹を満たすために腐ったサバを食べてしまい、食中毒をおこした息子を何とかして救おうと奔走する母親「朴乭(パクトル)の死」。厳格な舎監が夜な夜な繰り返す秘密の時間。その秘密を垣間見てしまった女学生たち「B舎監とラブレター」。朝鮮人の父親と日本人の母親を持つ混血の息子の葛藤と生きづらさを時代背景と共に綴る「南忠緒(ナムチュンソ)」。韓国最初の創作SF小説。人間の排泄物から必要な要素だけ取り出して人工肉を作る実験に明け暮れる笑えない現実「K博士の研究」。子どものころから主人に絶対服従を誓って生きてきたもの言えぬ男。ある日、屋敷が火事になり、若主人の新婦を救おうと火の中に飛び込んでいく「唖の三龍」。

目次

瓊姫(キョンヒ) 경희 羅恵錫(ナ・ヘソク/나혜석) オ・ファスン 訳

白痴? 天才? 천치? 천재? 田栄沢(チョン・ヨンテク/전영택) カン・バンファ 訳

猟犬 사냥개 朴英熙(パク・ヨンヒ/박영희) カン・バンファ 訳

人力車夫 인력거꾼 朱耀燮(チュ・ヨソプ/주요섭) ユン・ジヨン 訳

朴乭(パクトル)の死 박돌의 죽음 崔曙海(チェ・ソヘ/최서해) 岡裕美 訳

B舎監とラブレター B사감과 러브 레터 玄鎮健(ヒョン・ジンゴン/현진건) カン・バンファ 訳

南忠緒 남충서 廉想渉(ヨム・サンソプ/염상섭) ユン・ジヨン 訳

K博士の研究 K박사의 연구 金東仁(キム・ドンイン/김동인) 岡裕美 訳

啞の三龍 벙어리 삼룡 羅稲香(ナ・ドヒャン/나도향) オ・ファスン 訳

解説 芹川哲世

文学史年表

著者略歴

他著:羅恵錫
一八九六~一九四八 京畿道水原(キョンギド・スウォン)生まれ。画家、文筆家。五人兄妹の三番目に生まれ、一九一〇年の日韓併合前後、父が官僚を務め裕福な家庭に育つ。進明(チンミョン)女子高等普通学校卒業後、兄の勧めで日本に留学し、私立女子美術学校(現 女子美術大学)西洋画部に進学し油絵を専攻。韓国初の女性西洋画家となる。在学中に東京の女学生たちの自由な雰囲気に触れて女性解放のための運動に参加し、韓国初の新女性とも言われる。一時は独立運動にも傾倒するが、後に結果としては現実と妥協する道を選ぶことになり、一九二〇年四月、六年間求愛され続けたという日本の外交官となる親日派の留学生と結婚する。結婚後、夫とともに三年に及ぶヨーロッパ周遊に出るが、その途中に出会った夫の友人と道ならぬ恋に落ちて夫に離縁される。離婚後、画家としての才能を開花させ、朝鮮美術展覧会、日本の帝国美術院展覧会でも入選する。波乱万丈な人生を送るが、晩年は一時養老院にも身を寄せ、五十二歳の若さで病死する。「瓊姫」は女学生時代の一九一八年に発表した自伝的小説であり、他に小説では「閨怨」(二一)「玄淑」(三六)などの短編、詩では「人形…
他著:田栄沢
一八九四~一九六八 平壌(ピョンヤン)に生まれる。一九一〇年、平壌大成(テソン)中学を三年生で中退。一九一八年に青山学院文学部を卒業、同校の神学部に再入学する。金東仁(キム・ドンイン)、朱耀翰(チュ・ヨハン)、金煥(キム・ファン)らと文芸誌「創造」の同人となり、東京で学生独立運動にも参加。一九二三年、青山学院神学部を卒業後、監理教会所属の協成神学校と協成女子神学校の教員を経て、一九三〇年には米パシフィック神学校に入学する傍ら興士団(安昌浩[アン・チャンホ]が設立した民族運動団体)にも加入する。一九三二年に帰国し、黄海道鳳山(ファンヘド・ポンサン)監理教会、一九三八年に平壌ヨハン学校、女子聖経学校、一九四二年に平壌神理教会で牧師、一九四八年に中央神学校教授などを務めた。一方で文教部編修局編修官(四六)、在日本東京韓国福音新聞主幹(五二)、大韓基督教文書出版協会、基督宣教会編集局長(五二)など学界・言論界にも従事しながら、一九六一年には韓国文人協会初代理事長を務める。一九六三年、大韓民国文化褒章大統領章を受ける。短編「恵善の死」(一九)、「白痴? 天才?」(一九)などの作品からは、彼がど…
他著:朴英熙
一九〇一~? ソウル生まれ。一九一六年、培材(ペジェ)高等普通学校に入学し、在学中に羅稻香(ナ・ドヒャン)、金基鎭(キム・ギジン)、金復鎭(キム・ボクジン)らと親交を結び、一九一九年三月五日、三・一運動に参加する。一九二〇年、培材高等普通学校を修了して日本に渡り正則英語学校に入学、一九二一年に帰国し総合教養誌「新青年」、韓国初の詩専門誌「薔薇村」の同人として活動した。一九二二年、浪漫主義と象徴主義の文学を紹介する雑誌「白潮」の同人として活動し、創刊号に「微笑の虚華詩」などの詩と、オスカー・ワイルドの戯曲「サロメ」の翻訳が掲載される。一九二四年には開闢社で学芸部長を務め、同年、新傾向派文学団体パスキュラを結成。一九二五年、KAPF(朝鮮プロレタリア芸術同盟)結成に参加し、教養部の責任者を務める。一九三一年、第一次KAPF検挙事件を機に拘束され、翌年不起訴処分となる。一九三四年、一月二日付けの「東亜日報」に「最近文芸理論の新展開とその傾向」を発表し、KAPF脱退と転向を宣言。一九三七年、詩集『懐月詩抄』を発刊。一九三六年一二月に公布された「朝鮮思想犯保護観察令」により朝鮮思想犯観察所に収…

ISBN:9784863855243
出版社:書肆侃侃房
判型:4-6
ページ数:256ページ
定価:2200円(本体)
発行年月日:2022年07月
発売日:2022年07月11日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:FB