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韓国文学の源流 短編選 3

失花

他著:李 箱
他著:李 孝石
他著:蔡 萬植

紙版

内容紹介

日本統治時代、戦争の影が色濃くなる中、
荒れ狂う時代の波に翻弄される主人公たちの
恋愛、家族、そして職場での人間模様……。
当時を代表する作家たちが綴る名作六編。

モダニズム作家、李箱の遺稿で、死後に発表された『失花』。妻の死後、中国を旅し、華やかな都会の中の孤独をアイロニーをこめて描いた『ハルビン』。日本にいられなくなり新しい生活を求めてやってきた澄子と、雑誌社に勤めながら小説を書く作家との未遂に終わる愛の逃避行『冷凍魚』。思想犯として投獄された男に本を差し入れ、一時釈放を待つ女。しかし住む家まで用意したのに男は迎えにきた父と帰郷してしまう『経営』。変わりゆく農村を舞台に土とだけ向き合って生き、すべてを失ったあと自らの命を絶つ父。帰郷し田んぼに出てはじめて父の思想にめざめる『土の奴隷』。妻とその女友だちとの交流を通して男と女の不可解な感情とすれ違いを描いた『秋』。

日本統治時代、戦争の影が色濃くなる中、
荒れ狂う時代の波に翻弄される主人公たちの
恋愛、家族、そして職場での人間模様……。
当時を代表する作家たちが綴る名作六編。

目次

失花 실화 李箱(イ・サン/이상) 岡裕美 訳
ハルビン 哈爾濱 하얼빈 李孝石(イ・ヒョソク/이효석) オ・ファスン 訳
冷凍魚 냉 동 어 蔡萬植(チェ・マンシク/채만식) オ・ファスン 訳
経営 경 영 金南天(キム・ナムチョン/김남천) 岡裕美 訳
土の奴隷 続「第1課第1章」 흙의 노예 李無影(イ・ムヨン/이무영) カン・バンファ 訳
秋 가을 池河蓮(チ・ハリョン/지하련) カン・バンファ 訳
解説 渡辺直紀
文学史年表
著者プロフィール
訳者プロフィール

著者略歴

他著:李 箱
一九一〇―一九三七 京城生まれの詩人、小説家。本名、金海卿(キムヘギョン)。京城高等工業学校を卒業し、朝鮮総督府建築課で技手として働くかたわら、三〇年に発表した長編小説『十二月十二日』で作家活動を開始した。三三年に朝鮮総督府を辞職して喫茶店の経営を始め、妓生の錦紅(クモン)と同居生活を送る。三四年には文学同人「九人会」に参加し、『朝鮮中央日報』に詩『烏瞰図』を連載するが、難解だとの抗議を受けて打ち切られた。三六年、『朝光』誌に掲載された短篇小説『つばさ』が一躍脚光を浴び、モダニズム作家としての地位を確立。同年、東京に渡る。三七年に思想犯として日本の警察に逮捕され、持病の肺結核が悪化して保釈された後、同年四月十七日に死去。東京で書かれた『失花』は、死後に遺稿として発表された。このほか代表作に『蜘蛛、豚に会う』『逢別記』などがある。
他著:李 孝石
一九〇七―一九四二 江原道(カンウォンド)平昌郡(ピョンチャングン)珍富面(チンブミョン)に生まれる。号は可山(カサン)。京城第一高等普通学校を経て、一九三〇年京城帝国大学法学部英文学科を卒業。一九三一年日本の恩師の口利きで朝鮮総督府警務局検閲係に一時就職するも、良心の呵責と周囲の非難により一カ月足らずで退職する。その後は妻の実家のある、咸鏡北道(ハムギョンプット/現在の北朝鮮)鏡城(キョンソン)に移り鏡城農業学校で英語教師、後に平壌の崇実(スンシル)専門学校教授として赴任する。教員をしながら文筆活動を行っていたこともあり、経済的には比較的余裕があったとされる。高等普通学校在学中の一九二五年「毎日申報」の新春文芸に詩「春」が選外佳作となるが、大学在学中の一九二八年雑誌「朝鮮の光」に短編「都市と幽霊」を発表したのが正式な文壇デビュー。初期の作品は「露領近海」「上陸」「北國私信」など、傾向文学の色合いが濃く、同伴者作家とも言われていた。一九三二年以後、純粋文学の世界に傾倒していき、作品には「オリオンと林檎」(三二)、「豚」「雄鶏」(三三)などがある。一九三三年には「九人会」結成の発起人の…
他著:蔡 萬植
一九〇二―一九五〇 全羅北道(チョルラプット)沃溝郡(オックグン)臨陂面(イムピミョン)に生まれる。号は白菱(ペンヌン)など。一九一四年臨陂普通学校卒業後、一九一八年に上京し、京城の中央高等普通学校に入学。在学中の二〇年に結婚し、二二年に卒業。同年、日本に渡り早稲田大学付属第一早稲田高等学院文科入学。だが二三年九月、関東大震災に遭い朝鮮に帰国、そのまま日本に戻ることはなく学籍は除籍となる。その後、私立学校の教員として勤務し、そのころから小説の執筆を始め、二五年には東亜日報社に入社し記者になるが、一年あまりで退社。その後も開闢社、朝鮮日報社などを転々とする傍ら文筆家として執筆活動を続ける。三六年以後は職につかず、創作活動に専念し、四五年郷里の臨陂に帰郷し五〇年に肺結核で永眠。小説家としては短編「新しい道へ」が「朝鮮文壇」三号(二四年)に掲載されて文壇デビュー。その後、数多くの短編、長編を執筆するが、小説の他、戯曲や評論、随筆などその作品は多岐に渡る。初期の作品は「消えゆく影」「貨物自動車」など、同伴者作家に近い。三四年に発表した短編「レディメイド人生」は風刺と諧謔の効いた作風が特徴で、…

ISBN:9784863854185
出版社:書肆侃侃房
判型:4-6
ページ数:352ページ
価格:2400円(本体)
発行年月日:2020年09月
発売日:2020年09月12日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:FB