いのちの科学を語る 4
チンパンジーの社会
著:西田 利貞
内容紹介
チンパンジーを観察し、ヒトとの共通祖先の姿を探る。
40年以上も野生チンパンジーの生態を観察しつづけてきた著者ならではの、平明で深い分析と貴重な写真53点を満載。
野生チンパンジーの魅力を語り、ヒトとの共通祖先が持っていた行動を再構成し、現代の文明批判を展開する。
目次
はじめに
第1章 なぜ、野生のチンパンジーを研究するのか──「共通祖先の復元」をめざして
人類の祖先の姿をさぐるために/人間とチンパンジーは非常に近い生き物/日本の霊長類研究はニホンザルからまっ た/血縁が社会を形作る/ニホンザルは「メス社会」/サルを顔で見分けたのは、日本が最初/海外の大型類人猿の 研究へ/調査隊員となってタンザニアへ/チンパンジー餌づけの試み/餌づけに成功するまで/餌づけから追跡調査 へ/餌づけの悪影響/長期観察でわかってきたこと
第2章 チンパンジーの集団について──集団内での関係、集団同士の関係
チンパンジーに「家族」はあるのか?/「家族」が見当たらない/「そんなことはないだろう!」/「家族」とは何 か?/新たなチンパンジー集団の出現/発見──集団どうしは敵対的/発見──チンパンジーはメスが移籍する/ヒトも チンパンジーも父系社会/ヒトとの共通点──オス同士の連帯/消滅してしまったKグループ/Mグループとの「仁義 なき戦い」?/Kグループの最期
第3章 集団のリーダーについて──強さよりも「ハッタリ」が大事
リーダーになれる条件/長期政権リーダーの「貫禄」/下位のオスの連合を妨害する/女性の支持は重要か/メスの ケンカを仲裁することも大事な仕事/最初に見たリーダー交代劇/裏切りで形勢逆転
第4章 チンパンジーの一生──オスは出世競争、メスは年功序列
赤ん坊期は頼りない/チンパンジーの子供はすべて自分で見て学ぶ/三歳ごろから自分で食べ物を判断/子供はみん なが面倒をみる/背中に乗りたがる子供、乗せない母親/離乳期の終わり/「狩り」は若者にならないとできない/ 獲物は若者以下のサル/道具を使って食べる食べ物/どのメスよりも上位になるのが、大人のオスの条件/老年期の チンパンジーは/メスの一生は/メスの順位は年功序列
第5章 一日の生活と性行動──食事と睡眠が中心の生活、交尾時間はわずか七秒
太陽と共に起き、眠る/木の上でベッドを作って寝る/アフリカ人の動体視力の凄さ/夜中の交尾はあるか?/チン パンジーは「早撃ち」/ほとんどが「無駄撃ち」
第6章 チンパンジーの食生活──一日二回、集まらないけど同時に食事
同時刻にバラバラに食事する/どんな食べ物を食べるか/肉は誰に分配するか/小さな果物や葉は分配しない/チン パンジーの「ごちそう」は?/味覚はヒトに近い/「旬」を覚えている/共通祖先も食事は一日二回?
第7章 チンパンジーの文化──地域によって行動が違う
動物にも文化はあるか?/「岩の水中投下」はマハレの文化?/身体の掻き方が違う!/シラミを見つけたときの「音」も違う/シラミ取りの「お作法」/チンパンジーも生まれた後に行動を覚えていく/文化か? 流行か?/チン パンジーに「会話」はあるか?/チンパンジーはイメージで思考している/言葉に頼らずにお互いを理解している
第8章 「騙し」と「遊び」──詐欺も戦争も太古の昔から?
チンパンジーの詐欺事件?/子供が母親をあざむく/お姉さんのいじわる/興味深い「落ち葉かき遊び」/ビデオ使 用の利点と問題点/年上の子供が「手加減」する/集団遊びは戦争の起源か?/「ルール」を作って遊んだ例/人間 のいじめ問題の原因は/人間の集団社会の急変/共通祖先以来の集団社会の崩壊
第9章 チンパンジーの森と地球を守るために──持続可能な社会と地球人口問題
エコツーリズムで類人猿の生態に触れる/チンパンジーを見たことがなかった村人/エコツーリズムの問題点と意義 /ヒトとチンパンジーと森の共生/贅沢になりすぎた先進国の生活/生物多様性保全のためには、少子化歓迎/多様 性のない地球では意味がない
参考文献/あとがき