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「ニュートリノと重力波」のことが一冊でまるごとわかる

著:郡 和範

紙版

内容紹介

宇宙の観測は、可視光のみを使用してきた時代から、電波、赤外線、紫外線、X線、ガンマ線などの電磁波のあらゆる波長を用いたものに発展してきました。そして宇宙の最果てを見るため、ついにマイクロ波により宇宙誕生から38万年後の「火の玉宇宙」の姿を捉えるに至りました。ではそれ以前の宇宙の姿はどのように見るのでしょうか? それを観測することを可能にするのが「ニュートリノ」であり、さらに「重力波」なのです。原理的に、ニュートリノにより「火の玉」のさらに奥の宇宙の情報を得ることができます。さらに、重力波により、誕生時の宇宙の姿を見ようとする段階にまできています。ニュートリノと重力波という2つのキーワードについて、宇宙に興味のある人なら誰もが理解できるよう一つ一つ丁寧に解説していきます。

目次
第1章 人はどのようにして宇宙を見ているのか?
第2章 ニュートリノと重力波が「宇宙の謎」を解き明かす
第3章 幽霊粒子「ニュートリノ」の正体
第4章 ニュートリノ天文学で、宇宙の「ダーク世界」を読み解く
第5章 なぜ、「ニュートリノ振動」なぜ、「ニュートリノ振動」
第6章 ニュートリノが「新しい素粒子物理学」を拓く
第7章 重力波をどのようにして捉えるのか?
第8章 重力波、ついに直接観測で発見!
第9章 見えなかった宇宙をこじあける「重力波天文学」

目次

第1章 人はどのようにして宇宙を見ているのか?
1-1 「波長の違いで見え方が違う」って?―宇宙を見る目
1-2 何を使えば、何が見えるのか?―電磁波の分類はエネルギーがポイント
1-3 電磁波の壁を破るニュートリノ、重力波とは?―ニュートリノ天文学、重力波天文学
1-4 「見える」「見えない」の違いはどこにある?―電磁波の相互作用
1-5 マイクロ波が「宇宙の化石時代」を初めて捉えた―宇宙マイクロ波背景放射(CMB)


第2章 ニュートリノと重力波が「宇宙の謎」を解き明かす
2-1 ニュートリノなら、何が見えるのか?―電磁波では永遠に見えない世界
2-2 重力波では何をどこまで見られるのか?―ブラックホールの事象の地平線
2-3 重力波が「宇宙の誕生」を見る手がかりになる―宇宙開闢の1秒に迫る
2-4 ニュートリノはどこに存在するのか?―“火の玉” 宇宙を撮影する
2-5 重力波で宇宙初期の何が見えるのか?―大統一理論
2-6 宇宙初期の重力波をどう捉えるのか?―シグナルに対する感度
2-7 太陽、超新星、人体…起源の異なるニュートリノ―エネルギーの違い


第3章 幽霊粒子「ニュートリノ」の正体
3-1 幽霊粒子のニュートリノ―パウリの予言
3-2 ニュートリノは「素粒子」の1つ―究極の17物質
3-3 宇宙初期には「反世界」があった?―反粒子の存在
3-4 電子とニュートリノとは“ペア”の関係―3世代のニュートリノ
3-5 ニュートリノはどこから生まれてくるか(1)―太陽ニュートリノ
3-6 ニュートリノはどこから生まれてくるか(2)―大気ニュートリノ
3-7 ニュートリノはどこから生まれてくるか(3)―加速器ニュートリノと原子炉ニュートリノ


第4章 ニュートリノ天文学で、宇宙の「ダーク世界」を読み解く
4-1 右巻きニュートリノ、左巻きニュートリノ―スピンとは何か?
4-2 フェルミ粒子とボース粒子を入れ替える―超対称性
4-3 質量はどこから来たのか、という謎―ヒッグス機構
4-4 ヒッグス機構だけでは質量を説明できない―陽子の重さの秘密
4-5 「カイラル対称性の破れ」が質量を生む?―陽子、中性子、パイ中間子の質量の起源
4-6 恒星の進化や銀河形成のメカニズムが見える―リアルタイムな観察
4-7 カミオカンデがニュートリノを捉えた!―超新星1987Aの爆発
4-8 カミオカンデはどのようにしてニュートリノを捕まえたのか?―地下1000m、超純水
4-9 世界で進んでいる変わり種の施設―ガズークス計画、アイスキューブ


第5章 なぜ、「ニュートリノ振動」なぜ、「ニュートリノ振動」
5-1 暗黒物質と暗黒エネルギーという不気味な存在―ダークマター、ダークエネルギー
5-2 ダークマターの正体はニュートリノ?―軽すぎるニュートリノ
5-3 なぜ、地下深くでニュートリノ観測をするのか?―ミュー粒子の排除
5-4 ピラミッドの内部さえ透視する技術―ミューオグラフィ
5-5 「ニュートリノ振動」でニュートリノが変異した!―梶田博士の大発見
5-6 ニュートリノ振動は波の重ね合わせ―「うなり」に相当する現象
5-7 電子型がミュー型のニュートリノに変わる―太陽ニュートリノのMSW効果
5-8 ニュートリノの理論計算と実測値の食い違い―太陽ニュートリノ問題
5-9 地球誕生の謎をニュートリノで探る―ニュートリノ地球物理学の誕生


第6章 ニュートリノが「新しい素粒子物理学」を拓く
6-1 ミクロの素粒子研究が、マクロ宇宙を解明する―ウロボロスの蛇
6-2 物理学は宇宙のどこでも通じるサイエンス―宇宙の時間を遡る
6-3 なぜ、反粒子は宇宙から消えたのか?―正のバリオン、反バリオン
6-4 なぜ、反物質の世界はどこにもないのか?―バリオン数生成の問題
6-5 なぜ、現在は存在しない反粒子を「昔はあった」といえるのか―未知のCP対称性の破れ
6-6 量子論に特殊相対性理論を組み込む―ディラックの海
6-7 何がニュートリノに質量を与えたのか?―柳田のシーソー機構
6-8 数式で「質量」を与えるメカニズムを考える―シーソーメカニズムの優位性
6-9 「反粒子が消えた謎」の新しい解釈―レプトジェネシスの考え
6-10 CPの破れが、ニュートリノに残っている可能性―統一理論の候補
6-11 再び問う、ニュートリノはダークマターになれるか?―相次ぐ発見と否定
6-12 ダークマターの重さはどのくらいなのか?―1keV~10keV
6-13 アイスキューブで発見された超高エネルギー―PeVニュートリノ


第7章 重力波をどのようにして捉えるのか?
7-1 重力波を伝えるのは時空自身―アインシュタイン「最後の宿題」.
7-2 天体のイベントと宇宙誕生時の様子を知る―重力波検出の意味
7-3 ブラックホールの質量が消えてエネルギーになった!―重力波の検出の方法
7-4 ブラックホールの質量が消えてエネルギーになった!―重力波の検出の方法
7-5 世界の重力波施設を見る―LIGOのしくみ


第8章 重力波、ついに直接観測で発見!
8-1 「宇宙誕生」の情報をもたらす重力波―インフレーション理論.
8-2 力波は1年に9~240個ぐらい見つかる ―重力波をグラフで読みとく(1)
8-3 ブラックホールの質量、距離を推定する ―重力波をグラフで読みとく(2)
8-4 3つの天体イベントを比較する―重力波をグラフで読みとく(3)
8-5 重力波で見つかったブラックホールの異常さ―巨大ブラックホール
8-6 本物の重力波か、偽モノなのか?―ノイズ、事前シミュレーション、国際協力
8-7 ついに中性子星同士の合体の重力波を検出―マルチメッセンジャー天文学の幕開け
8-8 中性子星から出た「光」の解釈―金、白金、レアアースの起源


第9章 見えなかった宇宙をこじあける「重力波天文学」
9-1 精密なCMB観測を用いた間接的な検証―B-モード偏光の渦巻パターン
9-2 インフレーション起源の重力波を直接捉える―DECIGO(デサイゴ)のミッション
9-3 パルサータイミングを用いた間接観測―四重極成分の検出
9-4 その他の初期宇宙の重力波―宇宙背景重力波
9-5 初期宇宙起源の背景重力波を発見か?―NANOGravの衝撃 !
9-6 近い将来への5つの期待―著者の予想

著者略歴

著:郡 和範
1970 年兵庫県加古川市に生まれる。現在、高エネルギー加速器研究機構(KEK)准教授、総合研究大学院大学と東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構を兼任。2000 年東京大学大学院理学研究科物理学専攻博士課程修了。2004 年米ハーバード大学博士研究員、2006 年英ランカスター大学研究助手、2009年東北大学助教、2017年英オックスフォード大学招聘准教授などを経て現職に至る。この間、京都大学、東京大学、大阪大学の博士研究員に従事。主な研究内容は宇宙論・宇宙物理学の理論研究(キーワード:ビッグバン元素合成、ダークマター、初期宇宙のインフレーション、ブラックホール、重力波、宇宙初期の量子ゆらぎ、宇宙マイクロ波背景放射、21cm線放射、ニュートリノ、ガンマ線/X線、宇宙線、ダークエネルギー、バリオン数生成、など)。著書に『宇宙はどのような時空でできているのか』(ベレ出版)などがある。

ISBN:9784860646493
出版社:ベレ出版
判型:A5
ページ数:274ページ
定価:1800円(本体)
発行年月日:2021年02月
発売日:2021年02月04日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:PDZ
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:PHM