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みはてぬ夢のさめがたく

新資料でたどる石上露子

著:奥村 和子
著:楫野 政子

紙版

内容紹介

石上露子―明星などで活躍しながら悲恋の絶唱「小板橋」を残し、二六歳で文壇から消えた。白菊のごとき深窓の麗人伝説を生む。没後六〇年近い今、多くの書簡・小説・評論が見つかった。流麗な筆跡、澄んだ繊細な感性、和田英作の「こだま」に震える素顔は、息づく皮膚感覚で読む者に迫る。―河内の旧家の跡取り娘、大地主として激動に遭遇。驕奢、苦悩……湧き出す詩的叫び。奇跡のような女性像が、縁の地の女性の作業によって鮮烈に蘇った!〈木村 勲(元朝日新聞学芸部記者・元神戸松蔭女子学院大学教授)〉

 南河内に隣接する堺の商家出身の与謝野晶子は、奔放に恋を貫きました。
 わが郷土の歌人、石上露子は激しい気性を秘めつつ、恋と文学という夢を抑え、地主の妻として生きました。
 今ここに見る新資料は、自由への魂の叫びです。
 今を生きる私たちへの露子の伝言を、受けとめたいと思うのです。
      (まえがき―新しい石上露子との出会い」より) 奥村和子

目次

まえがき 新しい石上露子との出会い  奥村和子

第一部 新発見『婦人世界』の石上露子作品
        ―青春の軌跡、浪華婦人会時代  楫野政子
 はじめに
 第一章 『婦人世界』における露子の新作品
     1 浪漫詩人露子
     2 弱き人々へのまなざしと反戦意識
     3 社会活動に熱意を示す露子
 第二章 露子のペンネーム「まぼろし人」
     1 男性の和歌を堂々批判する露子
     2 「かの子」は「まぼろし人」
     3 「まぼろし人」へのこだわり
     4 「まぼろし」は露子の文学世界
     5 もう一つの反戦―「姉の文」
     6 露子の「孤独」な自己意識―「冬の小径」
     7 作詞家露子

 第三章 読者欄「友信欄」で縦横無尽に活躍する露子
     1 「夕千鳥」、「つゆ子」、「孝子(たか子)」、「しら露」、「すぎやま」
     2 「友信欄」の主宰者として―「園守」、「そのもり人」
     3 浪漫性への回帰―「小琴の糸」
     4 新聞小説に熱中する露子―「かの子」、「○○子」
     5 露子のその他のペンネーム―「西の夢びと」など
 第四章 「宵暗」「王女ふおるちゆにあ」の作者夢遊庵は露子ではない
 第五章 浪華婦人会編『婦人世界』所在の現況―「おわりに」にかえて

第二部 若き日の石上露子書簡
        ―苦悩し旧弊にあらがう露子
 はじめに  楫野政子
 第一章 資料1 明治三六年二月一五日付大谷きよ子宛杉山孝子書簡  楫野政子
          1 資料1
          2 資料1 Ⅰ~Ⅷの解説
             父に文通を絶たれた露子の嘆き ほか
 第二章 資料2 明治三六年三月一九日付大谷きよ子宛杉山孝子書簡  楫野政子
          1 資料2
          2 資料2 Ⅰ~Ⅵの解説
            「石川に生ひて石川に死ぬべき」運命 ほか
 第三章 資料3 明治三六年四月一一日付大谷きよ子宛杉山孝子書簡  奥村和子
          1 資料3
          2 資料3 Ⅰ~Ⅶの解説
            「こだま」に魅せられた露子・露子の官能をゆさぶって ほか
 第四章 資料4 明治三六年六月一〇日付大谷きよ子宛杉山孝子書簡  奥村和子
          1 資料4
          2 資料4 Ⅰ~Ⅴの解説
             大谷家で歓待され、感激する露子
 第五章 資料5 明治四一年八月二日付杉山荘平宛杉山孝子書簡  奥村和子
          1 資料5
          2 資料5 Ⅰ~Ⅵの解説
             新妻露子の夫への恋情を綴る 甘い蜜月であった新婚時代

第三部 『助産乃栞』を読む
        ―幸福な妻・母であった石上露子  奥村和子
 プロローグ
   『助産乃栞』との出合い/『助産乃栞』のこと/緒方正清という人/
   石上露子執筆の作品一覧と露子の入院等関連事項
 第一章 資料
資料1「読書のたのしみ」/資料2「消息文」/資料3「一つ身衣」/資料4「産床日記」/資料5「消息」/資料6「産床日記」(二)/資料7 美文「せきれい」/資料8「○○庵日記」/資料9「婦人家庭衛生學を」/資料10「流産」/資料11「孔雀の翅」/資料12「和歌八首」/資料13「涙の記」

 第二章 資料解説  幸福な妻・母 孝子
1 資料1 杉山孝子長男出産/2 資料2 父団郎死去・長女禮子出産と夭折/3 資料3 禮子への鎮魂/4 資料4 孝子の入院と退院 ほか/5 資料6 夫や子への愛に生きようと決意する孝子 ほか/6 資料5 緒方院長への礼状/7 資料7 幸ある日かな 誇らしき母 親ばか孝子/8 資料8 恵日庵の風流/9 資料9 緒方博士の『婦人家庭衛生學』を読んでみよう/10 資料10 流産の悲しみ/11 資料11 「孔雀の翅」の華麗さとかなしさ/12 資料12 和歌八首 身はさびしけれ/13 資料13 院長緒方正清への挽歌
 エピローグ
地主の妻、母としての幸ある日に生き、自由な文学精神を封印した露子

第四部 新たにみつかった高貴寺石上露子書簡
        ―大地主杉山家崩壊と逆縁の晩年を生きる  奥村和子
 第一章 高貴寺と杉山好彦・杉山孝子
     1 高貴寺で新たに見つかった露子書簡二四通
     2 高貴寺前田弘範住職と杉山好彦・杉山孝子
     3 高貴寺にある杉山墓所と石上露子歌碑
     4 石上露子書簡一覧
 第二章 露子書簡と解説
資料1 病む好彦 加持誦経する高貴寺住職/資料15 …永遠の安らかな眠りにはいりましたものへの悲願(墓建立)がかなう/資料22 好彦の好んだ美しい桜の木の下で、八彦入学記念の写真撮影/資料23 孝子、松村緑と好彦の墓に参る/資料25 人のよのちりにまみれし起きふしをいたつらにつゞけ候もはつかしうて ほか

あとがき  楫野政子

著者略歴

著:奥村 和子
1943年大阪府富田林市生まれ
大阪女子大学国文科卒
「日本現代詩人会」会員・「石上露子を語る集い」会員
「大阪産経学園」「文芸すいた」講師
詩集『渡来人の里』(1984年 ポエトリーセンター)
詩集『食卓の風景』(1996年 竹林館)
詩集『めぐりあひてみし 源氏物語の女たち』(2007年 竹林館)ほか
評伝『中谷善次 ある明星派歌人の歌と生涯』(2012年 竹林館)
著:楫野 政子
1948年神戸市生まれ
神戸大学国文科卒
「石上露子を語る集い」会員・「女性史総合研究会」会員
評論『石上露子と「婦人世界」』(2015年)
論文「高等女学校国語教科書古典教材にみる近代」
   (『日本文学』日本文学協会編・刊行 2004年12月)
論文「明治期地方婦人会機関誌にみる社会活動」
   (『日本学報』大阪大学大学院文学研究科日本学研究室 2016年)

ISBN:9784860003623
出版社:竹林館
判型:4-6
ページ数:344ページ
定価:2300円(本体)
発行年月日:2017年06月
発売日:2017年06月11日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:DC
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:1FPJ