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原発時代の終焉

東京電力福島第一原発事故10年の帰結

著:小森 敦司

紙版

内容紹介

東京電力福島第一原発事故から10年。この間、目の当たりにしたのは、いわゆる「原子力村」の強大な姿だ。事故があっても、大手電力や政財界は原発を維持しようと様々な画策をしてきた。原発を支える構造は変わらず、安倍政権は民主党政権の「原発ゼロ」政策を反古にして原発推進路線に舵を切った。
 しかし本書を読めば、東電の原発事故が福島の人びとにいかに精神的、肉体的に犠牲を強いるばかりか、原発推進がすでに経済的に破綻し、国民全体の犠牲につながるものであるかが分かる。再生可能エネルギーも大きく成長し、原発依存の時代は終焉を迎えようとしている。
 そうした実態を裏付ける、小泉純一郎元首相をはじめ関係者のインタビューも収録した。(2021.2)

目次

まえがき
第1章 原発の時代と原子力村
 1 「村」は伏魔殿
 2 取り込まれたメディア
 3 「現代の幕藩体制だ」
 4 東電と経産が激突
 5 責任問わずモラル崩壊
 6 元首相「神 の御加護」
 7 熱かった「国民的議論」
 8 「資本主義曲げて」再建
 9 旧経営陣と決別したが
 10 世界で自然エネ革命
 神話の陰に─ベールに覆われた原子力部門・
第2章 問われる事故の責任
 1 「何の責任も取ってねえべ」
 2 「ふるさとの喪失」を償って
 3 「子を危険に」親たちの苦悩
 4 遠い和解「理屈抜きの対応に」
 5 大津波、警告したはずなのに
 6 「経営」を「安全」に優先させたのか?
 7 「収支が悪化する」と調書に。判決は......
 8 集団訴訟  東電の責任を認める流れ
第3章 「原発ゼロ」を求めて
 1 「終わりじゃない、これからだ」
 2 「電力業界にメスを」遺志継ぐ
 3 全国行脚 炎は絶やさない
 4 「原発ゼロ基本法」を作りたい
 5 新しい社会への「鍵」になる
 6 仲間はもう増えないのか
 7 「方向転換に五年もいらない」
 8 「国民的議論」をもう一度
 9 民意、推進側を悩ま す
 小泉純一郎元首相は何を語ったか
第4章 開示された資料と残る謎
 1 巨大津波は「想定外」だったのか? 数々の検討文書
 2 透ける防災当局と電力業界の「なれ合い」関係
 3 「被曝線量の長期目標」はどのように実質緩和されたか
第5章 原発はどこへ 学者や専門家の証言
 1 原発の本当のコストは? 経産省の「安い」試算に異議(大島堅一・龍谷大学教授)
 2 汚染土は公共事業に、汚染水は海洋放出……で大丈夫?(「FoEジャパン」 の満田夏花理事)
 3 無限の安全対策は無理? 「桁違い」原発リスクどうみる (プラント技術者・筒井哲郎氏)
 4 「この国は変わってない、ダメだ」前東海村長が抱く不安(村上達也さん)
 5 「原発推進のキーマン失った」関電金品問題(橘川武郎・国際大学教授)
第6章 電力が変わる 研究者やNGOの見方
 1 自然エネルギー革命 米国で進行中 火力・原子力は劣勢(自然エネルギー財団・ 石田雅也氏)
 2 止まらぬ石炭火力発電 「事業者はリスクに気付いて」(「気候ネットワーク」の桃井貴子・東京事務所長)
 3 再エネでカギ握る送電線 欧州で「脱・資源争奪戦」(京都大学大学院経済学研究科特任教授・内藤克彦氏)
 4 電 力自由化は誰のため? 大手に甘く再エネに厳しい日本(高橋洋・都留文科大学教授)
 5 もはや世界は「気候危機」 一〇〇年に一度の表現やめて(WWFジャパンの末吉 竹二郎会長)
あとがきにかえて

著者略歴

著:小森 敦司
1964年東京都生まれ。上智大学法学部卒業。87年、朝日新聞社入社。千葉、静岡両市局を経て、名古屋・東京の経済部に勤務。金融や通商産業省(現・経済産業省)などを担当。ロンドン特派員(2002〜2005年)の後は主にエネルギー・環境分野の企画・連載記事を担当。
著書に『資源争奪戦を超えて』(かもがわ出版)、『日本はなぜ脱原発できないのか』『「脱原発」への攻防』(いずれも平凡社新書)、共著に『失われた〈20年〉』(岩波書店)、『エコ・ウオーズ』(朝日新書)など。

ISBN:9784846121044
出版社:緑風出版
判型:4-6
ページ数:196ページ
定価:1800円(本体)
発行年月日:2021年02月
発売日:2021年02月26日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:KN
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:THK