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重い扉の向こうに

歴史和解と戦前回帰の相克

著:纐纈 厚

紙版

内容紹介

 私たちの社会も国家も、戦前・戦中の侵略戦争や植民地支配の責任を認めず、謝罪どころか、きわめてご都合主義的な解釈による歴史修正主義が跋扈し、保守政党による戦前回帰への動きは強まっている。議論の空間は閉塞し、私たちの眼前には「重い扉」が行く手を阻んでいる。どうすればこの「重い扉」を押し倒し、未来を築けるのか?
 本書は、日中戦争史と戦争責任、天皇制と戦争責任、朝鮮の植民地支配と従軍慰安婦、変容する自衛隊と戦前回帰志向の安倍政権など、現代日本の争点を分析し、どうすればいいのかを考える。
 

目次

まえがき
第Ⅰ部 蘇る戦争の記憶と現実
 第一章 終わらない戦争を辿る
  はじめに
  1 一つの戦争が次の戦争を用意する
  2 日中戦争をめぐる日中両国の埋めがたい乖離
  3 アジア太平洋戦争とは何だったのか
  4 戦争・植民地支配責任不在性の原因
  5 敗戦を〝終戦〟と読み替える
 第二章 戦争責任問題から天皇制を問う
  はじめに
  1 沖縄・朝鮮の位置と天皇制
  2 植民地支配と天皇制
  3 昭和天皇の戦争責任と受け継がれる「聖断論」
  4 戦争観の形成と天皇制
  5 あらためて戦争責任を問う
第Ⅱ部 未決の植民地問題
 第三章 朝鮮半島問題と植民地責任の狭間で
  はじめに
  1 朝鮮分断の歴史を追う
  2 天皇制の物理的基盤としての植民地
  3 急変する朝鮮半島情勢と自衛隊の動き
  4 日米の対朝鮮政策の本質と限界性
 第四章 従軍慰安婦問題の何が問われているのか
  はじめに 関釜裁判の判決文から
  1 国際性と無時効性をめぐって
  2 歴史認識の不在性と植民地支配責任
  3 植民地支配の歴史をなぜ忘れるのか
  4 植民地近代化論を超えるために
第Ⅲ部 遠のく平和国家日本
 第五章 変容する自衛隊の危うさ
  はじめに
  1 台頭する軍事主義
  2 戦略不在の日本外交のなかで
  3 転換期迎えた日本の安全保障政策
  4 自衛隊の現状はどうなっているのか
  5 許されない政治介入
第六章 戦前回帰志向の果てに
 はじめに
  1 安倍政権の本質を問う
  2 共謀罪と集団的自衛権行使容認とは
  3 日米同盟は国家テロリズム同盟ではないのか
  4 対米従属から対米隷属へ
  5 自衛隊加憲で骨抜きされる文民統制
  5 強まる監視社会の向こうには
  6 私たちの拠り所は何か
付録 纐纈厚の仕事
 総力戦体制研究と政軍関係史研究
 個別研究と歴史認識論
 文民統制・自衛隊・有事法制・安倍政権
 海外での出版
あとがき

著者略歴

著:纐纈 厚
1951年岐阜県生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。博士(政治学、明治大学)。現在、明治大学国際武器移転史研究所客員研究員。前明治大学特任教授、元山口大学理事・副学長。専門は、日本近現代政治軍事史・安全保障論。
著書に『日本降伏』(日本評論社)、『侵略戦争』(筑摩書房・新書)、『日本海軍の終戦工作』(中央公論社・新書)、『田中義一 総力戦国家の先導者』(芙蓉書房)、『日本政治思想史研究の諸相』(明治大学出版会)、『戦争と敗北』(新日本出版社)『崩れゆく文民統制』『重い扉の向こうに』(緑風出版)など多数。

ISBN:9784846119225
出版社:緑風出版
判型:4-6
ページ数:324ページ
定価:2500円(本体)
発行年月日:2020年01月
発売日:2020年01月19日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:NHF
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:1FPJ