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チェルノブイリの犯罪 下

著:ウラディーミル・チェルトコフ
他訳:中尾 和美
他訳:コリン・コバヤシ

紙版

内容紹介

国際原子力機関(IAEA)は、未だに低線量内部被ばくの人体に対する影響を認めない。このため、ベラルーシの物理学者ヴァシーリ・ネステレンコ率いるベルラド研究所は、広大な汚染地域住民、とりわけ子どもの体内被ばく量の計測と放射性物質の体外排出効果のあるペクチンの投与を通じて、放射能汚染に苦しむ人々に救いの手を差し伸べるが、その活動は政府によって厳しく弾圧され、解体されようとする。ゴメリ医科大学学長で解剖病理学者のバンダジェフスキーは、食物を通して体内に取り込まれた少量の放射性セシウムが身体の器官に及ぼす発病作用を明らかにしたため、汚職事件をでっち上げられ軍事裁判に掛けられる。
さらに2001年のキエフ国際会議では、WHOやIAEAなどの国際機関と御用学者、独立系の医師、科学者たちの間で熾烈な論争が交わされるものの、チェルノブイリの放射能被害は闇へと葬られる。
下巻は、自らの意志に反して反逆者とならざるを得なかったこの2人の科学者らの闘い及び国際原子力ロビーによる欺瞞を軸に、森と湖の国ベラルーシの放射能汚染の恐るべき実態を明らかにする。

目次

第五部 ヴァシーリ・ネステレンコの村々
第一章 汚染された村を間近から見る
一 「基準値」という幻想
二 ネステレンコの五つの村
第二章 スコロドゥノイェ
一 魚好きの父親
二 キノコ売りの女性
三 消えた被ばく:看護師の息子
四 貧しい家族(1): 若い母親グリッツ
五 貧しい家族(2):エルマコフ家
六 スコロドゥノイェ最年長の老婦人
第三章 ローザ・ルクセンブルク
一 身動きができない校長の苦悩
二 何も知らずに牛を飼う女性
第四章オルマニー
一 カチャーラ村のリョーニア
二 オルマニー村の測定所で生き生きと働く測定士パシャ
三 測定士パシャの仕事ぶり
四 やめられない習慣
五 誰も注意しない
六 誰も教えてくれない
七 リョーニアの母親
八 リョーニアの父親とブルーベリー
第五章 スロボドカ
第六章 ヴァラフスクでの早朝
第七章 ソージュ川の東方
第八章 スタラヤ・カメンカ
一 見捨てられた聖水の地
二 スタラヤ・カメンカ村の役所
三 大人の被ばく量を測定する
四 ひと月に一日だけ牛の世話をするマイア・サフチェンコ
五 マルーシィアと息子
六 仲のいい七十代の女性二人組
七 青いスカーフを巻いた農婦
第九章 ガイシン
第一〇章 ガリーナ・バンダジェフスカヤの初快挙
第一一章 クリャピン
一 ボリソフ家の人々
二 レベデンコ家の人々
第一二章 ヴォリンツィー
一 ソボレフ・クレスティンスキー家の人々
二 ネクリッチ家の祖父母
三 コンスタンチノーフ家の人々
四 ロマネンコ家の人々
五 ティトフ家の人々
六 サゾノフ家の人々
第一三章 ゴメリの病院の子供たち
一 心臓病の子供たち
二 若い母親たち
第六部 耳を貸さない公的組織
第一章 国連に宛てた二通の手紙
第二章 キエフ会議
一 中嶋宏博士、無力を告白する
二 全体会議での国連高官の顔ぶれ
三 記者会見
四 会議場での発表
第三章 三人の賢人・336
第七部 バンダジェフスキー事件――不正が生む冤罪
第一章 スターリン主義的な裁判
一 ベラルーシ司法という『どん底』
二 愚にも付かない裁判
三 バンダジェフスキー教授の最終意見陳述
第二章 刑務所の衝撃
第三章 地獄くだり
一 刑務所社会への入門
二 仕掛けられた罠
三 失墜
四 悪化する健康状態
五 バンダジェフスキーに対するオカルト的心理操作
六 ユーリ・バンダジェフスキーの変化
七 大統領恩赦という挑発
八 愚弄
九 ユーリ・バンダジェフスキーの内なる解放
十 大統領専属の囚人
十一 上からの命令で・466
第四章 市民社会
一 いかにして支援の輪は広がっていったか
二 事実上の亡命
第五章 追記 何をすべきか?
一 ジュネーヴWHO本部前での見張り番
二 放射線防護に関する科学者と市民のフォーラム
三 バンダジェフスキーのヨーロッパ遍歴
四 「エコロジーと健康」センター
五 ベルラド研究所が生き延びるためには
六 ニューヨーク科学アカデミー ――独立した立場から科学を探求する三
人の闘士

付録 WHO事務局長、被ばく者擁護団体を迎える
「インディペンデントWHO」からの手紙
ヴラディーミル・チェルトコフからの手紙
インディペンデントWHOの掲げる論拠と証拠
ミシェル・フェルネ博士による会議報告の抜粋
用語解説
人名索引(下巻)
地名索引(下巻)
組織名略称
監訳者あとがき 中尾和美
監訳者あとがき 新居朋子

著者略歴

著:ウラディーミル・チェルトコフ
ジャーナリスト、ドキュメンタリー作家。パリで勉学した後、60年代初頭にイタリアに定住。その後、30年以上、イタリア放送協会(RAI)、そしてルガーノ・スイス・イタリア放送局と仕事をする。70本近いドキュメンタリー番組を制作し、社会、政治、経済分野のテーマを取り上げ、とりわけ権力構造を分析的に表現した。ペレストロイカの到来と共に、ロシア語を話すチェルトコフは旧ソ連圏で12回ほど仕事をする。ロシア、アルメニア、グルジア、アゼルバイジャンなど。1990年から、チェルノブイリの汚染地帯に定期的に行くことになる。そこで6本のドキュメンタリーを制作した。
他訳:中尾 和美
東京生まれ。2000年東京外国語大学博士課程修了。博士(学術)。東京外国語大学非常勤講師。専門は、言語学、フランス語学。著書に『フランス語を探る』(共著)、三修社、2005年。『フランス語をとらえる』(共著)、三修社、2013年。『フランス語学の最前線 3』(共著)、ひつじ書房、2015年、など。
他訳:コリン・コバヤシ
1949年東京生まれ。1970年以来フランス在住。著述家、ジャーナリスト、美術・映像作家。2011年11月、ヴラディーミル・チェルトコフ監督作品『核論争』(邦題:『真実はどこに?』)の和文字幕作成に参加。2012年5月ジュネーヴ「市民と科学者の放射線防護のためのフォーラム」参加。主著に『ゲランドの塩物語』(岩波新書、2001年)。編著『市民のアソシエーション』(太田出版、2003年)。『国際原子力ロビーの犯罪』(以文社、2013年)など。

ISBN:9784846115135
出版社:緑風出版
判型:4-6
ページ数:572ページ
定価:3700円(本体)
発行年月日:2015年09月
発売日:2015年09月01日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JKS