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破綻したプルトニウム利用

政策転換への提言

著:原子力資料情報室
著:原水禁

紙版

内容紹介

日本のエネルギー政策は、原子力発電を中心としたエネルギー政策であることに変更はない。そして、将来は原発の使用済み燃料から再処理工場でプルトニウムを抽出し高速増殖炉で燃料として使用する「核燃料サイクルシステム」を構築するとしている。「高速増殖炉もんじゅ」はナトリウム漏出事故以来15 年稼働せずにいたものを強引に動かしたものの実用化にはほど遠く、再処理工場はガラス固化体製造過程のトラブルで操業のめどすら立っていない。
本書は、多くの科学者が疑問を投げかけている「核燃料サイクルシステム」が、すでに破綻しており、いかに危険で莫大なムダであるかを、詳細なデータと科学的根拠に基づいて分析し、このシステムを無理に動かそうとする政府の政策の転換を提言する。

目次

まえがき 藤本泰成

Ⅰ 核燃料サイクルとはなにか 伴英幸

Ⅱ 動けない六ヶ所再処理工場 澤井正子
1 再処理工場とは何か
六ヶ所再処理工場建設計画の経過/日常的な放射能放出
原発一年分の放射能を一日で出す再処理工場/米に炭素・一四、海藻にプルトニウム
被曝量は〇・〇二二ミリシーベルト?/被曝量は仮定と推定の結果/四つの線量評価
環境の汚染が始まっている

2 海外の再処理工場の実態
北西大西洋の放射能汚染/セラフィールド再処理工場(イギリス)/ガードナー論文
COREの報告/ラ・アーグ再処理工場(フランス)/ACROの測定活動

3 六ヶ所再処理工場の現状
高レベル放射性廃液/高レベル廃液一五〇リットルが漏洩/再処理は放射性廃棄物を減らす?
すでに放射性廃棄物の増加が始まった/アクティブ試験であふれる廃棄物
使いみちのない回収ウラン/余剰プルトニウム生産工場

4 再処理工場直下に活断層が存在
大陸棚外縁断層は活断層

[再処理語録]

Ⅲ 高速増殖炉に未来なし 伴英幸
はじめに/日本の高速増殖炉開発/高速増殖炉懇談会/設備としての歴史
「もんじゅ」の仕組みとナトリウム漏洩火災事故/ビデオ隠し/動燃改組と実用化戦略調査研究
原子力立国計画と核燃料サイクル/高速増殖炉の実用化はあるか

[「もんじゅ」語録]

Ⅳ プルサーマルがもたらす無用の危険 上澤千尋
1 はじめに

2 プルトニウムという物質
核兵器材料/プルトニウムの毒性

3 プルサーマルの安全上の問題
MOX燃料の物理的・化学的な問題点/MOX燃料の核的特性に関する問題点
MOX燃料使用にともなう放射線の危険性/MOX燃料の軽水炉での使用の安全上の問題点
プルサーマルで大事故が起こったら

[プルサーマル語録]

Ⅴ 誰もが損する核燃料サイクル 西尾漠
1 再処理工場の経済性
一九兆円の請求書/六ヶ所再処理工場の総費用/コストはどんどんふくらむ
再処理単価は五億円?/コスト試算隠し/動かし続けることは不可能/すべてのツケは地元に

2 高速増殖炉の経済性
ふくれあがる建設費/ウランの有効利用になるか/増殖はできるのか
第二の「むつ」/高速増殖炉実用化の経済性

3 プルサーマルの経済性
MOX燃料の値段/六ヶ所MOX燃料加工工場/影響なしの実態

4 結論

Ⅵ 世界は脱プルトニウムに向かう 西尾漠
1 再処理
各国の再処理事情/先進再処理のゆくえ/建設中止の歴史

2 高速増殖炉
米欧の高速炉開発/旧ソ連の高速炉開発/アジアの高速炉開発

3 プルサーマル
MOX燃料製造と再処理

4 プルトニウム処分
イギリスの処分オプション

Ⅶ 核燃料サイクル政策の転換を提言する 原子力資料情報室/原水爆禁止日本国民会議
「原子力政策大綱」の改定/放射性廃棄物は埋設から管理へ/安全規制機関の独立
情報公開・住民参加の保障

著者略歴

著:原子力資料情報室
1975年設立。産業界とは独立な立場から、原子力に関する資料や情報を広く集め、市民活動に役立つように提供している。99年9月より特定非営利活動法人。2010年5月より認定特定非営利活動法人。
著:原水禁
1965年結成。日本でもっとも規模の大きな反核、平和運動団体。「核と人類は共存できない」として、反戦・反核・脱原発・ヒバクシャへの援護・連帯を課題として国内外で運動を展開している。特に、毎年8月に広島と長崎で原水爆禁止世界大会を開催している。

ISBN:9784846110086
出版社:緑風出版
判型:4-6
ページ数:224ページ
定価:1700円(本体)
発行年月日:2010年07月
発売日:2010年07月01日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:KN
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:THK