菊池寛現代通俗小説事典
監:片山 宏行
監:山口 政幸
他編:若松 伸哉
紙版
内容紹介
本書は、「真珠夫人」から始まった菊池寛の「現代通俗小説」と呼ばれる大正から昭和戦前にかけて発表された長編小説46作品を理解するために、必要な情報をまとめたものです。それぞれの作品の最初に初出情報と初版・初刊本、舞台化・映画化状況を記した「書誌」示した上で「登場人物相関図」「あらすじ」「キーワード」「解説」の項目を記し「ビジュアル資料」として作品理解を助ける当時の貴重な写真とその解説を掲げることで「多角的でわかりやすく」をモットーに編集しました。
「第二の接吻」「東京行進曲」「貞操問答」など、これらの作品のすべては掲載された新聞・雑誌は販売部数を大幅に伸ばしました。さらには映画や新派劇の原作となり、多くの観衆が劇場に足を運びました。メディアミックスの最も早い事例ともいわれ、当時の大衆の歓心を買い、菊池寛が文壇の大御所といわれる所以となりました。
菊池寛が「現代通俗小説」の舞台として選んだのは、当時の大衆があこがれる新奇で都会的な風俗です。具体的には、自動車・音楽・旅行・スポーツ・飛行機・料理店や、新しく出来上がったランドマークなどが中心です。そして物語は、若い男女の恋愛を軸として執筆されます。そして、二人を親族不和・社会的格差を伴う社会的状況の元において、友情・信頼・裏切り・嫉妬・復讐・懺悔・のぞき・秘密露見・妊娠・出産・別離・などを絡めて、次号が待ち遠しく思うようなストーリーで進められます。これがその時代の読者・観客を熱狂させました。本書は、「読めば必ず為になり、面白い」戦前の日本文化研究の最良の素材として必要不可欠な菊池寛の「現代通俗小説」の手軽なガイドブックであるとともに、戦前のモダン文化研究書に必備の書です。