日本古代の親子関係
孝養・相続・追善
著:岩田 真由子
内容紹介
古代・中世前期の親子の精神面を読み解き、王権の変質過程、「家」観念の成立、土地の権利意識の変遷など重要な論点を提示した、新たな王権・家族史研究
●親の世話は誰がするのか。親の供養(法事)は誰が、いつまで、なぜ行うのか
僧侶、貴族、庶民など、さまざまな階層で行われた親の扶養・追善行為の検討から、古代社会を探る。浄土教に触発され、親は子に追善を強く望み財産を託し、子は追慕の情ではなく義務として親の追善を負うようになる過程を描く。また中世社会における財産相続の実態を検討し、土地の権利意識の変遷と親子意識の一側面を明らかに。
●親と子の関係が天皇家(王権)にどのような影響を与えたのか
天皇家で行われる10~12世紀の元服儀を検討し、9世紀の淳和・仁明朝を画期として天皇家が血縁を意識した集団へと変遷したこと、さらに制度化されない母后の権力に変遷があったことを明らかにする。書下ろしコラム4本も収録。
目次
序章 本書の課題と構成
第一部 孝養と服喪
第一章 老人扶養・介護と家族の役割―平安後期を中心に―
第二章 八・九世紀の侍・侍解と孝養
第三章 日本古代の服解―官人の服喪の一側面―
〔コラム〕律令官人の季禄に対する意識―服解する官人の給与支給の有無その①―
第二部 追善と財産相続
第四章 古代の追善と親子意識
第五章 平安時代の悔返―十一世紀末から十二世紀前半を中心に―
第六章 死骸敵対・父子敵対の発生―中世前期の親子意識―
〔コラム〕禄文奏と官人の季禄支給―服解する官人の給与支給の有無その②―
第三部 王権と親子関係$第七章 追善からみた親子関係と古代王権の変質
第八章 元服の儀からみた親子意識と王権の変質―淳和・仁明朝の画期―
〔コラム〕対偶婚説に対する疑問①―『万葉集』挽歌からみたる婚姻関係―
第九章 宇多・醍醐朝における天皇家親子意識
第十章 元服の儀からみた母后の役割とその変質
第十一章 平安時代前期における親王出家とその処遇―高岳親王出家の影響―
〔コラム〕対偶婚説に対する疑問②―『万葉集』人言からみたる婚姻関係―
終章 日本古代親子関係の特質
索引(人名・事項・史料名・研究者名)