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日本高麗関係史

著:近藤 剛

紙版

内容紹介

①モンゴル襲来以前に注目し、日本と高麗の関係を解明したはじめての研究
 これまで個別に論じられてきた日本と高麗(918-1392)の関係について、とくに等閑視されてきたモンゴル襲来以前に注目したはじめての本格的な総合的研究。日本史・朝鮮史のいずれからも重要なテーマであるにもかかわらず、総体として取り組んだ研究はほとんどなく、本書がその嚆矢となる。

②日本と高麗それぞれの自国史研究に貢献
 日本の対馬と高麗の南東部に注目し、境界領域における人・物・情報の移動を明らかに。交流の背景にある高麗側の事情を究明することを重視し、韓国人研究者とは異なる方法・視角から行う。その成果は、両国の関係史のみならず、日本・高麗の自国史研究にも大きく貢献し、新知見を示す。

③高麗の研究と史料を活用した朝鮮古文書学へのアプローチ
 従来の研究が日本側からの立場で論じられていた現状を打破し、高麗側の視点も取り入れた双方向的な研究を行う。外交文書を中心とした文献史料のみならず、高麗国内の金石文等を対象とし、写本・原石にまであたり検証。今後の朝鮮古文書学の研究にも大きく寄与する。

④高麗を取り巻く東アジア史から俯瞰
 日本と高麗との関係を、高麗の外交チャンネルの一つとして相対化する視点で考察。高麗の国際関係について、高麗と宋、高麗と金といった個別的な関係史研究が主流であったが、本書では日本と高麗の双方の視点から東アジア史を展望するという広い視野から明らかに。高麗の対契丹(遼)・金関係を丹念に検討し、高麗・日本交流の意義について考察。

⑤前近代を総括した先駆的な研究
 両国を双方向的に理解しようとする「海域アジア史」「グローバル・ヒストリー」といった研究視角を視野に。今後の研究の基礎となる先駆的なもので、前近代のみならず、現代までを含めた日朝・日韓関係史の総合的理解へ向けた重要な土台となる。

目次

序章 日本高麗関係史研究の現状と本書の目的
はじめに
日本・高麗関係史略述
日本・高麗関係史研究の動向と到達点
これまでの研究の問題点と本書の分析視角
本書の構成
むすび

第1部 高麗の外交文書および制度と対外関係
第一章 「大日本国大宰府宛高麗国礼賓省牒状」に
     みえる高麗の対日本認識
はじめに
請医一件の概要
請医一件に関する問題点
「礼賓省牒状」の署名からみた高麗の対日姿勢
請医の事情と文宗の対日政策
むすび

第二章「日本国対馬島宛高麗国金州防禦使牒状」の
   古文書学的検討と「廉察使」
はじめに
「金州防禦使牒状」の古文書学的検討
「金州防禦使牒状」における「廉察使」と先行研究
高麗時代の「廉察使」史料と按察使
按察使と廉察使
「金州防禦使牒状」にみえる「廉察使」
むすび

第三章「李文鐸墓誌」を通じてみた
   十二世紀半ばの高麗・金関係
はじめに
「李文鐸墓誌」の研究
「李文鐸墓誌」における都兵馬録事在任記事の評価
「李文鐸墓誌」にみえる対金関係記事の検討
むすび

第四章 高麗における対日本外交管理制度
はじめに
高麗渡航日本人の滞在地
対日本外交担当官府
対日本外交案件の伝達過程
対日本外交案件の審議過程
対日本外交文書の作成過程―返牒の場合―
対日本外交担当官府の推移
むすび

〔コラム〕「国書」および「外交」との向き合い方

第2部  日本・高麗間の「進奉船」
第一章 十二世紀前後における対馬島と日本・高麗関係
はじめに
『大槐秘抄』対外関係記事の校訂
『大槐秘抄』にみえる「制」に関する先行研究
これまでの『大槐秘抄』にみえる「制」の理解に対する疑問
十一世紀末~十二世紀における日本・高麗間通交について
『大槐秘抄』にみえる「制」の実態に関する私見
むすび

第二章 十三世紀前後における対馬島と日本・高麗関係
はじめに
『勘仲記』弘安十年七月十三日条所載「対馬守源光経解」
「対馬守源光経解」第一箇条について
「対馬守源光経解」第二箇条について
「対馬守源光経解」第三箇条について
元久年間における「進奉」について
むすび

第三章 嘉禄三年来日の高麗使について
    ―「嘉禄三年高麗国牒状写断簡及按文」の検討―
はじめに
翻 刻
「嘉禄三年高麗国牒状写断簡及按文」と『吾妻鏡』所載「日本国惣官大宰府宛高麗国全羅州道按察使牒状」
内容の検討
読み下し文と逐語訳
「嘉禄三年高麗国牒状写断簡及按文」の史料的性格と『吾妻鏡』の編纂姿勢
むすび

第四章 嘉禄・安貞期(高麗高宗代)の
    日本・高麗交渉と「進奉定約」
はじめに
貞応~嘉禄期(高宗十年代)の倭寇史料
「全羅州道按察使牒状」の検討
嘉禄・安貞期の倭寇禁圧交渉
高宗代前期の高麗情勢と高麗の日本認識
むすび

〔コラム〕比較武人政権論の現在

終章 モンゴル襲来以前の日本・高麗関係史の意義
はじめに
「進奉定約」後の進奉船の推移
本書で得られた成果
むすび―モンゴル襲来以前の日本・高麗関係史の意義―

あとがき
初出一覧
索引
参考文献
参考史料

著者略歴

著:近藤 剛
近藤 剛(こんどうつよし)
1980年東京都生まれ。中央大学大学院文学研究科日本史学専攻博士後期課程修了。博士(史学)。この間に大韓民国高麗大学校への交換留学を行う。中央大学附属中学校・高等学校非常勤講師、中央大学文学部兼任講師、中央大学人文科学研究所客員研究員を経て、現在、開成中学校・高等学校社会科(地歴公民科)教諭。
〔主な著作〕
『古代日本と興亡の東アジア』(共著、竹林舎、2018年)
『高麗・宋元と日本(石井正敏著作集3)』(共編、勉誠出版、2017年)
『前近代の日本と東アジア―石井正敏の歴史学―』(共著、勉誠出版、2017年)
『訳註 日本古代の外交文書』(共著、八木書店、2014年)
『梁職貢図と東部ユーラシア世界』(共著〈翻訳〉、勉誠出版、2014年)
『日本の対外関係 3 通交・通商圏の拡大』(共著、吉川弘文館、2010年)
『동아시아 속의 한일관계사 下』(共著、제이앤씨〈大韓民国〉、2010年)
『対外関係史辞典』(分担執筆、吉川弘文館、2009年)

ISBN:9784840622332
出版社:八木書店
判型:A5
ページ数:464ページ
定価:9800円(本体)
発行年月日:2019年10月
発売日:2019年11月01日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:NHF
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:1FPJ