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転びイルマン 不干ハビアン

慶長のジャーナリスト

著:小島 幸枝

紙版

内容紹介

いったいかれの人生にどんなことが起きたというのか。彼の行動を支えていたのは何であったろうか。一九歳で禅林をあとにして、キリスト教の洗礼を受け、四〇代で修道女を同伴しての逃避行。その晩年は迫害者である徳川幕府の手先となって、キリスト教会を内部告発する、もと修道士の屈折した精神遍歴。一七世紀以来本名も出自も、禅僧名さえも亡失され、キリスト教を棄てたあとまで、クリスチャン・ネーム「ハビアン」としか名前の残存しない男の右往左往の足跡。いかにも日本民族共同体内の知識人らしいブーメラン現象の人生を、完璧に自らの居直りで描き切った典型像。日本文化と西洋文化の嵐の中を駆け抜けた「時代の子」の活躍、そしてかれを襲った苦悩と慟哭、これがかれだけの特殊な事例であったのか、それとも日本人全体に共通するものだろうか。彼の心性と時代環境を、いわゆる「日本教」の立場からでなく、事実求是の精神を――幸いに、かれはキリスト教以外にあって三冊の編著書『ヘイケの物語』『妙貞問答』『破提宇子』を残した。この中にその謎尾徳鍵があると私は見ている――忠実に追ってみることによって、日本及び日本人の深淵ち実像に迫ってみようと思う。(序章より抜粋)

目次

第一部 『ヘイケの物語』
  一 ワリニヤノ上陸
  二 信長
  三 高槻のセミナリヨ
  四 臼杵の修練院
  五 加津佐会議
  六 『ヘイケの物語』

第二部 都の幻想
  一 マルチンス司教
  二 セルケイラ司教
  三 ミヤコのハビアン
  四 神父スピノラ
  五 『妙貞問答』
  六 林道春との論争

第三部 奇瑞見ず候
  一 逃避行
  二 三脚五徳
  三 伴天連追放令
  四 転びバテレン沢野忠庵
  五 尾張の花正にて
  六 『破提宇子』――奇瑞見ず候――

あとがき
参考文献

著者略歴

著:小島 幸枝
福井大学卒業・上智大学大学院修了。
東海学園女子短期大学助教授、獨協大学教授を経る。文学博士
主要編著書
『どちりなきりしたん総索引』(1971年・風間書房)
『耶蘇会板落葉集総索引』(1978年・笠間書院)
『コリャード自筆 西日辞書―複製・翻刻・索引およ解説』(共著・1976年・臨川書店)
『日本イエズス会版キリシタン要理―その翻案および翻訳の実態』(1983年・岩波書店)
『キリシタン版「スピリツアル修行」の研究』(2008・笠間書院)
『キリシタン文献の国語学的研究』(1994年・武蔵野書院)
『ぎやどぺかとる筆写本の国語学的研究』(1997年・風間書房)
『コンテムツスムンヂの研究 研究篇』(2009年・武蔵野書院)
『コンテムツスムンヂの研究 資料篇』(2009年・武蔵野書院

ISBN:9784838604364
出版社:武蔵野書院
判型:A5
ページ数:348ページ
定価:8000円(本体)
発行年月日:2012年05月
発売日:2012年05月12日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:QRMB