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北大文学研究院ライブラリ

かなしむ人間

人文学で問う生き方

編著:鈴木 幸人

紙版

内容紹介

「かなしみ」(悲、哀、愛、愁、歎、そして涙)は、古今東西、人間と社会に否応なく是非なく存在してきました。だからこそ、かなしみと共にあることが、じつは人間の根源なのかもしれない…。人文学の視点と方法論によって、かなしみの諸相を問い、探ります。

目次

はしがき

第一章 仏教における「悲」
    ──凡夫の「悲(かなしみ)」とブッダの「悲(あわれみ)」………林寺正俊
 はじめに
 一 愛別離苦の悲しみ
 二 わが子を亡くしたキサー・ゴータミーの悲しみ
 三 釈尊入滅時の人々の悲しみ
 四 悲しみを経験しない聖者の理想
 五 人々に対する釈尊の「悲(あわれみ)」
 六 仏教における「悲」とその実践
 七 「悲」と「大悲」
 おわりに

第二章 母と子の悲しみ
    ──聖母マリアとイエス・キリストの図像学………谷古宇 尚
 一 神の母マリアと人の子イエス
 二 「聖母子像」の起源
 三 イコン(聖像画)の表情
 四 聖母の悲しみ
 おわりに──母マリアの喜び

第三章 かなしむ身体
    ──ジャン=リュック・ゴダール『女と男のいる舗道』………阿部嘉昭
 一 ゴダールが成し遂げたもの
 二 顔が見えないということ
 三 売春婦は都市を迷宮化する
 四 吹き替えと売春の映画的関係

第四章 紙の原料生産地で何が起きているのか
    ──環境ガバナンスをめぐる「隠れた物語」を掘り起こす………笹岡正俊
 はじめに
 一 インドネシアの産業造林が引き起こしてきた問題
 二 紙原料・紙製品の「責任ある」生産・消費にむけたガバナンスの形成
 三 複雑化するガバナンスとその帰結
 四 土地紛争を生きる人びと
 おわりに──「隠れた物語」の掘り起こし

第五章 溥儀の悲憤──「宣統十六年」の紫禁城………吉開将人
 はじめに
 一 研究上の諸問題
 二 溥儀の悲憤
 三 「優待条件」をめぐる諸問題
 四 優待条件体制終焉に至る道
 五 問題の発見──修正優待条件・善後条例による清室財産の整理構想とその失敗
 六 問題の検討──金梁による上奏の再検討
 おわりに

第六章 珠光の嘆き
    ──「心の一紙」を読み解き、「和漢の境をまぎらかす」を考え直す………橋本 雄
 一 本章のもくろみ
 二 〈和漢論〉の構図
 三 茶道史の〈語り〉を相対化する
 四 古市澄胤とその周辺
 五 珠光は和物を好んだか?
 六 「和漢のさかいをまぎらかす」再考
 七 「心の師とハなれ、心を師とせざれ」
 八 維摩信仰と珠光の教えと

第七章 愁歎の人形浄瑠璃………冨田康之
 はじめに
 一 義太夫節の愁歎について
 二 愁歎の表現
 三 死に行く者の嘆き(心中直前の述懐)
 四 残された者の嘆き
 おわりに

第八章「晋の予譲が例を引き」(しんのよじょうがためしをひき)
    ──予譲の説話と絵馬をめぐって………鈴木幸人
 はじめに
 一 「予譲」を引く浄瑠璃・歌舞伎
 二 予譲の説話──「士は己を知る者の為に死す」
 三 予譲を描いた絵画──「予譲刺衣図」絵馬
 四 予譲説話の展開──落語・小説での変容
 五 まとめに代えて──晋の予譲の例からの絵画論へ向けて


あとがき
執筆者紹介

ISBN:9784832934047
出版社:北海道大学出版会
判型:4-6
ページ数:296ページ
価格:2600円(本体)
発行年月日:2019年08月
発売日:2019年08月15日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:VSP