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宗教なき時代を生きるために

完全版

オウム事件と「生きる意味」

著:森岡 正博

紙版

内容紹介

衝撃の初版から23年。オウム事件や尾崎豊の死は何だったのか。生きる意味を問うたロングセラーの名著に、書下しを増補した完全版。

「この完全版の刊行によって、事件当時のことを知らない読者の方々にも、あらためて本書を手に取っていただけるようになった。きっと新たな発見があるはずである。オウム真理教事件とは何だったのか、この時代を生きなければならない私たちとは何者なのかという問いが、ふたたび生々しく立ち上がってくることだろう。
また、世界的な「テロリズム」の流れの中にオウム真理教を位置づけて考えることも可能である。神の名の下に無差別殺人をしている彼らの出発点にも、きっと「生きる意味」の探求があったに違いないからだ。
今日、宗教テロリズムとひとくくりにされている彼らの行動を内側から理解するためのヒントとして、本書を読むこともできるのではないか。
(中略)
初版の「あとがき」で述べたように、本書は私の「生命学」シリーズの第一巻となった。生命学とは、対象を研究するときに、研究している自分自身をけっして棚に上げない知の方法のことである。研究対象に自分自身もまた巻き込まれていること、自分自身も何かの意味で当事者であることから目を背けず、その当事者性それ自体を研究の対象にしていくことである。そして自分が実際はどうであったのかを自分自身に向けて語ってみるという告白方法が用いられる。そして読者に向かって、あなたはどうだったのかを自分自身に向かって問うてほしいと呼びかける。節度ある距離を保ったうえで行なわれるこのようなコミュニケーションを、新たな学の方法として提唱したのが生命学である。本書では、ぎこちないやり方であるものの、その方法を実際に試してみたのだった。」
本書「二〇一九年のあとがき」より

目次

完全版へのまえがき
はじめに
第一章 宗教なき時代を生きるために
1 「信仰」に対する違和感
2 生と死の新しい考え方
3 科学者の卵たちはなぜオウムへ行ったのか?
4 科学への失望
5 自然科学では扱えないもの
6 新々宗教の「科学者」勧誘パターン
7 私が宗教を信仰できない理由
8 「宗教性」の問題
9 あなたへのメッセージ
第二章 神秘体験とは何か
1 神秘体験が意味するもの
2 「私が変われば世界が変わる」という考え方
3 悟りへのあこがれ
4 力への欲望
5 神秘体験と信仰の狭間で
6 私の神秘体験
7 「気功」の共同体での体験
8 閉じた世界で働く心理
9 「我々だけが正しい」という甘い蜜
10 敵は自分の内側にいる
11 煩悩の哲学
第三章 癒しと救済の罠
1 オウム真理教と尾崎豊
2 宗教へ向かう尾崎の音楽
3 ほんとうの自分を求めて
4 癒しとしてのロックンロール
5 尾崎を殺したのはだれか?
6 責任転嫁の共同体
第四章 私が私であるための勇気
1 効かない処方箋
2 宗教以外の方法
3 宗教と現実のズレ
4 こちら側の〈目隠し構造〉
5 フェミニズムが突きつけるもの
6 オウム事件の本当の意味
7 「謎」に向かって自分を開く
あとがき
二〇一九年のあとがき

著者略歴

著:森岡 正博
1958年,高知県生まれ。東京大学文学部卒。東京大学助手,国際日 本文化研究センター助手,大阪府立大学教授を経て,現在,早稲田大学人間科学部教授。博士(人間科学)。早稲田大学では現代哲学,生命倫理学,研究倫理などを教えている。著書に『増補決定版脳死の人』(法藏館)『無痛文明論』(トランスビュー)『感じない男』(ちくま新書)『まんが哲学入門』(講談社現代新書)などがある。

ISBN:9784831857064
出版社:法藏館
判型:4-6
ページ数:248ページ
定価:2200円(本体)
発行年月日:2019年04月
発売日:2019年04月05日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:QR