はじめに
第1章 タンゴのコラソン(心)とは何だろう――極私的アルゼンチン・タンゴ論
1 昨今に見るタンゴブームの軽さ/2 タンゴはセンティミエント(情感)なのだ/3 カルロス・ガビートの思い/4 ダニエル・バレンボイムの言葉/5 「どんな状況であろうと生きていこう」/6 ストラヴィンスキーとピアソラ/7 タンゴは生きる力の源泉だ!
第2章 タンゴは何故に過ぎし日を想うのか――大好きなタンゴの詩から私が読み取ったもの
1 タンゴは人と人との関係性のドラマだ/2 タンゴ、孤独な男の涙/3 人間的な、より人間的なタンゴ世界/4 郷愁(ノスタルヒアス)がタンゴを生み、心を癒す/5 タンゴ、望郷への魂の叫び
第3章 タンゴの心は孤独を癒やす静寂にある――映画『タンゴ・レッスン』から見えてきたもの
根無し草として浮遊する現代人/パブロは私(たち)である!/9.11後のニューヨーク 3.11後の日本人/「苦しめばタンゴがわかる」/タンゴの心は静けさの中にある。
第4章 タンゴの真髄は回想にある
もう一つのタンゴの都/再開されたレココン/タンゴは老人の音楽である!?/ロシータ・キロガと藤沢嵐子/タンゴの真髄は回想にあり/懐かしい店
[コラム]タンゴの豊かさと永遠性――『ラ・クンパルシータ全集』を聴いて
第5章 日本に根を下ろした『ブエノスアイレスのマリア』――2014.7.15板橋区立文化会館大ホールでの公演を聴く
難解な詞を超えて聞えてくるもの/マリアに体現された愛と哀しみのタンゴ/存在感を見せたSAYACA/ポルテーニョ、ポルテーニャに見る精神分析の様相
第6章 嵐子よ、安らかに眠れ――≪大連体験≫を昇華した藤沢嵐子のタンゴに思う
はじめに/故郷を離れるということは…/重要な決定的な体験とは/嵐子にとって大連とは/アイデンティティとは何か/たった一度の嵐子と私の会話/敗戦で一変した日本人の地位/「大連、思い出すのも嫌!」/タンゴは過去を背負っている/二つの大地(日本と大連)に引き裂かれた嵐子/タンゴに過去の思いを込めた嵐子
[コラム]タンゴ 起源はさまよう望郷の魂――映画『白夜のタンゴ』に思う
第7章 タンゴは追憶で出来ている!――~マエストロ・ガビート大いに語る~
社交ダンスのタンゴと大いに違うアルゼンチン・タンゴダンス/悲しい日本のタンゴダンス状況/タンゴは父祖から伝わった重要な文化なのだ/タンゴダンスは人生を背負って踊るものなのだ!/センティミエント(情感)が大切だ/タンゴダンスは競うものではない/タンゴは踊る情感である/タンゴに込めた深い思索と情熱
第8章 ガビートは死なず、時を超えて甦る――あるプロダンサーのタンゴへの篤い思い
「今がタンゴダンスの創生期です」/旧東欧圏でもタンゴが盛ん/忘れられていないガビートの名/死の3ヶ月ほど前、ローマのミロンガで踊ったガビート/今も色あせないガビートの言葉/ガビート死してタンゴの心を残す/ガビートの言葉は不滅である
第9章 京谷弘司 日本タンゴをリードした男――ピアソラから「タンゴの垢を身につけろ」と励まされたマエストロ
長兄に誘われタンゴ界に/早川真平に登用さる/タンゴの都、ブエノスアイレスへ/グラナダのタンゴ祭へ/フェデリコの音色は違った!/ピアソラとの出会い/〈用意はいいか?〉/ピアソラの前で演奏する/思い出す人々/北京、天津で歓迎さる/タンゴダンス隆盛時代に思うこと/バンドネオンの可能性/作曲家としての京谷弘司/芸術家としての京谷弘司
第10章 先頭を走る男の栄光と孤独――ピアソラか古典タンゴかという二元論なんてナンセンス! 小松亮太、ラディカルにタンゴを語る
「亮太は世界的」というモサリーニの言葉/両親がリハーサルする中で育つ/亮太少年は現代音楽が好きだった/クラシックへの夢を諦め、タンゴへまっしぐら/アルゼンチン長期留学を断念した日本事情/藤沢嵐子との出会いと最後の別れ/藤沢嵐子と小松亮太との不思議な結びつき/「ピアソラ好きもピアソラ嫌いも両方、大嫌い!」/「ピアソラか古典タンゴか」という二元論はおかしい/『ブエノスアイレスのマリア』『若き民衆』などへの挑戦/旺盛なチャレンジ精神/「ブルックナー交響曲八番」に挑む/タンゴは民族音楽ではない!/今後は台湾や韓国を巻き込んでいく/妻・近藤久美子との関係
第11章 世界へ飛翔する平田耕治――若きバンドネオン奏者の勇気ある孤高の軌跡
13歳でバンドネオンに出会う/16歳、単身ブエノスアイレスへ/音楽は心を癒し、病を治す/ラサリ、マルコーニに教わる/音楽大学からブエノスアイレスのステージへ/「ラ・ベンターナ」での6ヶ月/タンゴから見えてきた日本とは…/ボクはタンゴマニアにはならない!/世界へ羽ばたく平田耕治/心にしみわたるバンドネオン
第12章 タンゴダンス人生を駆けるミキ・カワシマ――ブエノスから16年ぶりに一時帰国したミキ・カワシマに聞く
第13章 ある日の小さなコンサートで――第96回東京リンコン・デ・タンゴで(2018年1月23日原宿「クリスティー」にて)
演歌のモランか、オペラのマシエルか/古き佳き時代の古典タンゴを!/KaZZmaと福島久雄、田中庸介、二人のギター奏者
第14章 ダニエル・バレンボイムとタンゴ――~「アイデンティティは一つではない」~ユダヤ人を超えて世界市民として
「我々は人類の一員である」/ロシア系ユダヤ人として人生を歩む/イスラエルへ移住/帰郷してタンゴを演奏しCDを創る/国家や民族を超えて人類の一員として
あとがき