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日本語コミュニケーションのための読解教材の作成

編:野田 尚史
編:桑原 陽子

紙版

内容紹介

日本語学習者向けの読解教材の作成方法を解説する。実際に読む必要がある日本語を分析し、学習者が読解で難しい点を調査した上で、コミュニケーションに役立つ読解教材をどのように作成すればよいかを提案する。例として取り上げるのは「薬の表示を読む教材」「ネット上のクチコミを読む教材」「白書を読む教材」「論文を読む教材」である。国語教育にも有益。執筆者:任ジェヒ、王麗莉、加藤陽子、北浦百代、桑原陽子、小西円、塩田寿美子、白石実、蘇鈺甯、中島晶子、野田尚史、松下光宏、山口美佳、山本晃彦、吉本由美

目次

本書の目的と構成


第1部 日本語読解教材作成の基本方針

日本語コミュニケーションのための読解教材作成の基本方針(野田尚史)
1. コミュニケーションのための読解教材の概要
2. 現実的な状況設定
 2.1 実際に読むことがある文章を使う
 2.2 実際に使われている語彙・文型・表記を使う
 2.3 実際に読むときの機器で読んでもらう
3. 明確な目標設定
 3.1 具体的な目標を示す
 3.2 すべてを理解することを目標にしない
 3.3 辞書を使って読むことを前提にする
4. 読解技術の明示
 4.1 具体的な読解技術を示す
 4.2 辞書の使い方や推測のしかたなども示す
 4.3 いろいろな言語で説明があるウェブ教材にする
5. 文章に書かれている内容と表現の研究
6. 学習者が日本語を読む難しさの研究
7. 読解教材の構成と内容を設計する研究
8. まとめと今後の課題


第2部 薬の表示を読む教材

薬の表示に書かれている内容と表現(山口美佳)
1. 概要
2. 薬の袋に書かれている内容と表現
 2.1 薬の種類
 2.2 薬の用法・用量
 2.3 一部が手書きの薬の袋に書かれている薬の用法・用量
3. 薬の説明書に書かれている内容と表現
 3.1 薬の効能・効果
 3.2 薬の副作用
 3.3 注意事項
4. まとめ

学習者が薬の表示を読む難しさ(桑原陽子)
1. 薬の表示を読む難しさの概要
2. 調査概要
 2.1 調査対象者
 2.2 調査方法
3. 薬の用法に関する知識の不足
4. 薬の表示の書式に関する知識の不足
 4.1薬の説明書
 4.2薬の袋の手書きタイプの表示
5. 薬の表示に用いられる表現に関する知識の不足
6. まとめ

薬の表示を読む教材の作成(桑原陽子)
1. 薬の表示を読む教材の作成方針
2. 日本で一般的な薬の用法に関する情報の提供
3. 数字を含む表現を見分ける手がかりの提供
4. 漢字語を見分ける手がかりの提供
5. 情報を読みとる段階に沿った練習の提供
6. まとめ


第3部 ネット上のクチコミを読む教材

ネット上のクチコミに書かれている内容と表現(野田尚史)
1. クチコミに書かれている内容と表現の特徴
2. 分析方法
3. クチコミに使われる表記
 3.1 漢字表記の多さ
 3.2 カタカナ表記の多さ
 3.3 記号類の多さ
4. クチコミに使われる語彙
 4.1 話しことば的な語彙の多さ
 4.2 肯定的な評価を表す語彙
 4.3 否定的な評価を表す語彙
5. クチコミに使われる文法的表現
 5.1 話しことば的な表現の多さ
 5.2 断定を弱める表現の多さ
 5.3 疑問表現の多さ
6. クチコミの文章構成と内容
 6.1 クチコミの文章構成
 6.2 クチコミの内容
7. クチコミの読みにくさ
 7.1 表記についての読みにくさ
 7.2 表記以外についての読みにくさ
8. まとめと今後の課題

学習者がネット上のクチコミを読む難しさ(中島晶子)
1. ネット上のクチコミを読む難しさの概要
2. 調査概要
3. ネット上のクチコミの表記に関する知識の不足
 3.1 漢字の多用
 3.2 記号の多用
 3.3 顔文字の多用
4. ネット上のクチコミの語彙に関する知識の不足
 4.1 比較的新しい語彙
 4.2 オノマトペ
 4.3 評価を表す表現
5. ネット上のクチコミの文構造に関する知識の不足
 5.1 反語的な疑問文
 5.2 修飾関係がわかりにくい文
 5.3 主語を特定しにくい文
6. まとめ

ネット上のクチコミを読む教材の作成(桑原陽子)
1. ネット上のクチコミを読む教材の作成方針
2. 読むための具体的な状況の設定
3. 検索機能を使った読み方
4. ネット上の表現に特徴的な表記
5. 情報を読みとることに特化した学習項目の選定
 5.1 学習項目の切り出し
 5.2 否定形の扱い
6. まとめ


第4部 白書を読む教材

白書に書かれている内容と表現(加藤陽子)
1. 白書の特徴
2. 図表に現れる表現
 2.1 図表タイトルに現れる表現
 2.2 図表本体に現れる表現
3. 図表の要点を表す本文の表現
4. 推移と対比を表す本文の表現
 4.1 推移を表す表現
 4.2 対比を表す表現
5. 現状を生んだ原因を表す本文の表現
6. 別のデータによる分析の開始を表す本文の表現
7. 今後の課題と施策を表す本文の表現
8. まとめ

学習者が白書を読む難しさ(小西円)
1. 学習者が白書を読む難しさの概要
2. 調査概要
3. 書きことばの表現に関する知識の不足
 3.1 よく知っている表現に形が似ている書きことばの表現
 3.2 よく知っている表現と意味が違う書きことばの表現
 3.3 変化や比較を表す書きことばの表現
4. 専門用語の調べ方に関する知識の不足
5. 文の複雑な構造を把握する読解技術の不足
6. まとめ

白書を読む教材の作成(山本晃彦・任ジェヒ・吉本由美)
1. 白書を読む教材の作成方針
2. 本文から数値を読みとるための知識の提供
3. 図表から数値を読みとるための知識の提供
4. 数値の意味を読みとるための知識の提供
5. 数値の推移の原因を読みとるための知識の提供
 5.1 原因を示すために使われる表現と原因の位置関係
 5.2 原因を示すために使われる表現が複数ある場合の位置関係
6. まとめ


第5部 論文を読む教材

論文に書かれている内容と表現(松下光宏)
1. 論文に書かれている内容
2. 先行研究の主張の概要を示す場合の表現
3. 具体的な研究例を示す場合の表現
 3.1 引用の開始部分に出典が示されている場合の表現
 3.2 引用の終了部分に出典が示されている場合の表現
4. 先行研究からの受け継ぎを表す場合の表現
5. 先行研究への批判を表す場合の表現
6. まとめ

学習者が論文を読む難しさ(野田尚史)
1. 学習者が論文を読む難しさの概要
2. 調査方法
3. 語の意味を理解する難しさ
 3.1 語に区切る難しさ
 3.2 語を識別する難しさ
 3.3 語の意味を推測する難しさ
4. 文の構造を理解する難しさ
 4.1 モダリティ的表現を理解する難しさ
 4.2 述語修飾構造を理解する難しさ
 4.3 名詞修飾構造を理解する難しさ
 4.4 並列構造を理解する難しさ
5. 文脈や背景知識と関係づけて理解する難しさ
 5.1文脈と関係づけて理解する難しさ
 5.2背景知識と関係づけて理解する難しさ
6. 辞書を使う難しさ
 6.1入力語を切り出す難しさ
 6.2使う辞書を選ぶ難しさ
 6.3語義を選ぶ難しさ
7. まとめと今後の課題

論文を読む教材の作成(桑原陽子・北浦百代・塩田寿美子)
1. 論文を読む教材の作成方針
2. 引用部分を特定するための知識と技術
 2.1 出典が引用開始部分に書かれている場合
 2.2 引用終了部分に出典と引用表現が書かれる場合
 2.3 出典だけが書かれている場合
3. 筆者の考えを示す表現と引用表現の見分け
4. 複数の知識を組み合わせて利用する練習
5. まとめ


第6部 教材の試用結果

漢字系学習者の教材試用結果(野田尚史・王麗莉・蘇鈺甯)
1. 漢字系学習者の教材試用調査の概要
2. 教材試用調査の方法
3. 学習者に試用してもらった教材
4. 教材の実用性についての評価
5. 教材の内容についての評価
6. 教材の使いやすさについての評価
7. 教材の練習方法についての要望
8. 教材の提示方法についての要望
9. 教材のテーマについての要望
10. まとめと今後の課題

非漢字系学習者の教材試用結果(白石実・山口美佳)
1. 教材試用結果の概要
2. 調査概要
3. 試用してもらった教材
4. 生の素材を使っていることについての評価
5. 教材の実用性についての評価
6. 解説が英語で書かれていることについての評価
7. 練習についての評価
8. 教材全体に対する意見
 8.1 教材でよいと思った点
 8.2 教材で改善してほしい点
9. 今後教材にしてほしいテーマ
10. まとめ


あとがき
編者・執筆者紹介

著者略歴

編:野田 尚史
日本大学文理学部教授。
著書に『日本語学習者の読解過程』(編著、ココ出版、2020年)、『日本語コミュニケーションのための聴解教材の作成』(共編著、ひつじ書房、2022年)などがある。
編:桑原 陽子
福井大学語学センター准教授。
論文に「日本語学習者の読解過程の縦断的研究」(『日本語学習者の読解過程』ココ出版、2020年)などがある。

ISBN:9784823411212
出版社:ひつじ書房
判型:A5
ページ数:280ページ
定価:3200円(本体)
発行年月日:2022年11月
発売日:2022年11月25日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:CB
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:CF
国際分類コード【Thema(シーマ)】 3:CJ
国際分類コード【Thema(シーマ)】 4:2GJ