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田中正造と民衆思想の継承

著:花崎 皋平

紙版

内容紹介

哲学者・花崎皋平の40年に亘るライフワークの集大成。民衆思想家・前田俊彦(三里塚)、安里清信(沖縄)、貝澤正(アイヌ)を通して浮き上がる新たな田中正造像と「無主・無縁・愚」の思想。足尾鉱毒事件以後、生存原理に帰着することから生まれた思想とその可能性に焦点をあてる。

目次




■第一部 民衆政治家として

第一章 田中正造像の変遷
 1 義人から聖人へ
 2 ラディカルな民主主義の思想家
 3 林竹二の「思想家としての田中正造」論
 4 全集出版以後
 5 民衆思想家という位置づけ

第二章 江刺県鹿角での経験
 1 鹿角での「救助窮民取調」
 2 鹿角の現地を訪ねる

第三章 議員時代点描
 1  仁政の思想
 2 底辺人民に立脚する自治
 3 公立病院費廃止論
 4 徳義
 5 衆議院議員時代の憲法と人権
 6 亡国


■第二部 治水行脚をつうじての思想の深まり

第四章 一九〇九(明治四二)年の新境地
 1  下層人民の下情「研究」
 2 天地の側へ
 3 川に学び、川の心を心とする

第五章 最晩年の行脚
 1  一九一〇年の大洪水
 2 関宿棒出し
 3 治水行脚
 4 「治水論考」
 5 その滑稽味

第六章 無私、無宿、無所有の生活
 1 アゝ うれしや、我ハ虚位と云ふ事をさとれり
 2 サブシステンスの思想
 3 裸躰直立の思想
 4 治水と憲法と文明
 5 天地と共に生きる

第七章 愚と聖の弁証法
 1 キリスト教との出会い
 2 神と聖人について
 3 見よ、神ハ谷中ニあり
 4 愚と聖の弁証法
 5 思想形成の方法

第八章 新井奥邃と田中正造
 1その略歴
 2 新井奥邃の肖像瞥見
 3 田中正造との出会いと親交
 4 新井奥邃の信仰と思想
   父母神について/二而一の原理/有神無我/宇宙論/有機的生命観/女性観/平和論


■第三部 民衆思想の継承

第九章 瓢鰻亭 前田俊彦
 1 略歴
 2 「鑑」
 3 『瓢鰻亭通信』の思想
 4 瓢鰻亭のめざした「社会」の姿
 5 後期の思想
 6 〝人間の罪〟について

第一〇章 沖縄の思想家安里清信
 1 安里清信の生涯
 2 生存権
   モズクは永遠/海は「治める」べきものである/ウチナンチューとしての自覚
 3 「ピープル」に徹する
 4 住民運動とは
 5 霊性
 6 最晩年、沖縄独立への希求

第一一章 アイヌの思想家貝澤正
 1 その生涯
 2 若い日に
 3 歴史を学び、民族の復権のために立つ
 4 開発と闘う
 5 二風谷ダム建設を認めない
 6 その思想の精髄
 7 終わりに

第一二章 最後の年、臨終

第一三章 田中正造の思想的可能性
 1 人間存在の基底に立つ
 2 いのちを中心にしたサブシステンスの思想
 3 永遠、悠久を想う霊性

あとがき
引用・参照文献

著者略歴

著:花崎 皋平
1931年、東京に生まれる。哲学者。北海道小樽市在住。
北海道大学教員を経て、ベトナム反戦運動、成田空港や伊達火力、泊原発などの地域住民運動、アイヌ民族の復権運動への支援連帯運動に参加する。1989年ピープルズ・プラン21世紀・国際民衆行事で世界先住民会議の運営事務局に参加。
現 在 「さっぽろ自由学校〈遊〉」、ピープルズ・プラン研究所の会員。
著 書 『生きる場の哲学──共感からの出発』(岩波書店、1981)『あきらめから希望へ──生きる場からの運動』(高木仁三郎との対論、七つ森書館、1987)『静かな大地──松浦武四郎とアイヌ民族』(岩波書店、1988/2008)『民衆主体への転生の思想──弱さをもって強さに挑む』(七つ森書館、1989)『アイデンティティと共生の哲学』(筑摩書房、1993年/平凡社ライブラリー、2001)『個人/個人を超えるもの』(岩波書店、1996)『〈共生〉への触発──脱植民地・多文化・倫理をめぐって』(みすず書房、2002年)『〈じゃなかしゃば〉の哲学──ジェンダー・エスニシティ・エコロジー』(インパクト出版会、2002)『ピープル…

ISBN:9784822810153
出版社:七つ森書館
判型:4-6
ページ数:256ページ
定価:2200円(本体)
発行年月日:2010年07月
発売日:2010年07月26日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:DNB