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国の理想と憲法

「国際環境平和国家」への道

著:野村 昇平

紙版

内容紹介

現代を生きる私たちは、地球的規模の環境破壊、発展途上国の貧困と飢餓、そして戦争や紛争の危機に直面しています。本書は、憲法の平和理念を活かして、世界の環境保全と福祉増進を目指す新たな協調体制を論じる。そして、「国際環境平和」を国の理想として掲げることを提唱する。

目次

まえがき

1 日本の将来を決める憲法問題
  第1章 武力がなくて平和は守れるか
    1 憲法改正をめぐる論点──改憲・護憲の考え方
        憲法は国の根本法  改憲の代表的な意見  護憲の代表的な意見  
    2 今の世界で非武装中立は可能か
        永世中立国の場合は  軍隊なしで平和を守るコスタリカ
    3 日本国憲法を素直に読むと
        前文には憲法の精神が集約されている  前文の意味をはっきりつかむ
        第9条は何を言っているか  人類史上初の「脱国家エゴイズム平和国家」 
    4 第9条──戦争放棄と非武装の宣言
        再軍備への道を選んだ日本  平和立国か、武力立国か
        第9条は前文に支えられている
        「平和立国」──平和的手段で世界に貢献する  
    5 日本国憲法の人類史的な意味を考える
        「自国の繁栄と生き残り」が国家の行動原理  
        核兵器の登場で世界は運命共同体に
        唯一の原爆体験国に与えられた使命とは  
    6 平和憲法を持つ日本の持ち味を活かす
        日本の持ち味を活かした国際貢献  期待の持てない国となった日本
        目指すべき国の形とは  「国際環境平和国家」を目指して

  第2章 憲法改正の賛成・反対論
    1 日米安保条約と押しつけ憲法論
        日米安保条約か平和憲法か  押しつけ憲法論をくつがえす証拠
        国民が喜んで受け入れた憲法
    2 どこの国が攻めてくるのか
        北朝鮮が攻撃してくる可能性はあるか  中国が攻めてくる可能性はあるか
        専守防衛に替わる防衛政策  改憲して戦争ができる国にするのか  
    3 日米関係の見直しとテロ攻撃の可能性
        日本に国防上の脅威はない  テロ攻撃を防ぐのは不可能
        平和先進国として行動する
    4 自民党の新憲法草案を読む
        改憲の要は「前文」と「第9条」  ずっと改正しやすくした草案
        「集団的自衛権の行使」はできるか  戦争のできる普通の憲法となる
        徴兵制はどうなるか
    5 抑止力としての武力と自衛のための戦争
        武力は本当に抑止力になるのか  自衛のための武力とは
        正義の戦争は存在するのか  平和憲法の独創性とは
    6 世界から見た日本の平和憲法
        「9条は人類への贈り物」  「戦争放棄はすべての国が努力すべきモデル」
        平和憲法の影響で定められた「無防備地区」
        アメリカで結成された「第9条の会」
        人類社会は「平和力」によって保たれている

2 地球環境と人類社会の今を知る

  第1章 環境問題の実態を知る
    1 このままでは地球は持たない
        文明の発展がもたらした環境破壊  国際機関の警告を受けとめる
        深刻な事態に至っている地球環境
    2 地球温暖化は止められるか
        地球規模の気候変動が始まった  豪雨と干ばつで食糧生産が減少
        CO2の排出量を減らせるのか
    3 オゾン層破壊の実態とは
        地球の生物はオゾン層に守られている  オゾン層破壊は何をもたらすか
        これからも続くオゾン層の破壊  回復の可能性はあるのか  
    4 森林破壊の具体的な現状
        森林=地球の生命維持装置  森林破壊に深く関わる日本  
    5 急速に進む砂漠化の原因とは
        飢餓と貧困、環境難民を生み出す  先進国の消費経済が主因

  第2章 人口・食糧・水・エネルギー・原発の問題
    1 人口爆発と貧困のメカニズム
        人口爆発は途上国の貧困から  先進国の収奪が貧困を生み出す
    2 深刻化する食糧問題
        多くの子どもたちが飢餓状態  日本の食糧事情は矛盾だらけ
        都市化と工業化でさらに食糧不足に  実は食糧は余っている?
    3 迫りくる水資源の危機
        水質汚染は文明発展の結果  深刻さを増す世界的な水不足
        中国では黄河が「断流」している  日本は最大の「仮想水」の輸入国
    4 エネルギー問題をどう解決するか
        石油不足が紛争の引き金となる  エネルギー自給率4パーセントの日本
        原発に替わる自然エネルギーの活用  これからは地域分散型エネルギー  
        バイオマスエネルギーの可能性  自然エネルギーへの政策転換が鍵  
    5 原発はほんとうに大丈夫なのか
        3つの大事故が原発廃止の契機に  地震列島・日本の原発の安全性
        直下型地震に対する備えは万全か  プルサーマルに進む日本
        核のゴミ問題を考える  
    6 原発に見る日本社会の縮図
        原発のエネルギー収支はマイナス  原発を止めても電力は不足しない
        原子力事業は巨大な金食い虫  なぜ日本は原発に固執するのか

  第3章 21世紀の紛争と戦争を考える

    1 日常化する紛争・戦争・テロ
        20世紀は「戦争の世紀」  文明の衝突
        紛争・戦争・テロが世界中で日常化  
    2 核戦争の危機と大量破壊兵器
        人類絶滅の危機に直面したキューバ危機  核兵器1発で全面核戦争に
        核拡散で偶発的核戦争の可能性が  劣化ウラン弾による障害と汚染
 
  第4章 生きがいが持てなくなった日本社会
    1 豊かさを求め続けて失ったもの
        格差社会がやってきた  子どもを取り巻く環境が激変
        子どもの悩みがつかめていない  「豊かさの中で貧しさを忘れないで……」
        なぜ日本人は行動力が鈍いか  ブータンの国民総幸福度とは  
    2 今の社会では力を発揮できない若者たち
        21世紀は希望に満ちた社会になるか  自分をだめな人間と思う高校生
        夢と希望を持って生きる大事さ

3 この危機をどう乗り越えるか

  第1章 行き詰まりの根本原因は何か
    1 求められているのは根本的な解決策
        対症療法と根本療法  なぜ知識偏重教育はなくならないか
        歴史の因果の流れの外に出る 
    2 エゴイズムと国家の関係を考える
        個人のエゴイズム・集団のエゴイズム  バラバラ観は優劣の観念を生む
        国家とは何か   「みんなのため」と「国家のため」との違い
        愛国心には二通りの意味がある  自分たちの国を誇りに思うとき
    3 歴史に現れた国家エゴイズムとは
        自分の属する集団の繁栄と生き残り  国家エゴイズムが行動原理に
        日本史に現れた国家エゴイズム  「平和ボケ」に陥った戦後の日本
    4 現代社会に見る国家エゴイズムの対立
        9・11で気づかされたこと  日米の熾烈な「経済戦争」
        環境問題の解決をはばむ国家エゴイズム 
        「お金さえあれば幸せ」という価値観  西洋文明が世界を席捲している  
    5 グローバル化の中の国家エゴイズム
        グローバル化で世界が一つの経済圏に  地域主義という新しい動き
        社会を圧迫するグローバル化の弊害 
        「人種のサラダボウル」=多様性の共有

  第2章 この国の未来を考えるために
    1 真の豊かさ・幸福とは何か
        ブータンに学ぶ真の豊かさ  開発より自然環境保全を優先
        心の飢えはモノでは満たされない
    2 環境保全に沿った経済システムへの転換
        エネルギー政策を大転換したデンマーク 
        躍進する風力発電・バイオマス発電  エネルギー供給は地域分散型に
        教育が大改革の原動力だった
    3 平和立国は可能である
        軍隊の保有を禁止したコスタリカ憲法  中米を和平に導いたアリアス大統領
        もうすぐ「法務平和省」ができる
    4 自立と連帯で新しい社会の実現を
        みんなが納得のいく理想を掲げる大切さ  食糧とエネルギーの自給を目指す
        「平和の道徳的優越性」とは

  第3章 国家エゴイズムを超えて
    1 生きがいをもたらす国家理想とは
        理想や生きがいが持てない  心からの満足と喜びを得るには
        なぜ努力が喜びにつながらないのか  私たちの納得できる国家理想
    2 国に理想を掲げよう
        個人や団体の精神的支柱となる理想  国際環境平和国家を目指そう
        まず国家の根本政策を変える
    3 国家が持つ特別な力
        国家エゴイズムはこうしてできた  国政を監視する義務がある
        みんなで理想を掲げる理由  利他の精神・共生本能の表明
    4 国際環境平和国家への道
        地球環境と途上国の福祉に貢献する  打算的な援助を断ち切って
        援助相手国の自立のために
    5 なぜ日本から始めるのか
        この考えが生まれた日本から  平和憲法を持っている有利さ
        日本・世界にどんな変化が  一人ひとりの自分が主役

提唱 みんなで国に理想を掲げよう
        危機を乗り越えるには  行き詰まりの根本原因は国家エゴイズム
        「国際環境平和国家」を国の理想に  日本が最初に国家エゴイズムを放棄する
        まったく新たな気運を創り出す  まず国に理想を掲げることから
        ワクワクするような国を創ろう  
   では、自分はどうしたらよいか
        活動のバックボーンとなる思想として
        一人ひとりの平和を愛する心が活動の主体  明るく楽しい気持ちで進めよう

あとがき
参考文献

著者略歴

著:野村 昇平
1944年生まれ、熊本県出身。
71年、東京大学大学院農学系研究科博士課程修了。
4年間の教員生活の後、群馬県赤城山麓に居を構え、自然農を営みながら、 「人間のための教育」を主眼とする青少年のための私塾「全生塾」、ならびに 「自覚と平和の研究会」を主宰。

ISBN:9784822807429
出版社:七つ森書館
判型:4-6
ページ数:336ページ
定価:1800円(本体)
発行年月日:2007年05月
発売日:2007年04月27日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JB