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生態人類学は挑む SESSION 1

動く・集まる

編:大塚 柳太郎

紙版

内容紹介

およそ700万年前、チンパンジーの祖先は熱帯雨林に残り、ヒトの祖先はサバンナへと歩み出した。長大な移動と集団の形成の果てにヒトは世界を覆いつくし、現代の人口増加とグローバル化へと至る。それはヒトが生息環境を拓いていく過程であったが、どうして苛酷な環境までも生息の場に選択したのか?『生態人類学は挑む』SESSION第1巻が挑む、移動と定住の謎。

目次

序  大塚柳太郎

第I部 「動く」ことで生きる——空間利用の生物文化適応

第1章 「動く」ことで形作られるチンパンジー社会[中村美知夫]
 はじめに
 1 チンパンジーとその社会
 2 「動く」ことで「集まる」——離合集散
 3 日常を超えて「動く」——メスの移出入
 4 集団レベルでの大規模移動
 おわりに

第2章 コンゴ盆地熱帯雨林の狩猟採集生活[佐藤弘明]
 はじめに
 1 狩猟採集生活の試行
 2 試行で採捕された食物
 3 試行における食物採捕活動
 4 狩猟採集生活試行の意味

第3章 マレー半島の狩猟採集民スマッ・ブリ——移動性と資源利用[口蔵幸雄]
 はじめに
 1 オラン・アスリとスマッ・ブリ
 2 移動狩猟採集時代の生活(1960年代前半まで)
 3 商取引用のトウ採集開始後の生活(1960年代中頃から)
 4 保留地スンガイ・ブルア村での定住生活(1970年代後半から)
 5 地域開発とイスラム同化政策下での生活(1980年代半ば以降)
 6 考察

第4章 「動く」戦略からみたオセアニアにおけるヒトの移住史[小野林太郎]
 はじめに
 1 海を越えた狩猟採集民とオセアニアヘの人類移住
 2 ニア・オセアニアヘ移住した人類の多様な環境適応
 3 農耕民の登場とオセアニアヘの第二幕の移住
 4 リモート・オセアニアヘ移住した人類の島嶼適応と居住戦略
 5 「動く」戦略からみたオセアニアにおけるヒトの移住史
 おわりに

第II部 「集まる」ことの原点——個体群の再生産のエコロジ一

第5章 生まれる,動く,集まる,去る,そして死ぬ——サルたちのマイクロデモグラフィー[高畑由起夫]
 はじめに
 1 動くことの意味は?
 2 生き物にとって集まることとは?
 3 霊長類の単位集団——散らばることと集まること
 4 サルたちのマイクロデモグラフィー1——絶えず揺れ動くワオキツネザル
 5 サルたちのマイクロデモグラフィー2——屋久島海岸域の野生ニホンザル群
 6 サルたちのマイクロデモグラフィー3——巨大化するニホンザルの餌付け群
 7 集団の終焉——チンパンジ一の場合
 おわりに

第6章 「集まる」ための性行動と再生産[小西祥子]
 はじめに
 1 性と生殖
 2 性行動と生殖の関係の種間比較
 3 ヒトの性行動と生殖
 4 ヒトの妊孕力の評価
 5 ヒトの不妊
 おわりに

第III部 「集まる」ことの現在——変容する社会における出生・死亡・移動

第7章 アラブ農村における人口増加と適応史——ヨルダン南部に定住したサブサハラ出自集団[末吉秀二]
 はじめに——人口増加と適応
 1 対象集団の生物学的および文化的特徴
 2 南ゴール郡の自然環境と農業
 3 サフィ村の生活環境の変容
 4 マイクロデモグラフィー
 5 人口増加からみた適応
 おわりに

第8章 集まる人々と動く家畜——遊牧民レンディーレの定住集落[孫暁剛]
 はじめに
 1 ケニア北部における遊牧民の定住化
 2 レンディーレの定住集落の形成
 3 定住生活の維持と改善
 4 集落と放牧キャンプをつなぐ新たな試み
 おわりに

第9章 「未婚」「非婚」そして「結婚」——サンブル女性の自律と出自集団への帰属[中村香子]
 はじめに
 1 サンブルの出自体系と年令体系
 2 年令体系におけるクランの重要性
 3 女性のライフコースの変化——未婚の母,ゲルアに着目して
 おわりに

第10章 少子化による人口圧の上昇と生業変化——ラオス定住農業社会の変容[富田晋介]
 はじめに
 1 定住農業社会における土地の相続と世帯のライフサイクル
 2 調査地域の概要および調査方法
 3 過去の人口,世帯,水田面積の変動
 4 土地相続と世帯のライフサイクルからの人口圧
 おわりに

終章 「動く」と「集まる」からみるヒト——人間−環境系の変遷史[大塚柳太郎]
 はじめに
 1 直立二足歩行とサバンナでの生存
 2 人口再生産と環境収容力にみる特異性
 3 地球全域への移住・拡散——多様な環境へ
 4 定住と農耕・家畜飼育の開始
 5 人口転換による人口増加とその影響
 おわりに

索引

著者略歴

編:大塚 柳太郎
自然環境研究センター理事長・東京大学名誉教授.東京大学大学院理学系研究科修士課程修了,理学博士.主な著作に,『ソロモン諸島——最後の熱帯林』(編著,東京大学出版会,2004年), 『ヒトはこうして増えてきた——20万年の人口変遷史』(新潮選書,2015年)などがある.

ISBN:9784814003112
出版社:京都大学学術出版会
判型:A5
ページ数:336ページ
定価:3200円(本体)
発行年月日:2020年12月
発売日:2020年12月19日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JBCC