環境人間学と地域
カタストロフと時間
記憶/語りと歴史の生成
著:寺田 匡宏
内容紹介
大災害は人の日常を一変させ、世界の秩序を崩壊させる。こうした極限状態(カタストロフ)に直面した人は、その出来事をどのように受け止め、記憶し、記録してゆくのだろうか。震災や戦争、原発事故などを例に、博物館や語り、モニュメントや場といったかたちを介してカタストロフが時間を渡っていくさまを描き出す。
目次
プロローグ 鯰絵とプレゼンティズム
序章 時間・カタストロフ・エネルゲイア―本書の射程
1 環境と時間
2 視角としてのカタストロフ
3 歴史のエネルゲイアというアプローチ
4 本書の構成
5 阪神・淡路大震災はどのように過去、あるいは歴史になっているか
―歴史辞典・歴史教科書・歴史書の記述とメタヒストリーという立場
第Ⅰ部 カタストロフという出来事
第一章 カタストロフの中で想起される過去のカタストロフ―まちの記憶とアイデンティティ
1 カタストロフと想起
2 想起されたこと
3 失われゆくものとまちの記憶に抗って
4 語りなおされる歴史とカタストロフの時間
第二章 記録と記憶
1 体験を記録する心情
2 震災記録保存運動
3 記録と体験の意味
第三章 カタストロフの前の人―渦中と瞬間
1 身体とカタストロフ
2 震災の劫火
第四章 心の揺れという体験―震災ボランティアたちのカタストロフ
1 阪神・淡路大震災におけるボランティアの歴史的位置づけ
2 ボランティアたちの語り
補章1 ボランティアたちの顔が語る
口絵 北川幸三写真集『風が運んだ救援隊』より
ダイアローグ1 風を撮る、光を撮る―写真家・北川幸三との対話
第Ⅱ部 カタストロフ・国家・近代
第五章 「復興」と無名の死者の捏造
1 「復興」とはなにか―阪神・淡路大震災のメモリアル博物館設立の経緯と公の論理
2 「メモリアルセンター論争」―公的記憶はだれによって、どのように語られるべきか
3 展示という語り
4 戦争の表象/災害の表象
5 無名の死者の捏造/未婚の若い女子の人身犠牲
6 「復興」と無名の死者の捏造―小括
コラム1 博物館という空間と時間
コラム2 中国の博物館に見る「復興」
第六章 透明な空間、浮遊する時間―慰霊と復興の近代とポスト・モダン
1 慰霊に従属する復興―関東大震災のメモリアル博物館と慰霊施設
2 透明な空間―阪神・淡路大震災のメモリアル博物館
3 復興の時間を統べる天皇
4 復興と慰霊と時間
コラム3 村上春樹「神戸まで歩く」を歩く
コラム4 アチェで感じたこと―津波から七年
第Ⅲ部 カタストロフと記憶
第七章 悲劇と語り―死者と想起
1 語りの後ろに隠されている語りえないこと
2 悲劇として語られること
3 悲劇の機能とその認識を成立させるもの
ダイアローグ2 民話の森とカタストロフの語り―せんだいメディアテーク学芸員・清水チナツとの対話
第八章 だれの記憶、だれのための記憶―カタストロフの記憶を残すという営為
1 過去の実在とその真正性という問題
2 カタストロフの記憶はどのように継承されるべきか―その実践
3 だれのものでもない記憶、だれのものでもない未来
第Ⅳ部 場に残るカタストロフと「持去」―メモリアル・モニュメント・遺構
第九章 感情操作のポリティクス―メモリアルにおける演出と動員
1 感情操作とメモリアル、博物館
2 ベウジェッツ絶滅収容所とそのメモリアル化
3 ベウジェッツ・メモリアルと博物館の展示ナラティブ
4 ベルリン・ホロコースト・メモリアル
5 展示ナラティブと感情
コラム5 風景の与えるもの―プリーモ・レーヴィとアウシュヴィッツの「感動」
第十章 カタストロフとともにある場―遺構保存のアポリアを越えて
1 遺構・モニュメント・メモリアル
2 カタストロフの遺構保存のアポリア
3 アートによる遺構への新たな価値の付与―イタリア・ジベリーナ
4 モニュメント群がつくるカタストロフとともにある場―阪神・淡路大震災
コラム6 見えない風景を見る―フクシマとアウシュヴィッツ
終章 カタストロフから見た地球環境・歴史・未来史
1 カタストロフから見る環境と時間
2 地球環境と歴史/未来史
補章2 歴史のエネルゲイアと「なる=ビカミング」
エピローグ 「「神戸まで歩く」を歩く」を歩く
引用・参照資料リスト
初出一覧
研究助成一覧
索引
英文要旨
ISBN:9784814001514
。出版社:京都大学学術出版会
。判型:A5
。ページ数:902ページ
。定価:9200円(本体)
。発行年月日:2018年03月
。発売日:2018年04月07日
。国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JKS。